【瑞獣】
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中国の妖怪の類である『白澤』なる生き物になって数億年。常々人間辞めてると思ってはいたが、とうとう名実共に人間ではなくなってしまった。救いがあるとすれば人型を取れることか。
現世ではやっと覚えがある時代になったようだけれど、誰か居やしないかと探しに行く事は辞めた。探して、もし見つけても会えるわけが無い。だって自分は本当に『化け物』になってしまった。
会えても一緒に居る事は出来ない。例え彼岸へ渡ってきたとしても、それは全てを忘れて生まれ変わってしまうまでの間だけ。
ああこれは寂しいな、と一度考えてしまえばもう駄目だった。
何をしても虚無だ。一時期は酒に溺れたり女性と遊んだりもしたけれど、元からそういうのが好きだった訳でもないのですぐに飽きた。
長い人生も、間に転生を挟まないとこうも疲れるものらしい。もしかしたらもう二度と転生はしないのかも知れなかった。
「そもそも『白澤』って死ぬのかぁ?」
「……知りませんよ。そんな事」
話しかけられることすら嫌そうに鬼灯が顔をしかめる。
地獄で閻魔大王の補佐官をしている鬼神の彼は、時々アマネの店へ薬を買いに来た。最初に会った時は腰の高さ程度の小鬼だったのに、今では身長も追い越して地獄きってのサディストなのだから分からない。
中国の裁判制度を教えた時は熱心で貪欲で面白い子だったのに、いつのまにか平等に話すようにまでなってしまった。自分の見た目はその間、全く変わっていない。
「君はいつもそうだなぁ。『知らない』『どうでもいい』『早く薬を寄越せ』。俺と話すのが嫌なら違う店へ行けばいい。そうしたら俺は引き篭もれる」
「ニートにでもなるつもりですか」
「いっそ君がその金棒で俺が再生されなくなるまで殴ればいいのに。君は嫌な奴を殴れるし俺は治るまで何も考えずに済む。ホラ、一石ニ鳥というやつだなぁ」
アマネの淹れた煎茶を飲んでいた鬼灯が睨んでくる。足元で作業をしていた兎がのそのそと外へ出て行った。
「君も変に思わねぇかぁ? こんな化け物が吉兆の印だぜぇ? それならあの人は天帝にだってなれる。嫌がりそうだけど」
「『あの人』?」
「ああそっか、ここでは総じて『大いなる封印』か。……あの人のほうが白澤に相応しい。あの人は薬に詳しい訳じゃねぇけど、あの人がいるだけで少なくとも俺は幸せだもんなぁ」
だが、白澤になったあの人を想像したら昼寝している姿しか考えられない。
「そしたら俺は鬼でも亡者でもなんでもいい。賽の川原で水子に積まれる石でも文句は言わない。でもあの人が散歩の途中にでも俺をちょっと見て、あの笑みを浮かべてくれるんだぜぇ。幸せだね。……なぁ鬼灯? なんで君はそんな顔をしてんだぁ?」
現世ではやっと覚えがある時代になったようだけれど、誰か居やしないかと探しに行く事は辞めた。探して、もし見つけても会えるわけが無い。だって自分は本当に『化け物』になってしまった。
会えても一緒に居る事は出来ない。例え彼岸へ渡ってきたとしても、それは全てを忘れて生まれ変わってしまうまでの間だけ。
ああこれは寂しいな、と一度考えてしまえばもう駄目だった。
何をしても虚無だ。一時期は酒に溺れたり女性と遊んだりもしたけれど、元からそういうのが好きだった訳でもないのですぐに飽きた。
長い人生も、間に転生を挟まないとこうも疲れるものらしい。もしかしたらもう二度と転生はしないのかも知れなかった。
「そもそも『白澤』って死ぬのかぁ?」
「……知りませんよ。そんな事」
話しかけられることすら嫌そうに鬼灯が顔をしかめる。
地獄で閻魔大王の補佐官をしている鬼神の彼は、時々アマネの店へ薬を買いに来た。最初に会った時は腰の高さ程度の小鬼だったのに、今では身長も追い越して地獄きってのサディストなのだから分からない。
中国の裁判制度を教えた時は熱心で貪欲で面白い子だったのに、いつのまにか平等に話すようにまでなってしまった。自分の見た目はその間、全く変わっていない。
「君はいつもそうだなぁ。『知らない』『どうでもいい』『早く薬を寄越せ』。俺と話すのが嫌なら違う店へ行けばいい。そうしたら俺は引き篭もれる」
「ニートにでもなるつもりですか」
「いっそ君がその金棒で俺が再生されなくなるまで殴ればいいのに。君は嫌な奴を殴れるし俺は治るまで何も考えずに済む。ホラ、一石ニ鳥というやつだなぁ」
アマネの淹れた煎茶を飲んでいた鬼灯が睨んでくる。足元で作業をしていた兎がのそのそと外へ出て行った。
「君も変に思わねぇかぁ? こんな化け物が吉兆の印だぜぇ? それならあの人は天帝にだってなれる。嫌がりそうだけど」
「『あの人』?」
「ああそっか、ここでは総じて『大いなる封印』か。……あの人のほうが白澤に相応しい。あの人は薬に詳しい訳じゃねぇけど、あの人がいるだけで少なくとも俺は幸せだもんなぁ」
だが、白澤になったあの人を想像したら昼寝している姿しか考えられない。
「そしたら俺は鬼でも亡者でもなんでもいい。賽の川原で水子に積まれる石でも文句は言わない。でもあの人が散歩の途中にでも俺をちょっと見て、あの笑みを浮かべてくれるんだぜぇ。幸せだね。……なぁ鬼灯? なんで君はそんな顔をしてんだぁ?」
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