嘆きのサイレン
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「……君に対する処分は自主休講の分の補習だけだ」
後ろで手を組んで窓の外を眺める教科主任の姿を見つめながら、シルビは続く言葉を待つ。
「クーア教官より口添え、それに君の今までの授業態度や成績を顧みての処分だが、不満はあるかね?」
「……いいえ」
返事をすれば教科主任が振り返りシルビを見た。
「君のアレは、何かしらの経験によるものと思ったが、聞いても構わないかな」
「昔、一時期ではありますが船へ乗っておりました。その時に僅かですが航宙士としての知識を教授されています」
「航宙士」
「俺がなりたいのは、航宙士です。ですが船の操縦に関し覚えておいて損は無い。そう考えて操縦課程を学んでいます」
嘘も交えて本当の事を言えば、教科主任はそれ以上何かを聞こうとはしない。経験を積んだ大人のそういうところは好ましいとシルビはいつも思う。相手を見た目だけで判断しない。
だから少しだけ踏み込んでみようと口を開く。
「俺はこれからもヴェルナール校で学んでもいいのでしょうか」
教科主任は探るようにシルビを見てから、言葉では何も言わずに頷いた。
「……次の授業の準備もあるだろう。もう行きなさい」
「失礼しました」
再び窓の外を眺める教科主任へ頭を下げてから部屋を出れば、廊下の先からこちらへ向かって歩いてくるダン・マクスウェル船長の姿が見えて、シルビは彼が自分へ気付くのを待って一礼する。
シルビへ気付いたマクスウェル船長が一瞬足を止め、それからスピードを変えることなく歩いてきた。ふと彼は実の母が現在この学校で臨時教官をしている事を知っているのだろうかと不思議に思ったが、関係ないことなので訊くのは止める。
「息子が世話になったらしいね」
「ご子息より元軍人の女性に振り回されています」
「……申し訳ない」
「いえ……きっと俺が強く拒否すればあの人は俺を巻き込もうとはしなかったでしょう。だから、あの人にも貴方にも謝られる筋合いじゃねぇんです」
ジャスミンはあの時微笑んだ。シルビはそれを諦めと取ったわけではなかったが、シルビが思ったのとは違う事を想っての笑みだったらしい。
「もう少し、周りに気を許しても大丈夫なんでしょう。少なくとも、クーア夫人と教科主任は信頼しても良さそうだと思いました」
「……出来れば私も信用されてみたいものだ」
「船長にはもう結構気を許してますよ俺は。でなけりゃ貴方の愚痴も何も聞きませんってぇ」
「う……」
冗談のように言ったマクスウェル船長へシルビが思わず笑みを浮かべながらそう返せば、苦虫を噛み潰したような顔をしたマクスウェル船長はしかし、すぐに再び一介の父親然とした大人の表情に戻した。
シルビは『あの人達』へ会うまで『一般』の枠を外れるつもりは無いが、意外とその枠は広いようである。
それならば、もう少しリィ達と関わる事に勇気を出しても良いかもしれない。
後ろで手を組んで窓の外を眺める教科主任の姿を見つめながら、シルビは続く言葉を待つ。
「クーア教官より口添え、それに君の今までの授業態度や成績を顧みての処分だが、不満はあるかね?」
「……いいえ」
返事をすれば教科主任が振り返りシルビを見た。
「君のアレは、何かしらの経験によるものと思ったが、聞いても構わないかな」
「昔、一時期ではありますが船へ乗っておりました。その時に僅かですが航宙士としての知識を教授されています」
「航宙士」
「俺がなりたいのは、航宙士です。ですが船の操縦に関し覚えておいて損は無い。そう考えて操縦課程を学んでいます」
嘘も交えて本当の事を言えば、教科主任はそれ以上何かを聞こうとはしない。経験を積んだ大人のそういうところは好ましいとシルビはいつも思う。相手を見た目だけで判断しない。
だから少しだけ踏み込んでみようと口を開く。
「俺はこれからもヴェルナール校で学んでもいいのでしょうか」
教科主任は探るようにシルビを見てから、言葉では何も言わずに頷いた。
「……次の授業の準備もあるだろう。もう行きなさい」
「失礼しました」
再び窓の外を眺める教科主任へ頭を下げてから部屋を出れば、廊下の先からこちらへ向かって歩いてくるダン・マクスウェル船長の姿が見えて、シルビは彼が自分へ気付くのを待って一礼する。
シルビへ気付いたマクスウェル船長が一瞬足を止め、それからスピードを変えることなく歩いてきた。ふと彼は実の母が現在この学校で臨時教官をしている事を知っているのだろうかと不思議に思ったが、関係ないことなので訊くのは止める。
「息子が世話になったらしいね」
「ご子息より元軍人の女性に振り回されています」
「……申し訳ない」
「いえ……きっと俺が強く拒否すればあの人は俺を巻き込もうとはしなかったでしょう。だから、あの人にも貴方にも謝られる筋合いじゃねぇんです」
ジャスミンはあの時微笑んだ。シルビはそれを諦めと取ったわけではなかったが、シルビが思ったのとは違う事を想っての笑みだったらしい。
「もう少し、周りに気を許しても大丈夫なんでしょう。少なくとも、クーア夫人と教科主任は信頼しても良さそうだと思いました」
「……出来れば私も信用されてみたいものだ」
「船長にはもう結構気を許してますよ俺は。でなけりゃ貴方の愚痴も何も聞きませんってぇ」
「う……」
冗談のように言ったマクスウェル船長へシルビが思わず笑みを浮かべながらそう返せば、苦虫を噛み潰したような顔をしたマクスウェル船長はしかし、すぐに再び一介の父親然とした大人の表情に戻した。
シルビは『あの人達』へ会うまで『一般』の枠を外れるつもりは無いが、意外とその枠は広いようである。
それならば、もう少しリィ達と関わる事に勇気を出しても良いかもしれない。