ヴェロニカの嵐
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翌朝になって、昨日の怪我を気にした様子も無く動き出したリィに続いて小屋へ戻れば、小屋の中では生徒達が蹲って眠っていた。
リィが声を掛けると飛び起きた彼等だが、寝ていた姿を見たシルビは少し考える。
もしリィやシェラ、ついでにシルビが居なかった場合、彼等が本来体験するはずだったのは昨夜のような恐怖なのではないか。この惑星へ着いて初日の夜に、彼等は存在しないキャンプ場へ辿り着けず、そもそも一日では人工的に作られた道の終着点へも至れなかった。
キャンプ場が存在しないと理解した時、彼等は果たしてこうも団結して集団行動をとれるのだろうか。
まずペギー・メイは無理だろう。小屋へと向かう段階でわがままを言っていた彼女を説得できる者が居るとは思えない。最上級生の三人が頑張ったところで、確実とも言えなかった。
そこまで考えて、シルビは自分がペギー・メイを随分と嫌っているのだと自己分析して自嘲する。
自分の荷物へ近付いてバッグの中から、今までの食事時に収穫した木の実の入った容器を取り出し、自分用に数粒出してシェラへと投げ渡した。
「食っておけぇ。リィもだけどシェラも皆の生命線なんだから」
「ありがとうございます」
同じ様に木の実を取り出して口に入れたシェラから容器を受け取り、バッグへ戻す。どうせこれから食料集めなどもするのだろうから、全てを食べる必要は無い。
小屋の台所にあった桶や鍋という容器をあるだけ持って湧き水の場所へ向かい、それらに水を汲んで小屋へ戻る。それから森へ入って食料集めに行く前に、シルビは小屋へ残って竈へ火を熾すというシェラと、畑からの『収穫物』しか食べられないチャックを呼んだ。
二人、特にチャックは自分がどうして呼ばれたのか分かっていない。チャックの顔は最初に宇宙港で顔を合わせた時より頬がこけている。
ヴェロニカ教にとっての『救い』とは何なのだろうか、と思わず聞きたくなってしまったのを堪えながら、シルビはバッグから取り出したごく小さなカプセルを渡した。
「何これ?」
「……俺が気に入ってる、天日干し以外にも手間暇が大量に掛かってるだけあって値段も高けぇ高級食塩。チャックにやる」
「えっ!?」
驚くチャックとは違い、シェラは不思議そうに首をかしげている。おそらく『岩塩があるのにどうして』といったところだろう。けれども理由はその岩塩『しかない』からだ。
ヴェロニカの教義に詳しい訳ではない。だが多分、人が収穫しなければ駄目だというのなら、塩にだって制限があるはずだ。
無論使わないならそれに越した事は無い。むしろ使わないで欲しい。本気で気に入っているのだ。
しかし人命が掛かっている場で、他の者はミネラル摂取が出来るようになった今、一人だけそれが出来ないのは頂けない。
リィが声を掛けると飛び起きた彼等だが、寝ていた姿を見たシルビは少し考える。
もしリィやシェラ、ついでにシルビが居なかった場合、彼等が本来体験するはずだったのは昨夜のような恐怖なのではないか。この惑星へ着いて初日の夜に、彼等は存在しないキャンプ場へ辿り着けず、そもそも一日では人工的に作られた道の終着点へも至れなかった。
キャンプ場が存在しないと理解した時、彼等は果たしてこうも団結して集団行動をとれるのだろうか。
まずペギー・メイは無理だろう。小屋へと向かう段階でわがままを言っていた彼女を説得できる者が居るとは思えない。最上級生の三人が頑張ったところで、確実とも言えなかった。
そこまで考えて、シルビは自分がペギー・メイを随分と嫌っているのだと自己分析して自嘲する。
自分の荷物へ近付いてバッグの中から、今までの食事時に収穫した木の実の入った容器を取り出し、自分用に数粒出してシェラへと投げ渡した。
「食っておけぇ。リィもだけどシェラも皆の生命線なんだから」
「ありがとうございます」
同じ様に木の実を取り出して口に入れたシェラから容器を受け取り、バッグへ戻す。どうせこれから食料集めなどもするのだろうから、全てを食べる必要は無い。
小屋の台所にあった桶や鍋という容器をあるだけ持って湧き水の場所へ向かい、それらに水を汲んで小屋へ戻る。それから森へ入って食料集めに行く前に、シルビは小屋へ残って竈へ火を熾すというシェラと、畑からの『収穫物』しか食べられないチャックを呼んだ。
二人、特にチャックは自分がどうして呼ばれたのか分かっていない。チャックの顔は最初に宇宙港で顔を合わせた時より頬がこけている。
ヴェロニカ教にとっての『救い』とは何なのだろうか、と思わず聞きたくなってしまったのを堪えながら、シルビはバッグから取り出したごく小さなカプセルを渡した。
「何これ?」
「……俺が気に入ってる、天日干し以外にも手間暇が大量に掛かってるだけあって値段も高けぇ高級食塩。チャックにやる」
「えっ!?」
驚くチャックとは違い、シェラは不思議そうに首をかしげている。おそらく『岩塩があるのにどうして』といったところだろう。けれども理由はその岩塩『しかない』からだ。
ヴェロニカの教義に詳しい訳ではない。だが多分、人が収穫しなければ駄目だというのなら、塩にだって制限があるはずだ。
無論使わないならそれに越した事は無い。むしろ使わないで欲しい。本気で気に入っているのだ。
しかし人命が掛かっている場で、他の者はミネラル摂取が出来るようになった今、一人だけそれが出来ないのは頂けない。