ヴェロニカの嵐
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森を抜けると湖に面する崖にシェラ達が集まって下を覗き込んでいた。リィとジェームズの姿はそこにはないが、リィの声がかすかに聞こえてシェラがそれに返事をしている。
「シェラ!」
「シルビ! リィ達が崖を落ちてしまって、命綱を」
「目印になるように松明も灯した方がいい。シェラはここで待ってろぉ。俺が行く」
「はい」
引き攣るように返事をしてシェラが小屋へと命綱へ出来そうな蔓を取りに行く。シルビは崖の縁から身を乗り出して目を凝らした。
「……リィ!」
「シルビか。悪い、ジェームズをお願いできるか?」
「もうちょっと待ってろぉ」
シェラが蔓を編んだことで作られた縄と、松明を持ってくる。その縄の先を受け取り、シルビは崖の側面へ作られている階段を降り始めた。
湖という湿気の多い場所の傍で、木の枠で作られた階段は所々が腐っている。こんな水場に木製の階段を作った奴は馬鹿かと思う。
リィとジェームズが待っている場所へ着くと、水の匂いに紛れて鉄の匂いがした。
「リィ……?」
「大丈夫だ」
大丈夫だと思える匂いの濃さでは無かったが、明かりの無いうえに足元への不安も残る場所で追及しても仕方がない。泣きそうな顔のジェームズに蔓をしっかり結びつけて、シルビはジェームズを肩へ担いだ。下手に歩かせるよりは、シルビにとってはこの方が安全である。
後ろから付いて来るリィの足音が途切れたり乱れたりしないかと確かめつつ、ゆっくりと崖の上へと戻った。崖の上へ到着し、ジェームズを降ろすとシルビは後ろから付いて来ていたはずのリィを振り返る。
松明の灯りに照らされたリィの体は血塗れだ。シルビの傍へ来たシェラもリィを見て険しい顔になっている。
「傷を見てくれないか。自分じゃ見えないんだ」
シェラと一緒にリィの背後へ回り、破けている血だらけの服を慎重に捲り広げた。
「……これの何処が『大丈夫』なんだぁ?」
範囲は思っていたよりも狭い。だがその分深く、左肩から背中へかけて切れている。尖った岩肌にぶつけて切れたのだろうが、さほど肉が抉れて持っていかれていないことが救いだろうか。
「縫えるか?」
「申し訳ありません。針と糸の用意がありません」
「あっても縫うのは難しいだろぉ」
医学知識はあるので縫えるかどうかくらいは分かる。そんなシルビが見た限り、これは深すぎて医療設備の無い場所で縫うには、例え針と糸があっても推奨出来ない。
「じゃあ、焼くしかないな」
「はい」
淡々と提案して淡々と返事をするリィとシェラに、流石に絶句した。
「シェラ!」
「シルビ! リィ達が崖を落ちてしまって、命綱を」
「目印になるように松明も灯した方がいい。シェラはここで待ってろぉ。俺が行く」
「はい」
引き攣るように返事をしてシェラが小屋へと命綱へ出来そうな蔓を取りに行く。シルビは崖の縁から身を乗り出して目を凝らした。
「……リィ!」
「シルビか。悪い、ジェームズをお願いできるか?」
「もうちょっと待ってろぉ」
シェラが蔓を編んだことで作られた縄と、松明を持ってくる。その縄の先を受け取り、シルビは崖の側面へ作られている階段を降り始めた。
湖という湿気の多い場所の傍で、木の枠で作られた階段は所々が腐っている。こんな水場に木製の階段を作った奴は馬鹿かと思う。
リィとジェームズが待っている場所へ着くと、水の匂いに紛れて鉄の匂いがした。
「リィ……?」
「大丈夫だ」
大丈夫だと思える匂いの濃さでは無かったが、明かりの無いうえに足元への不安も残る場所で追及しても仕方がない。泣きそうな顔のジェームズに蔓をしっかり結びつけて、シルビはジェームズを肩へ担いだ。下手に歩かせるよりは、シルビにとってはこの方が安全である。
後ろから付いて来るリィの足音が途切れたり乱れたりしないかと確かめつつ、ゆっくりと崖の上へと戻った。崖の上へ到着し、ジェームズを降ろすとシルビは後ろから付いて来ていたはずのリィを振り返る。
松明の灯りに照らされたリィの体は血塗れだ。シルビの傍へ来たシェラもリィを見て険しい顔になっている。
「傷を見てくれないか。自分じゃ見えないんだ」
シェラと一緒にリィの背後へ回り、破けている血だらけの服を慎重に捲り広げた。
「……これの何処が『大丈夫』なんだぁ?」
範囲は思っていたよりも狭い。だがその分深く、左肩から背中へかけて切れている。尖った岩肌にぶつけて切れたのだろうが、さほど肉が抉れて持っていかれていないことが救いだろうか。
「縫えるか?」
「申し訳ありません。針と糸の用意がありません」
「あっても縫うのは難しいだろぉ」
医学知識はあるので縫えるかどうかくらいは分かる。そんなシルビが見た限り、これは深すぎて医療設備の無い場所で縫うには、例え針と糸があっても推奨出来ない。
「じゃあ、焼くしかないな」
「はい」
淡々と提案して淡々と返事をするリィとシェラに、流石に絶句した。