ヴェロニカの嵐
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昼頃に一人では運べないからと手ぶらで戻ってきたリィの案内で向かった先には、立派な雄鹿が倒れていた。他に胡桃の木と栗の木も見つけたから収集要員にと全員で来ていたわけだが、流石にその大きさには絶句している。
「随分とまたデカイのを獲ったなぁ」
「そうか? でも人数がいるからな」
手早く後ろ足と前足を棒へ括りつけているリィは気にした様子も無い。人数がいて下手な量では意味が無い事くらいシルビも分かっているが、運べるのか不安になる。
おそらくシルビ一人でなら運べるのだ。どうしてかシルビの体力は何度転生しようとおかしいので、本気を出せばこの程度の雄鹿なら片手でも運べる。
そうでなくとも腕輪があるので、指を鳴らして第八の炎で一瞬にして運ぶ事だって出来なくは無い。むしろここ最近はそうした楽をしている事が多かった。
しかしハンス達生徒がいるこの場では、第八の炎は最初から論外である。ではシルビが運ぶかとなるとまた微妙なところだ。
『常識的にこの大きさの雄鹿は子供一人では運べない』だろうからである。
現段階でハンスとフランクへ持ち上げて運ぶように頼んでいるが、ソレは無理な話だろう。
シルビは溜め息を吐いてから、ハンスが持ち上げようと頑張っている棒の持ち手へと近付いた。
「ハンス寮長、チェンジだぁ」
「え、シルビ?」
ハンスをやんわりと押し退けてフランクにも離れてもらい、一息で背中へ担ぎ上げる。正直死体だと思ってしまうと首筋に当たる毛が不快なのだが、これが運べないとどうにもならないのだから我慢するしかない。
「……途中で休憩挟んでいいかぁ? 流石にちょっと重ぃ」
「だ、大丈夫なのか? あんなに重いのに」
心配そうにハンスが聞いてくるのに僅かに頷きを返す。休憩が欲しいのは重いからではなく首筋が不快だからだ。毛がヤバイ。毛が。
今までずっと隠し続けてきた異常性について諦めた訳ではない。常識から外れた行いだという事は充分分かっている。
しかしだ。ハンスとフランクが運べないと分かった時、リィが大人しくしているとは思えない。リィの体力がどうなっているかシルビは知らないが、おそらく最悪引き摺るなり分割するなりして運ぶと言い出すだろう。となるとリィの手間が増えるのだ。
達成できているとは思わないが『目指せ一般市民』を目指しているリィに、これ以上異常性をさらけ出させるのもどうかと思ったのである。『異常性を見せるな』という点ではシルビも同じ目標を持つ身として、歳下のリィにばかり苦労はさせられない。
小屋まで二度ほど休憩を挟ませてもらったが、結局首の不快さは運んでいる間ずっと有った。
「随分とまたデカイのを獲ったなぁ」
「そうか? でも人数がいるからな」
手早く後ろ足と前足を棒へ括りつけているリィは気にした様子も無い。人数がいて下手な量では意味が無い事くらいシルビも分かっているが、運べるのか不安になる。
おそらくシルビ一人でなら運べるのだ。どうしてかシルビの体力は何度転生しようとおかしいので、本気を出せばこの程度の雄鹿なら片手でも運べる。
そうでなくとも腕輪があるので、指を鳴らして第八の炎で一瞬にして運ぶ事だって出来なくは無い。むしろここ最近はそうした楽をしている事が多かった。
しかしハンス達生徒がいるこの場では、第八の炎は最初から論外である。ではシルビが運ぶかとなるとまた微妙なところだ。
『常識的にこの大きさの雄鹿は子供一人では運べない』だろうからである。
現段階でハンスとフランクへ持ち上げて運ぶように頼んでいるが、ソレは無理な話だろう。
シルビは溜め息を吐いてから、ハンスが持ち上げようと頑張っている棒の持ち手へと近付いた。
「ハンス寮長、チェンジだぁ」
「え、シルビ?」
ハンスをやんわりと押し退けてフランクにも離れてもらい、一息で背中へ担ぎ上げる。正直死体だと思ってしまうと首筋に当たる毛が不快なのだが、これが運べないとどうにもならないのだから我慢するしかない。
「……途中で休憩挟んでいいかぁ? 流石にちょっと重ぃ」
「だ、大丈夫なのか? あんなに重いのに」
心配そうにハンスが聞いてくるのに僅かに頷きを返す。休憩が欲しいのは重いからではなく首筋が不快だからだ。毛がヤバイ。毛が。
今までずっと隠し続けてきた異常性について諦めた訳ではない。常識から外れた行いだという事は充分分かっている。
しかしだ。ハンスとフランクが運べないと分かった時、リィが大人しくしているとは思えない。リィの体力がどうなっているかシルビは知らないが、おそらく最悪引き摺るなり分割するなりして運ぶと言い出すだろう。となるとリィの手間が増えるのだ。
達成できているとは思わないが『目指せ一般市民』を目指しているリィに、これ以上異常性をさらけ出させるのもどうかと思ったのである。『異常性を見せるな』という点ではシルビも同じ目標を持つ身として、歳下のリィにばかり苦労はさせられない。
小屋まで二度ほど休憩を挟ませてもらったが、結局首の不快さは運んでいる間ずっと有った。