ヴェロニカの嵐
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森の中で一晩を明かす支度をしていたリィ達と合流し、食料集めや薪集めに一働きしてから降り始めた小雨に焚き火を囲んで、シルビは自分が何をしていたのかを説明した。
集合的無意識の空間に意識を落として、そこの住人に伝言を頼んだというだけの事だが、もしこれをリィやシェラ以外の者に話せば、遭難のせいで気が狂ったと思われるに違いない。
「それで、伝言は頼めたのか?」
「こっちの情報が殆ど無ぇからなぁ。全員無事だってことしか伝えられなかったぜぇ」
「ですが、そんなに社会へ干渉しても大丈夫なのですか? 非常識だとされるのでは?」
「だからキングかルウ宛の伝言にしたんだぁ。あの二人ならその非常識も受け止められんだろぉ」
「向こうの様子は分からないのか?」
「分かったら言ってるってぇ」
結局コチラの無事を伝える事しか出来ていない訳だが、その分捜索する側には僅かにも心の余裕が出来る。無論急いでくれた方がいいに違いないが、それで仕損じられても困るのだ。
木の葉を打つ雨の音が次第に強くなっていく。深くなった夜を照らす焚き火へ薪を放り込んだリィが立ち上がる。それに続くようにシルビも立ち上がった。
ハンス達を迎えに行かねばならない。
「……起きてると思うか」
「寝てるに一票」
「私も寝ているほうに」
軽口を叩いたものの、本当に寝ていたのであれば命の危険さえある。シルビは一応ハンスへ警告していたが、心身共に疲れているであろう生徒達が眠っていない可能性は低い。
昨日でさえ、三人以外は眠ってしまったのだから。
積み上げた薪の中から比較的太いものを掴み上げたリィとシェラがその先へ火を灯す。シルビも薪を手に取って火を灯した。
それから左手首にある腕輪を確かめる。使わないに越した事は無いが万が一には使わざるを得ない心構えでいたほうがいいだろう。
「シルビ、それは?」
「ああ……俺の『魔法の杖』みてぇなモンかなぁ」
不思議そうに腕輪を見やる二人に、そういえば二人の前では死ぬ気の炎を使った事が無かったと思い出す。日常を平凡に過ごしていれば本来使うことのないものだが、シルビにとっては呼吸のように当たり前に傍にあるものだ。
「おれの指輪みたいなものか。ウォレットチェーンといい、色々持ってるな」
「くれた相手が違うんだぁ。もう持ってないと怖くて仕方がねぇ」
荷物が濡れない場所へ置かれている事を確認し、焚き火が居ない間に消えないように薪を足してから、ハンス達が雨宿りしているであろう河原の洞窟へと歩き出した。
森を出れば思っていたよりも強い雨が全身を打つものの、足を止めるわけにはいかない。地面に吸収されきっていない雨水が水溜りとなっていて、踏む度にぬかるんでいた地面が河原の小石へと変わる。
水かさを増しているなんて話ではない。水を蒸留させるのに使っていた即席の竈は既に水の底。足を入れれば靴など沈みそうだ。良くコレで眠っていられるなと思うものの、それだけ疲れ果てているのか。
視線を交わしてから、シルビはリィと一緒に水浸しの河原へと足を踏み入れた。
集合的無意識の空間に意識を落として、そこの住人に伝言を頼んだというだけの事だが、もしこれをリィやシェラ以外の者に話せば、遭難のせいで気が狂ったと思われるに違いない。
「それで、伝言は頼めたのか?」
「こっちの情報が殆ど無ぇからなぁ。全員無事だってことしか伝えられなかったぜぇ」
「ですが、そんなに社会へ干渉しても大丈夫なのですか? 非常識だとされるのでは?」
「だからキングかルウ宛の伝言にしたんだぁ。あの二人ならその非常識も受け止められんだろぉ」
「向こうの様子は分からないのか?」
「分かったら言ってるってぇ」
結局コチラの無事を伝える事しか出来ていない訳だが、その分捜索する側には僅かにも心の余裕が出来る。無論急いでくれた方がいいに違いないが、それで仕損じられても困るのだ。
木の葉を打つ雨の音が次第に強くなっていく。深くなった夜を照らす焚き火へ薪を放り込んだリィが立ち上がる。それに続くようにシルビも立ち上がった。
ハンス達を迎えに行かねばならない。
「……起きてると思うか」
「寝てるに一票」
「私も寝ているほうに」
軽口を叩いたものの、本当に寝ていたのであれば命の危険さえある。シルビは一応ハンスへ警告していたが、心身共に疲れているであろう生徒達が眠っていない可能性は低い。
昨日でさえ、三人以外は眠ってしまったのだから。
積み上げた薪の中から比較的太いものを掴み上げたリィとシェラがその先へ火を灯す。シルビも薪を手に取って火を灯した。
それから左手首にある腕輪を確かめる。使わないに越した事は無いが万が一には使わざるを得ない心構えでいたほうがいいだろう。
「シルビ、それは?」
「ああ……俺の『魔法の杖』みてぇなモンかなぁ」
不思議そうに腕輪を見やる二人に、そういえば二人の前では死ぬ気の炎を使った事が無かったと思い出す。日常を平凡に過ごしていれば本来使うことのないものだが、シルビにとっては呼吸のように当たり前に傍にあるものだ。
「おれの指輪みたいなものか。ウォレットチェーンといい、色々持ってるな」
「くれた相手が違うんだぁ。もう持ってないと怖くて仕方がねぇ」
荷物が濡れない場所へ置かれている事を確認し、焚き火が居ない間に消えないように薪を足してから、ハンス達が雨宿りしているであろう河原の洞窟へと歩き出した。
森を出れば思っていたよりも強い雨が全身を打つものの、足を止めるわけにはいかない。地面に吸収されきっていない雨水が水溜りとなっていて、踏む度にぬかるんでいた地面が河原の小石へと変わる。
水かさを増しているなんて話ではない。水を蒸留させるのに使っていた即席の竈は既に水の底。足を入れれば靴など沈みそうだ。良くコレで眠っていられるなと思うものの、それだけ疲れ果てているのか。
視線を交わしてから、シルビはリィと一緒に水浸しの河原へと足を踏み入れた。