スペシャリストの誇り
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『暗殺者』と『節操無しの人殺し』というものを、実のところシルビも感覚で理解しているつもりでしかない。
無論シルビは日常生活ですれ違った人を殺そうとか、そういう不穏なことを思ったりはしないし、実際に手が動いてしまうなんて事も無かった。ただ、シルビの場合はレティシア達とも違う意味での『自制』が効いているだけなのだろうと思う。
次の事件が起こった場合レティシアに見聞させて、同一犯かどうかを確かめさせるという事で話がまとまり、次の会議室利用者が来た為に話し合いは一応終わった。シルビはレティシアと一緒に帰ろうと思ったものの、ダンに呼び止められる。
ダンの隣にはリィ達の思考を理解しきれず、殆どずっと混乱状態だった女性だ。レティシアと遊ぶ予定は無かった事にしてもらい、シルビはダンと女性に誘われて学校の近くにあった喫茶店へと入った。
「こちらはアネット・ヘッケル女史。臨床心理学に携わっておられる先生だ」
「はじめまして。ヴェルナール校の四年に在学しています。シルビ・グラマトです」
向かいの席へ座る女史へ軽く頭を下げれば、ヘッケル女史もぎこちなく頭を下げてくる。警戒しているという訳ではないだろうが、不審げにしているのが見てとれた。
「彼は私の知り合いでもありまして。同時に彼等の知り合いでもあります」
彼等、というのが誰の事なのかを理解した途端、ヘッケル女史の目へ無意識にだろうが怯えの色が滲む。あいつ等に会ってあそこまで論破された後ではそれも仕方ないだろうなと思いつつ、シルビはダンを見た。シルビを誘ったのはダンだ。
「君は、先ほどの話を聞いてどう思った?」
「事件の話ですか? 俺はレティシアと出会ったのなんてマクスウェル船長と同じ時で、歳が近ぇから遊ぶ程度の付き合いですけど、それでもレティシアがアレをやったとは思えねぇですね」
「彼がやったのではないと言い切れるのか?」
「根拠が勘でいいのなら言い切れます。それに、レティシアはまだこの世界へ不慣れな筈で、アイツが来てから大きな事件があった様子もねぇ。だとすると警察がどういう調査をするのかを知らなかったという可能性があります」
「というと?」
「どうやったら警察の目を掻い潜れるのかを、知らねぇってことですよ」
誰も口にしなかったけれど、『この世界』へ来たばかりであるレティシアだからこそ、当てはめることの出来る条件。
レティシアは元暗殺者であったからか物覚えはいいのだろう。現に学生としての生活を既に上手い具合に周囲に合わせて行なっていた。
しかしそれは観察して学ぶ対象がいたからだ。学生生活を行なうには周囲の学生を観察し、学び取ればいい。レティシアでなくとも環境に対応する為には無意識にそうするだろう。
だがそれと、普段経験しない事柄はまた別だ。警察はこういう仕事をする。だからきっとこういう捜査をしたりここを調べたりするのだろうという予測や想像は出来るが、明確には分からない為に、いきなり捜査へ協力しろといえばレティシアでさえ困るのではと思う。
無論シルビは日常生活ですれ違った人を殺そうとか、そういう不穏なことを思ったりはしないし、実際に手が動いてしまうなんて事も無かった。ただ、シルビの場合はレティシア達とも違う意味での『自制』が効いているだけなのだろうと思う。
次の事件が起こった場合レティシアに見聞させて、同一犯かどうかを確かめさせるという事で話がまとまり、次の会議室利用者が来た為に話し合いは一応終わった。シルビはレティシアと一緒に帰ろうと思ったものの、ダンに呼び止められる。
ダンの隣にはリィ達の思考を理解しきれず、殆どずっと混乱状態だった女性だ。レティシアと遊ぶ予定は無かった事にしてもらい、シルビはダンと女性に誘われて学校の近くにあった喫茶店へと入った。
「こちらはアネット・ヘッケル女史。臨床心理学に携わっておられる先生だ」
「はじめまして。ヴェルナール校の四年に在学しています。シルビ・グラマトです」
向かいの席へ座る女史へ軽く頭を下げれば、ヘッケル女史もぎこちなく頭を下げてくる。警戒しているという訳ではないだろうが、不審げにしているのが見てとれた。
「彼は私の知り合いでもありまして。同時に彼等の知り合いでもあります」
彼等、というのが誰の事なのかを理解した途端、ヘッケル女史の目へ無意識にだろうが怯えの色が滲む。あいつ等に会ってあそこまで論破された後ではそれも仕方ないだろうなと思いつつ、シルビはダンを見た。シルビを誘ったのはダンだ。
「君は、先ほどの話を聞いてどう思った?」
「事件の話ですか? 俺はレティシアと出会ったのなんてマクスウェル船長と同じ時で、歳が近ぇから遊ぶ程度の付き合いですけど、それでもレティシアがアレをやったとは思えねぇですね」
「彼がやったのではないと言い切れるのか?」
「根拠が勘でいいのなら言い切れます。それに、レティシアはまだこの世界へ不慣れな筈で、アイツが来てから大きな事件があった様子もねぇ。だとすると警察がどういう調査をするのかを知らなかったという可能性があります」
「というと?」
「どうやったら警察の目を掻い潜れるのかを、知らねぇってことですよ」
誰も口にしなかったけれど、『この世界』へ来たばかりであるレティシアだからこそ、当てはめることの出来る条件。
レティシアは元暗殺者であったからか物覚えはいいのだろう。現に学生としての生活を既に上手い具合に周囲に合わせて行なっていた。
しかしそれは観察して学ぶ対象がいたからだ。学生生活を行なうには周囲の学生を観察し、学び取ればいい。レティシアでなくとも環境に対応する為には無意識にそうするだろう。
だがそれと、普段経験しない事柄はまた別だ。警察はこういう仕事をする。だからきっとこういう捜査をしたりここを調べたりするのだろうという予測や想像は出来るが、明確には分からない為に、いきなり捜査へ協力しろといえばレティシアでさえ困るのではと思う。