前回の体験学習でクレイド宙域での重力波エンジン体験実習を選んだので、成績の偏りを防ぐ為にシルビが選んだ体験学習は、自分達の力だけで自炊する林間学校だった。
シルビも長いこと生きてきた為、自炊どころか野宿すら手馴れたものであるので本来なら学ぶ必要なんて無いのだが、それを知っているのはシルビ自身しかいないので、学ぶ必要が無いんだと主張するのも馬鹿らしい。
それに世界が変われば植物形態がかわってくるというのも良くあること。ましてや惑星一つを利用しての野営体験となれば、シルビとしては一度くらい経験しておいて損は無いと思える。元々インドア派ではないので身体を動かす事は好きだ。
だからという訳ではないが、当日になって集合場所である宇宙港へ行くまで、正直シルビは楽しみにしていた。そこに居た二人を見るまでは。

「楽しみにしてたんだよぉ……」
「そう言われましても……」

シルビに両肩を掴まれて困惑しているシェラには悪いが、シェラとリィと一緒に関わった事で、今までいい思い出だったことが無い。乗っている船が解体される寸前にまで追い込まれる中で小惑星を避けて操縦したり、変態教授を下落させたり、殺人教唆回避の相談に乗ったり、一般人がやることではないだろう。

「今回は何も無いかも知れないだろ。そう不安がるなよ」

そう言ってシルビの肩を叩くリィ達も、シルビと同じ体験学習へ参加するらしい。同じく参加するシルビと同じヴェルナール校のジェームズ・マクスウェルと、同じフォンダム寮で寮長でもあるハンス・スタンセンはシルビの嘆きに苦笑している。

「でも珍しいな。同じ体験学習にフォンダム寮生が五人集まるなんて。きみたちが一緒なら心強いよ」
「本当にね。でもアイクライン校生だって四人はいるのよ」

悪戯っぽい口調で口を挟んできた女子生徒にシルビは見覚えがあった。確かアイクラインの文化祭の時、リィ達と一緒に居た生徒である。
名前までは知らなかったので首を傾げれば、学校の違うシルビとジェームズへ向けて自己紹介をしてくれた。ファビエンヌ・デニングというらしい。ちなみにもう一人のアイクライン生はフランク・ダックスという男子生徒だ。どちらも最上級生だという。
フランクの方はリィを目の仇にしているようで、シルビがファビエンヌと挨拶を交わしている間にもリィへ喧嘩を売るように話しかけては言い返されて激昂していた。年下相手に何をやっているんだと思いもしたが、変に口出しして自分まで巻き込まれては面倒だ。