ヴェロニカの嵐
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とうとう暗闇に負けて立ち止まった先頭の三人に、シルビは後ろから一人ずつ人数を確認するように、その肩や腕を軽く叩きながら先頭へと向かい、鞄から取り出して火を点けたフリをして指先へ炎を灯す。
いきなりの灯りへ驚く三人の顔を照らしながら、シルビは肩を竦めてみせた。
「言っただろぉ。自殺行為だってぇ」
「……シルビ、それは」
「これはただの手品。すぐにまた消えちまう。だから灯りとしては……ホラ消えたぁ」
目の前で芯が無くなった様に炎を消せば、消える寸前三人の絶望に近い表情が見える。シルビは夜目が利くので、星が出ているこの夜空の下ではハッキリと見えているのだが、他の面々はそうはいかない。
きっと眼の前に居るシルビの姿さえ見えていないだろう。背後では座り込んでしまったらしい女子中学生達のすすり泣く声がした。
「もう一回さっきの手品出来ない?」
「……ん」
ファビエンヌに言われてもう一度指を鳴らす。爪の先程度の小さな灯りだが、彼等にとっては生命線にも等しいだろう。だが、だからといってこれを延々と灯し続ける訳にはいかないのだ。
再び自然に消えた風を装って消した炎に、何とか落ち着きを取り戻したらしい三人が話し合い始める。女子中学生の中から泣き声混じりのコッチに来て火を点けろという声は無視した。
ジェームズが叫んだのはその時だ。
「灯りだ!」
全員が一斉に振り返るが、その灯りが来た道の方からゆらゆらと近付いて来ていることに異変を覚えているものはいない。もしここで進行方向から来ていれば、もっと喜べただろうに。
「みんな、無事か?」
松明を持ったリィに、シルビもホッとする。これ以上は手品で誤魔化して誘導するのも難しそうだったからだ。
「全員居るぜぇ。怪我もしてねぇ」
「そうか。今夜は野宿するしかないだろうな。戻るぞ」
驚きの声が上がるが、キャンプ場へ着かないのならそれも仕方がないだろう。先ほどの場所でシェラが火を焚いていると言い残し、灯りを持ったままリィが踵を返して戻っていく。
ジェームズとチャックが慌てて遠ざかる火を追い掛ける様に続き、最年少のドビーも走り出した。
最年長の三人も慌てて後を追いかけ、座り込んで泣いていた女子中学生も泣き言を言いながらも立ち上がる。シルビは最後まで残り、居残りや荷物の置忘れが無い事を確認してからリィとシェラが用意したであろう焚き火の元へ向かう。
先頭の位置からしても、キャンプ場が灯しているであろう明かりが見えることは無かった。
いきなりの灯りへ驚く三人の顔を照らしながら、シルビは肩を竦めてみせた。
「言っただろぉ。自殺行為だってぇ」
「……シルビ、それは」
「これはただの手品。すぐにまた消えちまう。だから灯りとしては……ホラ消えたぁ」
目の前で芯が無くなった様に炎を消せば、消える寸前三人の絶望に近い表情が見える。シルビは夜目が利くので、星が出ているこの夜空の下ではハッキリと見えているのだが、他の面々はそうはいかない。
きっと眼の前に居るシルビの姿さえ見えていないだろう。背後では座り込んでしまったらしい女子中学生達のすすり泣く声がした。
「もう一回さっきの手品出来ない?」
「……ん」
ファビエンヌに言われてもう一度指を鳴らす。爪の先程度の小さな灯りだが、彼等にとっては生命線にも等しいだろう。だが、だからといってこれを延々と灯し続ける訳にはいかないのだ。
再び自然に消えた風を装って消した炎に、何とか落ち着きを取り戻したらしい三人が話し合い始める。女子中学生の中から泣き声混じりのコッチに来て火を点けろという声は無視した。
ジェームズが叫んだのはその時だ。
「灯りだ!」
全員が一斉に振り返るが、その灯りが来た道の方からゆらゆらと近付いて来ていることに異変を覚えているものはいない。もしここで進行方向から来ていれば、もっと喜べただろうに。
「みんな、無事か?」
松明を持ったリィに、シルビもホッとする。これ以上は手品で誤魔化して誘導するのも難しそうだったからだ。
「全員居るぜぇ。怪我もしてねぇ」
「そうか。今夜は野宿するしかないだろうな。戻るぞ」
驚きの声が上がるが、キャンプ場へ着かないのならそれも仕方がないだろう。先ほどの場所でシェラが火を焚いていると言い残し、灯りを持ったままリィが踵を返して戻っていく。
ジェームズとチャックが慌てて遠ざかる火を追い掛ける様に続き、最年少のドビーも走り出した。
最年長の三人も慌てて後を追いかけ、座り込んで泣いていた女子中学生も泣き言を言いながらも立ち上がる。シルビは最後まで残り、居残りや荷物の置忘れが無い事を確認してからリィとシェラが用意したであろう焚き火の元へ向かう。
先頭の位置からしても、キャンプ場が灯しているであろう明かりが見えることは無かった。