ヴェロニカの嵐
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「こんなことなら塩を持ってくるんでしたね」
「あるぜぇ。ほんの少しだからまだ出す気にはなれねぇけど」
シェラが焼いてくれた木の実を口の中へ放り込んで言えば、背後でリィとシェラの眼の色が変わった気配がする。蒸留して冷えた分の水を容器へ移しながら、その視線に気付かないフリをした。
「シルビ」
「絶対出さねぇ。この人数はカバー出来ねぇし一度使っちまえば無くなってから文句が出る。極限状態になるまでとっとくべきだろぉが」
シルビが持っている塩は、本当にいざという時の為だけに持っている、カプセルの中へ入っている粉薬よりも微量のものだ。食料が無く辛うじて水があるという状況下において初めてシルビも使おうと思うもので、人間として生き延びる時間を僅かにでも延ばす為だけにある。
塩の有難みやその必要性など知らない生徒達は、一日ぶりの食事に何とか腹を満たしたせいか、そんな会話も気にしていなかった。
ただ、香ばしい匂いがしても動かなかったチャックだけが、ひたすらシルビの作った湯冷ましだけを飲んでいる。水だけでは栄養も無く体力が持たないだろうと勧められても、チャックは首を振るばかりで木の実の一つも口にしようとはしなかった。
その頑なさに、なんとなくシルビは違和感を覚える。
蒸留した水をあらかた容器へ移し終えると、それを確認したリィがおもむろに立ち上がった。
「水も確保したし、場所を変えよう」
途端にフランクが異議を唱える。シルビが振り返ると他の生徒達も、何を言っているんだと咎めるような表情をしていた。
「オレたちは遭難してるんだぞ。こういう時はじっと動かないで救助を待つのが常識だろう」
「僕もフランクに賛成だ。あちこち動き回るのは危険だよ。救助活動の妨げにもなる」
「救助は来ない」
とうとう言ったなと、シルビはシェラと視線を交わす。リィの言葉に驚いていないのは、当然かもしれないがシルビとシェラだけだ。
「おれは、ここは惑星ヴェロニカじゃないと思う」
今度こそ生徒達が絶句する。辛うじてされる反論も、一つずつリィに正論で言い返されていき、送迎船に乗り込んだ時点で自分達がこの惑星へ置き去りにされる計画だった可能性に考えが至って、冷や汗を垂らしたり顔色を悪くしたりし始めた。
そこまで考えが到らずとも、故意にこの何も無い惑星へ降ろされたのだという事は漠然と理解し始めている。
「チャックはヴェロニカ出身か?」
話を変えたわけではない。尋ねられたチャックは気まずげに視線を逸らし、それを見てシルビも感じていた違和感の理由に納得する。
だから、血相を変えて生水は飲めないと主張し、拾った木の実へも手をつけようとしなかった。チャックはヴェロニカ教信徒だ。
「あるぜぇ。ほんの少しだからまだ出す気にはなれねぇけど」
シェラが焼いてくれた木の実を口の中へ放り込んで言えば、背後でリィとシェラの眼の色が変わった気配がする。蒸留して冷えた分の水を容器へ移しながら、その視線に気付かないフリをした。
「シルビ」
「絶対出さねぇ。この人数はカバー出来ねぇし一度使っちまえば無くなってから文句が出る。極限状態になるまでとっとくべきだろぉが」
シルビが持っている塩は、本当にいざという時の為だけに持っている、カプセルの中へ入っている粉薬よりも微量のものだ。食料が無く辛うじて水があるという状況下において初めてシルビも使おうと思うもので、人間として生き延びる時間を僅かにでも延ばす為だけにある。
塩の有難みやその必要性など知らない生徒達は、一日ぶりの食事に何とか腹を満たしたせいか、そんな会話も気にしていなかった。
ただ、香ばしい匂いがしても動かなかったチャックだけが、ひたすらシルビの作った湯冷ましだけを飲んでいる。水だけでは栄養も無く体力が持たないだろうと勧められても、チャックは首を振るばかりで木の実の一つも口にしようとはしなかった。
その頑なさに、なんとなくシルビは違和感を覚える。
蒸留した水をあらかた容器へ移し終えると、それを確認したリィがおもむろに立ち上がった。
「水も確保したし、場所を変えよう」
途端にフランクが異議を唱える。シルビが振り返ると他の生徒達も、何を言っているんだと咎めるような表情をしていた。
「オレたちは遭難してるんだぞ。こういう時はじっと動かないで救助を待つのが常識だろう」
「僕もフランクに賛成だ。あちこち動き回るのは危険だよ。救助活動の妨げにもなる」
「救助は来ない」
とうとう言ったなと、シルビはシェラと視線を交わす。リィの言葉に驚いていないのは、当然かもしれないがシルビとシェラだけだ。
「おれは、ここは惑星ヴェロニカじゃないと思う」
今度こそ生徒達が絶句する。辛うじてされる反論も、一つずつリィに正論で言い返されていき、送迎船に乗り込んだ時点で自分達がこの惑星へ置き去りにされる計画だった可能性に考えが至って、冷や汗を垂らしたり顔色を悪くしたりし始めた。
そこまで考えが到らずとも、故意にこの何も無い惑星へ降ろされたのだという事は漠然と理解し始めている。
「チャックはヴェロニカ出身か?」
話を変えたわけではない。尋ねられたチャックは気まずげに視線を逸らし、それを見てシルビも感じていた違和感の理由に納得する。
だから、血相を変えて生水は飲めないと主張し、拾った木の実へも手をつけようとしなかった。チャックはヴェロニカ教信徒だ。