スペシャリストの誇り
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「では君は、警察がどう動くのか予想がつかないから、彼は動く事はないというのか?」
「無論それは可能性の一つです。でもプロだからこそ、不安要素は減らすと俺は思いますねぇ」
得体の知れないものへ無闇に手出しをしない。どんなものであれ玄人程その意味を理解しているものだ。
「ただ、警察側の動きが分からなくても、殺した奴等側の心理や行動は分かる。だから話しただけだと思いますよ」
「どうして?」
「プロは自分のテリトリーを土足で踏み荒らす素人が嫌いって、相場が決まってるでしょう。マクスウェル船長だって自分の船に他人が乗ってきて『オレが操縦してやる!』なんて言われりゃ、業腹モンじゃありませんかぁ?」
釈然としないところがありながらも納得しかけているらしいダンから、今度はヘッケル女史へと視線を移す。向けられた視線に怯えを見せまいとする精神は素晴らしいが、何もするつもりの無いのに警戒されるのは、警戒される側としてはちょっと苛立たしい。
「同時に、レティシアにとっても自分が疑われるっていうのは困る状況なんですよ。疑われてるって周囲に知られれば、周囲からの眼が多くなる。眼が多くなると周囲の奴等は警戒してレティシアの前じゃ普通の動きってのをしてくれなくなる。そうすると観察が出来ねぇ。観察出来なけりゃ一般に紛れんのが難しい。レティシアに利点が無ぇんです」
「……つまり、犯人であろうとなかろうと、今の状態は彼にとって好ましくないってことかしら」
「俺はそう思います」
注文した紅茶が温くなっている。それを一息に飲み干してシルビは向かいへ座っている大人二人を見た。
「お二人はそんな事が聞きたくて俺を呼び止めたんですか」
「……シルビ君。君はあの事件の犯人をどう思う?」
「……俺個人の憶測でモノを言いますが、医大生を調べてみては如何でしょう。切断箇所や切断の仕方からヘッケル女史は気付かれたかと思いますが、ありゃ医療知識のある奴がする切り方でした。まぁ、医大を目指す浪人生という可能性もありますが」
何故それが分かるのかを聞かれたくなくて、シルビは注文票を持って立ち上がる。そろそろ帰るために行動しなければ、夕食前に帰れそうに無いという理由もあったが。
ダンとヘッケル女史から逃げるように店を出て、大陸間運航バスのターミナルへ向かって歩きながら、聞いたばかりの事件の内容やこの前のレティシアの話を思い出して推理してみる。
殺人事件の犯人は、レティシアを誘っている学生達に確定と言っていい。問題は、そいつ等がどうやって監視カメラなどの記録を残さないようにしているか。
更に問題があるとすれば、今日の話でレティシアが警察の捜査技術の度合いと腕前を『知った』という事だろう。
「無論それは可能性の一つです。でもプロだからこそ、不安要素は減らすと俺は思いますねぇ」
得体の知れないものへ無闇に手出しをしない。どんなものであれ玄人程その意味を理解しているものだ。
「ただ、警察側の動きが分からなくても、殺した奴等側の心理や行動は分かる。だから話しただけだと思いますよ」
「どうして?」
「プロは自分のテリトリーを土足で踏み荒らす素人が嫌いって、相場が決まってるでしょう。マクスウェル船長だって自分の船に他人が乗ってきて『オレが操縦してやる!』なんて言われりゃ、業腹モンじゃありませんかぁ?」
釈然としないところがありながらも納得しかけているらしいダンから、今度はヘッケル女史へと視線を移す。向けられた視線に怯えを見せまいとする精神は素晴らしいが、何もするつもりの無いのに警戒されるのは、警戒される側としてはちょっと苛立たしい。
「同時に、レティシアにとっても自分が疑われるっていうのは困る状況なんですよ。疑われてるって周囲に知られれば、周囲からの眼が多くなる。眼が多くなると周囲の奴等は警戒してレティシアの前じゃ普通の動きってのをしてくれなくなる。そうすると観察が出来ねぇ。観察出来なけりゃ一般に紛れんのが難しい。レティシアに利点が無ぇんです」
「……つまり、犯人であろうとなかろうと、今の状態は彼にとって好ましくないってことかしら」
「俺はそう思います」
注文した紅茶が温くなっている。それを一息に飲み干してシルビは向かいへ座っている大人二人を見た。
「お二人はそんな事が聞きたくて俺を呼び止めたんですか」
「……シルビ君。君はあの事件の犯人をどう思う?」
「……俺個人の憶測でモノを言いますが、医大生を調べてみては如何でしょう。切断箇所や切断の仕方からヘッケル女史は気付かれたかと思いますが、ありゃ医療知識のある奴がする切り方でした。まぁ、医大を目指す浪人生という可能性もありますが」
何故それが分かるのかを聞かれたくなくて、シルビは注文票を持って立ち上がる。そろそろ帰るために行動しなければ、夕食前に帰れそうに無いという理由もあったが。
ダンとヘッケル女史から逃げるように店を出て、大陸間運航バスのターミナルへ向かって歩きながら、聞いたばかりの事件の内容やこの前のレティシアの話を思い出して推理してみる。
殺人事件の犯人は、レティシアを誘っている学生達に確定と言っていい。問題は、そいつ等がどうやって監視カメラなどの記録を残さないようにしているか。
更に問題があるとすれば、今日の話でレティシアが警察の捜査技術の度合いと腕前を『知った』という事だろう。