ヴェロニカの嵐
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森の中も一通り確認していたらしいシェラが頷くのに、シルビもリィに目配せを受けて荷物を置いた。昨夜のうちにナイフを作っておいて良かったと思いつつ、二人と一緒に森へ入ろうとしたところでファビエンヌへ呼び止められる。
「ちょっと待ってよ! どこ行くの!」
「食べ物を探しに行くんだよ。おれは腹が減った。ファビエンヌは減ってないのか」
「減ってるけど……その前に、喉かからからよ」
リィが不思議そうな顔をするのとは対照的に、シルビはそうだったと気付いて深く息を吐いた。
「何を言ってる? 目の前に川があるだろう」
「リィ」
「だって、これ……地面を流れてる水よ」
「ファビエンヌ女史」
「……それを飲むの?」
呆然とする生徒達と、その生徒達の思考が理解出来ないリィ達に挟まれていると実感する。
「じゃあ、何の水を飲むんだ?」
「私も先程飲みましたが、よく澄んでいますし、冷たくておいしい水ですよ」
「……違げぇ。違げぇんだよ二人共ぉ。ファビエンヌ女史達にとって水ってのは水道やボトルに入ってるものだぁ。その前の蒸留も何もせずに自然を流れてる水ってのは、同じ水でも印象が違げぇ。直飲みには抵抗があるんだぁ」
「そうなのか?」
初めて聞いたとばかりのリィとシェラの様子に、シルビは少し感激さえ覚えた。これで『目指せ一般市民』は少しじゃなく難しいところがある。
忘れていたシルビも同罪かもしれないが、ファビエンヌ達が切羽詰った状況でも生水を飲むという発想に到らないとまでは思わなかったのだ。喉か渇いているといっても、今の状況を考えれば予想できるだろうにと思わなくも無いが。
「生水なんか飲めないよ」
血相を変えてまで無理だと叫ぶ男子中学生のチャックに、シルビは腕組みをして考え込んでいるリィとシェラを見やる。年が若いので大目に見るが、もし言ったのがハンスやフランクだったらシルビは殴って見捨てる自信があった。
「薪も集めて蒸留させるしかねぇよ。水の容器が確か耐熱使用になってたはずだから、それを使えば蒸留出来んだろぉ」
「しょうがない。まず、薪と食料を拾い集めるか」
自分が居て良かったとつくづく思う。でなければおそらくこの二人だけで十人近くの面倒を見なければならなかったに違いない。
いくら二人が野営に慣れているとはいえ、何も自力では出来ない上にわがままだって言うだろう子供を、十人も相手をしていれば疲れるに決まっている。
せめて自分だけは二人に面倒を掛けないようにしようとシルビは決意を新たに、薪と食べられそうなものを集める為に森へと足を踏み入れた。
ふと、そもそもリィ達とハンス達の間で通訳代わりにされている気のある自分がいなかったら、もう少し手間が掛かっているんじゃないかと思ったのは秘密である。
「ちょっと待ってよ! どこ行くの!」
「食べ物を探しに行くんだよ。おれは腹が減った。ファビエンヌは減ってないのか」
「減ってるけど……その前に、喉かからからよ」
リィが不思議そうな顔をするのとは対照的に、シルビはそうだったと気付いて深く息を吐いた。
「何を言ってる? 目の前に川があるだろう」
「リィ」
「だって、これ……地面を流れてる水よ」
「ファビエンヌ女史」
「……それを飲むの?」
呆然とする生徒達と、その生徒達の思考が理解出来ないリィ達に挟まれていると実感する。
「じゃあ、何の水を飲むんだ?」
「私も先程飲みましたが、よく澄んでいますし、冷たくておいしい水ですよ」
「……違げぇ。違げぇんだよ二人共ぉ。ファビエンヌ女史達にとって水ってのは水道やボトルに入ってるものだぁ。その前の蒸留も何もせずに自然を流れてる水ってのは、同じ水でも印象が違げぇ。直飲みには抵抗があるんだぁ」
「そうなのか?」
初めて聞いたとばかりのリィとシェラの様子に、シルビは少し感激さえ覚えた。これで『目指せ一般市民』は少しじゃなく難しいところがある。
忘れていたシルビも同罪かもしれないが、ファビエンヌ達が切羽詰った状況でも生水を飲むという発想に到らないとまでは思わなかったのだ。喉か渇いているといっても、今の状況を考えれば予想できるだろうにと思わなくも無いが。
「生水なんか飲めないよ」
血相を変えてまで無理だと叫ぶ男子中学生のチャックに、シルビは腕組みをして考え込んでいるリィとシェラを見やる。年が若いので大目に見るが、もし言ったのがハンスやフランクだったらシルビは殴って見捨てる自信があった。
「薪も集めて蒸留させるしかねぇよ。水の容器が確か耐熱使用になってたはずだから、それを使えば蒸留出来んだろぉ」
「しょうがない。まず、薪と食料を拾い集めるか」
自分が居て良かったとつくづく思う。でなければおそらくこの二人だけで十人近くの面倒を見なければならなかったに違いない。
いくら二人が野営に慣れているとはいえ、何も自力では出来ない上にわがままだって言うだろう子供を、十人も相手をしていれば疲れるに決まっている。
せめて自分だけは二人に面倒を掛けないようにしようとシルビは決意を新たに、薪と食べられそうなものを集める為に森へと足を踏み入れた。
ふと、そもそもリィ達とハンス達の間で通訳代わりにされている気のある自分がいなかったら、もう少し手間が掛かっているんじゃないかと思ったのは秘密である。