ヴェロニカの嵐
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確かに焼いてしまえばこれ以上の出血は収まるだろうが、その焼く時の痛みは尋常ではない。麻酔も無ければ抗生物質も無いこの場所で、下手すれば火傷が増えるだけでは済まないだろう。
絶句している間にも傷口を焼く為の鉄製の物が有るかを確認し始める二人に、シルビはハッとして他の生徒達を振り返った。
「誰か火かき棒とって来いぃ! 他の奴等は薪集めろぉ! リィ、森の中行けぇ。本当は風下がいいが何処でもいい。シェラはリィに着いてろぉ。出来るだけ止血しておきなさい」
「シルビは?」
「水を汲んだら行く。いいかぁ、絶対俺が戻る前に始めんじゃねぇぞぉ」
言い置いてシルビは小屋の中へと駆け込み、物置から水を汲めそうな桶を見つけ出して湖へ降りる為の階段を駆け下りる。殆ど飛び降りるような動きだったが、誰も見ていなかったので気にしない。
水を汲んで上へと戻れば生徒達は急いで薪を集めていた。森の中の一本の木の下へ座り込んでいるリィの傍へ集められたそれにシルビは火を熾す。シェラはフランクが持ってきた火かき棒を丹念に調べてから火へとくべた。
「シェラ以外は小屋へ戻れぇ。後は俺達がやるから」
腕輪に触れながらシルビがそう言うと、ジェームズが震える声で此処へ残ると言う。シルビは近付いてその頭をはたいた。
「邪魔だっつってんだよ。お前らがいると出来るモンも出来やしねぇ。これ以上迷惑かけんじゃねぇよ。ここに残ってアホみてぇな自己満足の義務感を果たそうとしたって、俺は邪魔だとしか思えねぇし、人の肉が焼ける匂いを嗅いで吐く馬鹿の面倒も見切れねぇ。いいから行けぇ!」
最後は全員へ向けて怒鳴るように言えば、シルビの言った内容へ怯えたのもあってか顔を青褪めさせながらも立ち去っていく。小さく息を吐いて振り返ればまだシェラが火かき棒を熱していた。
シルビはリィの眼の前にいってしゃがみ、リィの目を覗き込みながら左手で指を鳴らす。
「……それは?」
手に灯る黄色い炎へリィが不思議そうな目をした。
「いわゆる俺が使える『魔法』だぁ。……焼く前に少しでもその傷を治そう。完全に治すことも出来るだろうけど、他のヤツラにも見られた以上それはしちゃいけねぇ。でも見えねぇ部分を治すのなら問題は無ぇだろぉ?」
「炎を押し当てるのか? 痛そうだな」
「火かき棒を押し当てるよりは全然痛くねぇよ」
立ち上がってリィの背後へ回り、シルビは裂けた服を捲って傷口を晒す。シェラが火かき棒を熱しながら不安そうにこちらを見ていたので、安心させるように笑いかけた。
それでも結局は焼かねばならないことが、酷く申し訳なく感じられる。
絶句している間にも傷口を焼く為の鉄製の物が有るかを確認し始める二人に、シルビはハッとして他の生徒達を振り返った。
「誰か火かき棒とって来いぃ! 他の奴等は薪集めろぉ! リィ、森の中行けぇ。本当は風下がいいが何処でもいい。シェラはリィに着いてろぉ。出来るだけ止血しておきなさい」
「シルビは?」
「水を汲んだら行く。いいかぁ、絶対俺が戻る前に始めんじゃねぇぞぉ」
言い置いてシルビは小屋の中へと駆け込み、物置から水を汲めそうな桶を見つけ出して湖へ降りる為の階段を駆け下りる。殆ど飛び降りるような動きだったが、誰も見ていなかったので気にしない。
水を汲んで上へと戻れば生徒達は急いで薪を集めていた。森の中の一本の木の下へ座り込んでいるリィの傍へ集められたそれにシルビは火を熾す。シェラはフランクが持ってきた火かき棒を丹念に調べてから火へとくべた。
「シェラ以外は小屋へ戻れぇ。後は俺達がやるから」
腕輪に触れながらシルビがそう言うと、ジェームズが震える声で此処へ残ると言う。シルビは近付いてその頭をはたいた。
「邪魔だっつってんだよ。お前らがいると出来るモンも出来やしねぇ。これ以上迷惑かけんじゃねぇよ。ここに残ってアホみてぇな自己満足の義務感を果たそうとしたって、俺は邪魔だとしか思えねぇし、人の肉が焼ける匂いを嗅いで吐く馬鹿の面倒も見切れねぇ。いいから行けぇ!」
最後は全員へ向けて怒鳴るように言えば、シルビの言った内容へ怯えたのもあってか顔を青褪めさせながらも立ち去っていく。小さく息を吐いて振り返ればまだシェラが火かき棒を熱していた。
シルビはリィの眼の前にいってしゃがみ、リィの目を覗き込みながら左手で指を鳴らす。
「……それは?」
手に灯る黄色い炎へリィが不思議そうな目をした。
「いわゆる俺が使える『魔法』だぁ。……焼く前に少しでもその傷を治そう。完全に治すことも出来るだろうけど、他のヤツラにも見られた以上それはしちゃいけねぇ。でも見えねぇ部分を治すのなら問題は無ぇだろぉ?」
「炎を押し当てるのか? 痛そうだな」
「火かき棒を押し当てるよりは全然痛くねぇよ」
立ち上がってリィの背後へ回り、シルビは裂けた服を捲って傷口を晒す。シェラが火かき棒を熱しながら不安そうにこちらを見ていたので、安心させるように笑いかけた。
それでも結局は焼かねばならないことが、酷く申し訳なく感じられる。