ヴェロニカの嵐
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「……生命力を、使ってんだと思う」
微かに嫌な匂いを燻らせる火傷の痕へ青色の炎を押し当てながら、シルビはぐったりとしているリィへ話す。本当は寝てもらった方がいいのだが、本人がシェラが戻ってくるまではと言ったのだ。
そのシェラはリィへ何か食べさせる物を探しにいった。精が付くものでなくとも、出血して失われた血のことを考えると温かいものを口にした方がいいことは確かだ。
だから『死ぬ気の炎』の説明をシェラが戻ってくるまでの時間つぶしに話していれば、荒い治療を受けた直後よりは回復したリィが、首を捻ってシルビを振り返る。
「だから世の理に対してはさほど不条理なモンじゃねぇ。右のコップから左のコップへ。この程度ならそれで済ませられる」
「シルビの寿命が縮んでるってことか?」
リィの表現に曖昧に笑う。
「流石に俺もそこまで自己犠牲な奴じゃねぇよ。俺の宿志は『一秒でも長く生きること』と『いつかは兄さんを解放すること』だぁ。それに反する事はしたいと思わねぇ」
「これはいいのか?」
「駄目だったとしても使ってたと思うぜぇ俺は」
「……そうか」
反論も咎めもせずに、リィはそう言っただけだった。
茂みの向こうから近付いてくる気配に顔を上げれば、水を溜めた鍋を持ったシェラが戻ってくる。焚き火の周囲に着々と足場を作り上げ、鍋を火に掛けたかと思うと取って返して石製のまな板などを持ってきては調理を始めた。
「手伝おうかぁ?」
「いえ、あなたはそのままそれを行なっていてください」
「おれはもう平気だぞ?」
「平気な奴はこんなにぐったりしてねぇ」
今だって、シルビが青い炎を消せば残っている熱と引き攣る痛みで呻いてもおかしくない。そうでなくとも焼いた瞬間の苦痛に、随分と体力が消耗されているはずだ。
シェラが出来上がった煮汁を鍋ごとリィの前へと置いて匙を渡した。シルビもおそらくシェラだって腹は減っているが、優先するべき相手はリィなので、自分へは分け前が来なくともシルビは怒ったりしない。
リィが煮汁を食べる様子を見て、やっと安心したようにシェラが笑みを浮かべる。シルビは一度リィの背中へ触れて熱が篭もっていないかを確かめてから、食べるのに邪魔だろうと灯し続けていた青い炎を消した。
「痛むようだったら言えぇ。治してやれねぇ分いくらでも痛みは鎮めてやるから」
「そうだな。食べ終わって様子見たら頼むよ」
そう言って少し笑うリィを見て、シルビは久しぶりに『無力感』を味わっている。
微かに嫌な匂いを燻らせる火傷の痕へ青色の炎を押し当てながら、シルビはぐったりとしているリィへ話す。本当は寝てもらった方がいいのだが、本人がシェラが戻ってくるまではと言ったのだ。
そのシェラはリィへ何か食べさせる物を探しにいった。精が付くものでなくとも、出血して失われた血のことを考えると温かいものを口にした方がいいことは確かだ。
だから『死ぬ気の炎』の説明をシェラが戻ってくるまでの時間つぶしに話していれば、荒い治療を受けた直後よりは回復したリィが、首を捻ってシルビを振り返る。
「だから世の理に対してはさほど不条理なモンじゃねぇ。右のコップから左のコップへ。この程度ならそれで済ませられる」
「シルビの寿命が縮んでるってことか?」
リィの表現に曖昧に笑う。
「流石に俺もそこまで自己犠牲な奴じゃねぇよ。俺の宿志は『一秒でも長く生きること』と『いつかは兄さんを解放すること』だぁ。それに反する事はしたいと思わねぇ」
「これはいいのか?」
「駄目だったとしても使ってたと思うぜぇ俺は」
「……そうか」
反論も咎めもせずに、リィはそう言っただけだった。
茂みの向こうから近付いてくる気配に顔を上げれば、水を溜めた鍋を持ったシェラが戻ってくる。焚き火の周囲に着々と足場を作り上げ、鍋を火に掛けたかと思うと取って返して石製のまな板などを持ってきては調理を始めた。
「手伝おうかぁ?」
「いえ、あなたはそのままそれを行なっていてください」
「おれはもう平気だぞ?」
「平気な奴はこんなにぐったりしてねぇ」
今だって、シルビが青い炎を消せば残っている熱と引き攣る痛みで呻いてもおかしくない。そうでなくとも焼いた瞬間の苦痛に、随分と体力が消耗されているはずだ。
シェラが出来上がった煮汁を鍋ごとリィの前へと置いて匙を渡した。シルビもおそらくシェラだって腹は減っているが、優先するべき相手はリィなので、自分へは分け前が来なくともシルビは怒ったりしない。
リィが煮汁を食べる様子を見て、やっと安心したようにシェラが笑みを浮かべる。シルビは一度リィの背中へ触れて熱が篭もっていないかを確かめてから、食べるのに邪魔だろうと灯し続けていた青い炎を消した。
「痛むようだったら言えぇ。治してやれねぇ分いくらでも痛みは鎮めてやるから」
「そうだな。食べ終わって様子見たら頼むよ」
そう言って少し笑うリィを見て、シルビは久しぶりに『無力感』を味わっている。