ヴェロニカの嵐
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湖の傍にある小屋を目指して歩き出した一行は静かだ。道なき道を進んでいることによる疲労というのもあるだろうが、それに加えてこの道行きが無意味なものだったという不安と、シルビの機嫌が悪いことが影響しているのだろう。
先頭を行くリィには悪いが、今すぐこの中学生達を置いて行きたい気分は続いていた。何も言わないのはリィが生徒も守ろうとしているからと、ハンスが『心配する』と言ったからだ。
大学惑星の寮暮らしを始めてからある意味一番世話になっている相手を、流石のシルビも蔑ろにするつもりは無い。そうでなくとも好感の持てる相手として認識しているものだから、シルビはリィ達に何かあったとしてもハンスだけは見捨てられないと思う。
暗くなってきた為に野宿することになり、火を熾す。出発前に準備した食料と水で飢えを癒し、全員が疲れて眠った頃にシルビは焚き火の傍から立ち上がった。
「どうした?」
「頭冷やしがてら、一人で寝る」
「そうだな。ずっと機嫌わるかっただろ。皆おびえてたぞ」
「……明日には戻すようにする」
「朝までに戻ってきてくださいね」
火の番をしていたリィとシェラに見送られて、シルビは森の奥へと入り込む。焚き火の灯りが大きめの点のように見える場所へまで進んでから、手頃な木の枝を選んでよじ登った。
木の上なら野生動物に襲われる可能性は低い。リスなどの小動物はともかく、鹿や猪は木を登れないからだ。そもそもこの星にそういう動物がいるかどうかはまだ不明だが。
シルビの体重を支えられる枝の上で楽な体勢を取り、目を閉じる。それからシルビは閉じた目蓋の裏で今日の事を反省することにした。
シルビは生きたい。少なくとも死にたいとは考えていない。『ジャック』と『サブジェイ』に会うまでは、どんな形であれこの世界からの退場など望んでいなかった。
わがままを言ったとはいえ、ペギー・メイにした事は完全に今の状況の八つ当たりだ。何も分かりはしない少女に向けてすることではなかったと、今更ながらに後悔する。
からかうように腰に着けているウォレットチェーンが音を立てて揺れるので、シルビはそれを無言で叩いた。バランスを崩して枝の上から落ちそうになったが、寸でのところで免れる。
「……努力賞はいらねぇんだよなぁ」
そう独りごちて一度目を開き、夜空を見上げて朝までの時間を確認した。とりあえず明日になったら、リィとシェラとハンスとは話をしたほうがいいかもしれない。
ペギー・メイに謝罪するつもりは、残念ながらまだ無かった。
先頭を行くリィには悪いが、今すぐこの中学生達を置いて行きたい気分は続いていた。何も言わないのはリィが生徒も守ろうとしているからと、ハンスが『心配する』と言ったからだ。
大学惑星の寮暮らしを始めてからある意味一番世話になっている相手を、流石のシルビも蔑ろにするつもりは無い。そうでなくとも好感の持てる相手として認識しているものだから、シルビはリィ達に何かあったとしてもハンスだけは見捨てられないと思う。
暗くなってきた為に野宿することになり、火を熾す。出発前に準備した食料と水で飢えを癒し、全員が疲れて眠った頃にシルビは焚き火の傍から立ち上がった。
「どうした?」
「頭冷やしがてら、一人で寝る」
「そうだな。ずっと機嫌わるかっただろ。皆おびえてたぞ」
「……明日には戻すようにする」
「朝までに戻ってきてくださいね」
火の番をしていたリィとシェラに見送られて、シルビは森の奥へと入り込む。焚き火の灯りが大きめの点のように見える場所へまで進んでから、手頃な木の枝を選んでよじ登った。
木の上なら野生動物に襲われる可能性は低い。リスなどの小動物はともかく、鹿や猪は木を登れないからだ。そもそもこの星にそういう動物がいるかどうかはまだ不明だが。
シルビの体重を支えられる枝の上で楽な体勢を取り、目を閉じる。それからシルビは閉じた目蓋の裏で今日の事を反省することにした。
シルビは生きたい。少なくとも死にたいとは考えていない。『ジャック』と『サブジェイ』に会うまでは、どんな形であれこの世界からの退場など望んでいなかった。
わがままを言ったとはいえ、ペギー・メイにした事は完全に今の状況の八つ当たりだ。何も分かりはしない少女に向けてすることではなかったと、今更ながらに後悔する。
からかうように腰に着けているウォレットチェーンが音を立てて揺れるので、シルビはそれを無言で叩いた。バランスを崩して枝の上から落ちそうになったが、寸でのところで免れる。
「……努力賞はいらねぇんだよなぁ」
そう独りごちて一度目を開き、夜空を見上げて朝までの時間を確認した。とりあえず明日になったら、リィとシェラとハンスとは話をしたほうがいいかもしれない。
ペギー・メイに謝罪するつもりは、残念ながらまだ無かった。