ヴェロニカの嵐
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SIDE ANGEL
シルビが怒っているのを見るのは初めてだなとリィは思った。けれどもそもそもシルビとの付き合いはケリー以上に短く、更には少し前までは今よりもっと一線を引いている様子があったからそれも当然かとも思う。
ルウよりも黒すけやケリーのような黒髪に、シェラよりも濃い色合いをした紫色の瞳。怒ると、正確には機嫌が悪くなるとかもしれないが、それらが研ぎ澄まされた刃物のように冷たさを放つ。
ただ多分、シルビはそれに気付いていないようだし、あれでもセーブしているのだろう。
「なっ……」
騒いでいたペギー・メイを睨むシルビの視線に、ハンスたちも顔を青褪めさせてシルビを見ていた。
「シルビ、少し落ち着いて……」
「充分落ち着いてるぜぇ。俺は遭難したと自己判断した時点で、自分の身を護る為に武器代わりの物を持ったぐらいには他人が怖ぇし、生き延びる事に必死だぁ。今はリィやシェラがいるから我慢してたけど、テメェみてぇな煩いガキに振り回されて生き延びる可能性を潰されるぐらいなら、俺は自力で小屋まで行って一人で勝手に生き延びる」
初日の夜にシルビは石を砕いて即席のナイフを作っている。何をするよりも真っ先にソレを作ったことを、リィは野生動物や自然界に対する怯えに備えたと思ったのだが、どうやら違っていたらしい。
『他人が怖い』
人間社会にリィよりも長く居るくせに、妙な事を言う。
「小屋に行かずとも、テメェのわがままを聞いて自分の命を危険に晒すぐれぇなら、俺は一人で行動する。俺と此処に残るって言うテメェとリィ達と、誰が生き延びられるだろうなぁ」
「な、何よその言い方……っ!」
「俺は死にたくねぇ。こんな所で、『あの人達』にも会えずに、会う為の努力すら出来ずに、何も出来ねぇまま死にたくねぇんだよ」
ジェームズがそれを聞いてハッとしたような表情を浮かべた。シルビが言う『あの人達』に関してはリィも聞いた覚えがあったが、ジェームズも何か聞いたことがあるのかもしれない。
一つ言えるとしたら、シルビはリィが思っている以上に『生き延びる』ことへ執着しているようだ。目的達成の為に。
しかしそれでは、もしその目的が達成したらシルビはどうするつもりなのだろうと思う。
「シルビ。死にたくないのは全員一緒だろう」
落ち着いた声に全員がハンスを見た。
「皆分かってるさ。もちろん僕もだ。それに一人で行ってしまったら、僕はシルビのことを心配するよ」
シルビはハンスを暫く見つめてから、とりあえずながらも怒りを静めて顔を逸らす。
その視線の先で、蝶が飛んでいたように見えた。
シルビが怒っているのを見るのは初めてだなとリィは思った。けれどもそもそもシルビとの付き合いはケリー以上に短く、更には少し前までは今よりもっと一線を引いている様子があったからそれも当然かとも思う。
ルウよりも黒すけやケリーのような黒髪に、シェラよりも濃い色合いをした紫色の瞳。怒ると、正確には機嫌が悪くなるとかもしれないが、それらが研ぎ澄まされた刃物のように冷たさを放つ。
ただ多分、シルビはそれに気付いていないようだし、あれでもセーブしているのだろう。
「なっ……」
騒いでいたペギー・メイを睨むシルビの視線に、ハンスたちも顔を青褪めさせてシルビを見ていた。
「シルビ、少し落ち着いて……」
「充分落ち着いてるぜぇ。俺は遭難したと自己判断した時点で、自分の身を護る為に武器代わりの物を持ったぐらいには他人が怖ぇし、生き延びる事に必死だぁ。今はリィやシェラがいるから我慢してたけど、テメェみてぇな煩いガキに振り回されて生き延びる可能性を潰されるぐらいなら、俺は自力で小屋まで行って一人で勝手に生き延びる」
初日の夜にシルビは石を砕いて即席のナイフを作っている。何をするよりも真っ先にソレを作ったことを、リィは野生動物や自然界に対する怯えに備えたと思ったのだが、どうやら違っていたらしい。
『他人が怖い』
人間社会にリィよりも長く居るくせに、妙な事を言う。
「小屋に行かずとも、テメェのわがままを聞いて自分の命を危険に晒すぐれぇなら、俺は一人で行動する。俺と此処に残るって言うテメェとリィ達と、誰が生き延びられるだろうなぁ」
「な、何よその言い方……っ!」
「俺は死にたくねぇ。こんな所で、『あの人達』にも会えずに、会う為の努力すら出来ずに、何も出来ねぇまま死にたくねぇんだよ」
ジェームズがそれを聞いてハッとしたような表情を浮かべた。シルビが言う『あの人達』に関してはリィも聞いた覚えがあったが、ジェームズも何か聞いたことがあるのかもしれない。
一つ言えるとしたら、シルビはリィが思っている以上に『生き延びる』ことへ執着しているようだ。目的達成の為に。
しかしそれでは、もしその目的が達成したらシルビはどうするつもりなのだろうと思う。
「シルビ。死にたくないのは全員一緒だろう」
落ち着いた声に全員がハンスを見た。
「皆分かってるさ。もちろん僕もだ。それに一人で行ってしまったら、僕はシルビのことを心配するよ」
シルビはハンスを暫く見つめてから、とりあえずながらも怒りを静めて顔を逸らす。
その視線の先で、蝶が飛んでいたように見えた。