ヴェロニカの嵐
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
珍しく声を荒げるハンスにシェラも賛同する。シルビもそれに諸手を上げこそしないが賛成だ。シルビとしてはせめて人の気配がしないところで一眠りしたい。
そもそもシルビは慣れない他人の気配があると眠れないのである。寮であれば個室なので平気だが、送迎船の中でも浅い眠りしか摂っていない。
ましてやこの惑星へ降ろされてからの二日間は、ベルベットールームへ伝言を頼んだ時以外に仮眠もしていなかった。一人離れた木の上で寝てもいいのだが、そんなことをすれば確実にハンスやジェームズに不審がられるだろう。
だったら屋根のある場所へ生徒達を導いてそこで寝かせて、一人で外で寝たほうが有意義だ。
リィはまた別の思惑があるらしく、挙げたのはチャックのことだった。
「他の皆はともかく、チャックは肉も木の実も食べられない。何か人の手で栽培されて収穫されたものを見つけてやらないと、命に関わる」
「馬鹿げてるぜ。遭難して生きるか死ぬかって時に食べ物の選り好みかよ」
「生きるか死ぬかだからこそ、食べられないのさ。――宗教ってのはそういうもんだろう?」
ここで宗教論を語るつもりはシルビには無い。ただシルビが今まで関わった事のある宗教というものは、一つ残らず内側は腐っていた。
いや、腐っていたというのは大袈裟な表現だが、膿があった事は確かで、あまり良い思い出はない。
チャック個人が信仰に対してどう行動するかは自由だ。けれどもシルビはまだ『死にたくない』
死なない為に信仰を捨てろとは強制しないが、代わりにその信仰に殉じなかった時の責任も負うつもりはない。だから口出しはしなかった。
「ぼくは……死にたくないよ」
そう言ったチャックに、思っている事は同じなのにどうして意見が食い違うのだろうと内心でだけ思う。チャックは何もしないよりは、と僅かな望みに期待して屋根のある場所へまで向かう事を選んだ。
歩きたくないからと不満の声をもらしたのは、ペギー・メイや女子中学生たちである。それもリィに残りたいなら残ればいいと一蹴されて、更に興奮していた。
「こういう時はみんなの意見を参考にするべきよ! それが民主主義の原則でしょう!」
人が大勢居る社会で安穏と過ごした者らしい意見である。しかし場違いな発言とも取れるそれに、ハンスやフランクは戸惑っていた。
リィは大して気にしていない様子だったが、シルビの方が限界だ。何も言わずに自分の荷物を取り上げて歩き出す。
「ちょっと!」
甲高い少女の声が耳障りだ。
「……俺は、リィほど優しくなれねぇよ。クソガキ」
そもそもシルビは慣れない他人の気配があると眠れないのである。寮であれば個室なので平気だが、送迎船の中でも浅い眠りしか摂っていない。
ましてやこの惑星へ降ろされてからの二日間は、ベルベットールームへ伝言を頼んだ時以外に仮眠もしていなかった。一人離れた木の上で寝てもいいのだが、そんなことをすれば確実にハンスやジェームズに不審がられるだろう。
だったら屋根のある場所へ生徒達を導いてそこで寝かせて、一人で外で寝たほうが有意義だ。
リィはまた別の思惑があるらしく、挙げたのはチャックのことだった。
「他の皆はともかく、チャックは肉も木の実も食べられない。何か人の手で栽培されて収穫されたものを見つけてやらないと、命に関わる」
「馬鹿げてるぜ。遭難して生きるか死ぬかって時に食べ物の選り好みかよ」
「生きるか死ぬかだからこそ、食べられないのさ。――宗教ってのはそういうもんだろう?」
ここで宗教論を語るつもりはシルビには無い。ただシルビが今まで関わった事のある宗教というものは、一つ残らず内側は腐っていた。
いや、腐っていたというのは大袈裟な表現だが、膿があった事は確かで、あまり良い思い出はない。
チャック個人が信仰に対してどう行動するかは自由だ。けれどもシルビはまだ『死にたくない』
死なない為に信仰を捨てろとは強制しないが、代わりにその信仰に殉じなかった時の責任も負うつもりはない。だから口出しはしなかった。
「ぼくは……死にたくないよ」
そう言ったチャックに、思っている事は同じなのにどうして意見が食い違うのだろうと内心でだけ思う。チャックは何もしないよりは、と僅かな望みに期待して屋根のある場所へまで向かう事を選んだ。
歩きたくないからと不満の声をもらしたのは、ペギー・メイや女子中学生たちである。それもリィに残りたいなら残ればいいと一蹴されて、更に興奮していた。
「こういう時はみんなの意見を参考にするべきよ! それが民主主義の原則でしょう!」
人が大勢居る社会で安穏と過ごした者らしい意見である。しかし場違いな発言とも取れるそれに、ハンスやフランクは戸惑っていた。
リィは大して気にしていない様子だったが、シルビの方が限界だ。何も言わずに自分の荷物を取り上げて歩き出す。
「ちょっと!」
甲高い少女の声が耳障りだ。
「……俺は、リィほど優しくなれねぇよ。クソガキ」