嘆きのサイレン
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ジャスミン視点
シルビ・T・グラマト。四年生にして操縦課程の全科目をパスできる技量を持つのではと噂される生徒。
教官達の評価を聞き、実際に授業での様子を確認してジャスミンはフム、と思う。
「彼は何故操縦課程にいるんだ?」
素朴な疑問だった。
ジャスミンとシルビは知り合いである。ヴェルナール校へ来てからまともに会って会話を交わしてもいないが、携帯端末の番号を教え合っているほどの仲ではあるので、仲はいいほうなのではと思う。しかしジャスミン自身はシルビのことをあまり知らなかった。
元々シルビはジャスミンの夫であるケリーの繋がりでの知人である。一度死んだ夫の知り合いであるだけでも変わっているが、更に言うならシルビ自身一度死んでまた生まれ変わったのだという。
以前は『海賊だった』というシルビは、その歳にして現役宇宙船の船長と同程度、ともすればそれ以上の操縦の腕前を持っている。だからわざわざこうして学ばずとも、何処かの宙海を航行している船にでも見習いとして乗ればいいのではないかと思うのだ。
知識は充分。経験もある。座学で学ぶべき事も理解している様子。
それ以上に彼は何を望むのか。
「気になる生徒でも居ましたか?」
「四年のシルビ・グラマトですかね。まだ短い付き合いですが知り合いでもありまして」
スコット元中将の仲介で会うことになったヴェルナール校の教科主任は、ジャスミンが画面に出していたシルビの成績表を見て目元を緩めた。
「彼ですか。優秀な生徒の一人です。しかし……」
「何か問題が?」
「人間関係にやや問題がありましてね。友人と呼べる者はいるようですが、どうも一人で居ることが多かった」
ジャスミンにはその理由が何となく分かった。いわゆる『ジェネレーションギャップ』だ。
五年ならともかく四十年近く眠っていたジャスミンでも、その感覚は馴染みがある。ましてやジャスミンの場合身体も知識も覚えている通りに取り戻しているが、シルビの場合は本来大人であってもおかしくない精神が、子供の身体に入っている事になるのだろう。
外側と内側の伴わない矛盾。
「それでは教員側もずいぶんと苦労なさるのでは?」
子供扱いする教師と精神だけは大人な生徒。最近知り合った金色の天使達にもその苦労があるのだろうかと思いながら尋ねれば、教科主任は朗らかに微笑んだ。
「いいえ。彼は同世代との親交が苦手なだけのようですよ。私になど廊下で会う度に駆け寄ってきて挨拶をしてきます。ご機嫌伺いではなく、ね」
「ほう……?」
少し意外に思ったが、そういえば年上には礼儀正しかったなと以前の騒動の時の様子を思い出す。
「それに最近は、同級生との親交をとるようになりましてね」
家族が倒れたと数日休んだ後からですから、家族に何か言われたのでしょうと続ける教科主任に、ジャスミンはシルビがその嘘で休んだ数日の出来事を思った。
リィ達が影響しているのだろう。
シルビ・T・グラマト。四年生にして操縦課程の全科目をパスできる技量を持つのではと噂される生徒。
教官達の評価を聞き、実際に授業での様子を確認してジャスミンはフム、と思う。
「彼は何故操縦課程にいるんだ?」
素朴な疑問だった。
ジャスミンとシルビは知り合いである。ヴェルナール校へ来てからまともに会って会話を交わしてもいないが、携帯端末の番号を教え合っているほどの仲ではあるので、仲はいいほうなのではと思う。しかしジャスミン自身はシルビのことをあまり知らなかった。
元々シルビはジャスミンの夫であるケリーの繋がりでの知人である。一度死んだ夫の知り合いであるだけでも変わっているが、更に言うならシルビ自身一度死んでまた生まれ変わったのだという。
以前は『海賊だった』というシルビは、その歳にして現役宇宙船の船長と同程度、ともすればそれ以上の操縦の腕前を持っている。だからわざわざこうして学ばずとも、何処かの宙海を航行している船にでも見習いとして乗ればいいのではないかと思うのだ。
知識は充分。経験もある。座学で学ぶべき事も理解している様子。
それ以上に彼は何を望むのか。
「気になる生徒でも居ましたか?」
「四年のシルビ・グラマトですかね。まだ短い付き合いですが知り合いでもありまして」
スコット元中将の仲介で会うことになったヴェルナール校の教科主任は、ジャスミンが画面に出していたシルビの成績表を見て目元を緩めた。
「彼ですか。優秀な生徒の一人です。しかし……」
「何か問題が?」
「人間関係にやや問題がありましてね。友人と呼べる者はいるようですが、どうも一人で居ることが多かった」
ジャスミンにはその理由が何となく分かった。いわゆる『ジェネレーションギャップ』だ。
五年ならともかく四十年近く眠っていたジャスミンでも、その感覚は馴染みがある。ましてやジャスミンの場合身体も知識も覚えている通りに取り戻しているが、シルビの場合は本来大人であってもおかしくない精神が、子供の身体に入っている事になるのだろう。
外側と内側の伴わない矛盾。
「それでは教員側もずいぶんと苦労なさるのでは?」
子供扱いする教師と精神だけは大人な生徒。最近知り合った金色の天使達にもその苦労があるのだろうかと思いながら尋ねれば、教科主任は朗らかに微笑んだ。
「いいえ。彼は同世代との親交が苦手なだけのようですよ。私になど廊下で会う度に駆け寄ってきて挨拶をしてきます。ご機嫌伺いではなく、ね」
「ほう……?」
少し意外に思ったが、そういえば年上には礼儀正しかったなと以前の騒動の時の様子を思い出す。
「それに最近は、同級生との親交をとるようになりましてね」
家族が倒れたと数日休んだ後からですから、家族に何か言われたのでしょうと続ける教科主任に、ジャスミンはシルビがその嘘で休んだ数日の出来事を思った。
リィ達が影響しているのだろう。