ヴェロニカの嵐
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キャンプ場への一本道を歩き始めて約五時間。合間合間で頻繁に休憩を挟んでいたとは言え、キャンプ場の姿は一向に見える様子が無かった。
例え最後尾であろうとこんなに見晴らしのいい場所でなら、遠くに人工的建造物の姿が見えてもおかしくは無い。そうでなくとも煙が立ち上る様子などが空に窺えてもいい筈だろう。
休憩中に見上げた空では陽が傾き始めていた。先頭を務めるハンス達を見れば、まだ異変に気付いていない。
再び歩き始めて一時間もすれば、流石のハンス達も異変に気が付いた。その頃になるとシルビも流石に嫌な予感がする。
「リィ、シェラ。二人とも灯りになるモン持ってたりするかぁ?」
「無いな。シルビは」
「『手品』で済ましていいなら火は灯せんだけど、誤魔化しきる自信が無ぇ」
左手首にある腕輪を意識して言えば、リィは辿り着かないキャンプ場について足を止めて話し合っているハンス達へ声を掛けた。
中学生達はリィとシェラ以外は疲れて座り込んでいる。こういう時は座り込むほうが逆に疲れるのだが、その辺の知識が都会育ちの彼等に分かる訳もない。
そして、灯りのない暗闇についても何も知りはしないから、陽が暮れかかっているとしても何も考えずにいられるのだろう。
「シルビは平気なのですか?」
「うん。文化水準が此処とは違う世界に居たことも……って、シェラ」
「聞かないほうがよろしかったですか?」
「いや、別にいいんだけどよぉ」
ハンス達の判断でとうとう使う事にした通信機は、予想に反して何の反応も返ってこない。キャンプ場に居るはずの職員がその呼び出しに気付かないという事は、体験学習へ参加する生徒が到着していない時点で有りえないと言っても過言ではないだろう。
いよいよ本格的に雲行きが怪しい気がしてきた。
「誰か、何か灯りになるものを持ってるか?」
リィの問いかけに是と答える者は居ない。光を集められる拡大鏡も無かったが、拡大鏡についてはシルビもそれで火を付けた事は無かった。
あるとしたらやってみたかったなと呑気に思えるのは、まだシルビの手元へは腕輪があるからだろう。
休憩を終えて出発しようとした一行の中で、シルビは地面に置こうとしたリィの荷物を受け取る。
「寮長、先に行ってくれ。おれは後から行く」
「何だって?」
「点火道具も懐中電灯もないんだ。今のうちに火をつくらなきゃ手遅れになる。――シェラ」
「はい。シルビ、私の荷物もお願いできますか?」
「Si 行っておいでぇ」
あっという間に右手側の森の中へと入って行ったシェラを見送り、リィもその後を追い掛ける様に森へと入っていく。先頭でフランクが勝手な真似はやめろと怒鳴っている為にちょっと立ち止まったが、シルビが手を振ると一度頷いてリィも姿を消した。
例え最後尾であろうとこんなに見晴らしのいい場所でなら、遠くに人工的建造物の姿が見えてもおかしくは無い。そうでなくとも煙が立ち上る様子などが空に窺えてもいい筈だろう。
休憩中に見上げた空では陽が傾き始めていた。先頭を務めるハンス達を見れば、まだ異変に気付いていない。
再び歩き始めて一時間もすれば、流石のハンス達も異変に気が付いた。その頃になるとシルビも流石に嫌な予感がする。
「リィ、シェラ。二人とも灯りになるモン持ってたりするかぁ?」
「無いな。シルビは」
「『手品』で済ましていいなら火は灯せんだけど、誤魔化しきる自信が無ぇ」
左手首にある腕輪を意識して言えば、リィは辿り着かないキャンプ場について足を止めて話し合っているハンス達へ声を掛けた。
中学生達はリィとシェラ以外は疲れて座り込んでいる。こういう時は座り込むほうが逆に疲れるのだが、その辺の知識が都会育ちの彼等に分かる訳もない。
そして、灯りのない暗闇についても何も知りはしないから、陽が暮れかかっているとしても何も考えずにいられるのだろう。
「シルビは平気なのですか?」
「うん。文化水準が此処とは違う世界に居たことも……って、シェラ」
「聞かないほうがよろしかったですか?」
「いや、別にいいんだけどよぉ」
ハンス達の判断でとうとう使う事にした通信機は、予想に反して何の反応も返ってこない。キャンプ場に居るはずの職員がその呼び出しに気付かないという事は、体験学習へ参加する生徒が到着していない時点で有りえないと言っても過言ではないだろう。
いよいよ本格的に雲行きが怪しい気がしてきた。
「誰か、何か灯りになるものを持ってるか?」
リィの問いかけに是と答える者は居ない。光を集められる拡大鏡も無かったが、拡大鏡についてはシルビもそれで火を付けた事は無かった。
あるとしたらやってみたかったなと呑気に思えるのは、まだシルビの手元へは腕輪があるからだろう。
休憩を終えて出発しようとした一行の中で、シルビは地面に置こうとしたリィの荷物を受け取る。
「寮長、先に行ってくれ。おれは後から行く」
「何だって?」
「点火道具も懐中電灯もないんだ。今のうちに火をつくらなきゃ手遅れになる。――シェラ」
「はい。シルビ、私の荷物もお願いできますか?」
「Si 行っておいでぇ」
あっという間に右手側の森の中へと入って行ったシェラを見送り、リィもその後を追い掛ける様に森へと入っていく。先頭でフランクが勝手な真似はやめろと怒鳴っている為にちょっと立ち止まったが、シルビが手を振ると一度頷いてリィも姿を消した。