ヴェロニカの嵐
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「おい! 戻ってこい!」
「フランク上級生。あいつ等の行動は正しい。陽がくれたらどうなるか分かってるかぁ?」
フランクはシルビに話しかけられて僅かに鼻白んだが、年上であるという意地もあってか勢いは消えない。
「分かってるさ! だから先を急いでるっていうのにあいつ等!」
「先を急ぐだけじゃ駄目なんだぁ。リィが言っただろぉ。陽が傾いてるって」
「だからっ……」
「シルビ。もう少し分かりやすく教えてくれないか」
興奮しているフランクを宥めるようにハンスが口を挟む。ハンスの方がシルビとしても話しやすいので助かった。
見上げた先の空は既に赤くなりつつある。自分の分だけではなくリィとシェラの分の荷物を抱え直して、シルビはつま先で地面にバツ印を書いておく。
何かあった時、リィ達がポイントとして確認できる様にだ。
「あれだけ陽が暮れると、暗くなるのは早ぇんだぁ。この場所には惑星大学と違って外灯も無ぇ。そんな場所で灯りも無しにいつ着くか分かんねぇキャンプ場へ向かうのは自殺行為だぜぇ」
「陽が暮れる前に着けるかもしれないだろ?」
「そしたらそれはそれでただの備えだって話になる。備えってのは後からしてたら遅せぇだろぉ?」
こうして話している間にも陽は落ちている。逆の空はもう暗い紺色に染まっており、星だって見えていた。ハンスは迷っているようだったが、最終的には頷いてみせる。
「君を信じていいんだね?」
「何かあったら、俺がリィとシェラを迎えに行く。それでいいだろぉ」
「――わかった。先に行こう。ただし、置き去りになるようだったら僕も一緒に行く。それでいいね?」
こんな場所であっても寮長として、上級生としての責任感が働くハンスは良く出来た男だ。
自分の命令を聞かないリィ達に機嫌を悪くしているフランクとファビエンヌも、納得は出来ないものの反論する体力さえ残っていないのか、まだ姿すら見えないキャンプ場へ向けて再び歩き出す。その後を中学生達も着いていく。
リィ達に代わって最後尾になったシルビは、もう一度確認するように空を見上げた。
シルビはこの星の日没時間などは知らない。しかし経験則で後どれくらいで陽が暮れてしまうのかは分かる。
あと三十分。もって一時間。そしておそらく自然界の暗闇に慣れていないハンス達の足が止まるのは、もっと早いだろう。
遅れがちな小柄な中学生であるドビーの背に軽く手を添えて、シルビは焦りの滲む一行の足取りにペースを合わせた。
こんな事、朱色の弟分達と旅をした時以来な気がする。
「フランク上級生。あいつ等の行動は正しい。陽がくれたらどうなるか分かってるかぁ?」
フランクはシルビに話しかけられて僅かに鼻白んだが、年上であるという意地もあってか勢いは消えない。
「分かってるさ! だから先を急いでるっていうのにあいつ等!」
「先を急ぐだけじゃ駄目なんだぁ。リィが言っただろぉ。陽が傾いてるって」
「だからっ……」
「シルビ。もう少し分かりやすく教えてくれないか」
興奮しているフランクを宥めるようにハンスが口を挟む。ハンスの方がシルビとしても話しやすいので助かった。
見上げた先の空は既に赤くなりつつある。自分の分だけではなくリィとシェラの分の荷物を抱え直して、シルビはつま先で地面にバツ印を書いておく。
何かあった時、リィ達がポイントとして確認できる様にだ。
「あれだけ陽が暮れると、暗くなるのは早ぇんだぁ。この場所には惑星大学と違って外灯も無ぇ。そんな場所で灯りも無しにいつ着くか分かんねぇキャンプ場へ向かうのは自殺行為だぜぇ」
「陽が暮れる前に着けるかもしれないだろ?」
「そしたらそれはそれでただの備えだって話になる。備えってのは後からしてたら遅せぇだろぉ?」
こうして話している間にも陽は落ちている。逆の空はもう暗い紺色に染まっており、星だって見えていた。ハンスは迷っているようだったが、最終的には頷いてみせる。
「君を信じていいんだね?」
「何かあったら、俺がリィとシェラを迎えに行く。それでいいだろぉ」
「――わかった。先に行こう。ただし、置き去りになるようだったら僕も一緒に行く。それでいいね?」
こんな場所であっても寮長として、上級生としての責任感が働くハンスは良く出来た男だ。
自分の命令を聞かないリィ達に機嫌を悪くしているフランクとファビエンヌも、納得は出来ないものの反論する体力さえ残っていないのか、まだ姿すら見えないキャンプ場へ向けて再び歩き出す。その後を中学生達も着いていく。
リィ達に代わって最後尾になったシルビは、もう一度確認するように空を見上げた。
シルビはこの星の日没時間などは知らない。しかし経験則で後どれくらいで陽が暮れてしまうのかは分かる。
あと三十分。もって一時間。そしておそらく自然界の暗闇に慣れていないハンス達の足が止まるのは、もっと早いだろう。
遅れがちな小柄な中学生であるドビーの背に軽く手を添えて、シルビは焦りの滲む一行の足取りにペースを合わせた。
こんな事、朱色の弟分達と旅をした時以来な気がする。