嘆きのサイレン
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教科主任のありがたいお言葉が終盤に差し掛かり、シルビは同級生の足を軽く踏んで正面に注意を向けさせた。流石に最後くらい真面目に聞こうという意思は、シルビにだってある。
「ここで諸君らに臨時教官を紹介する」
いつもとは違うその口上に、思わず姿勢を改めて教科主任を見た。
「諸君らの更なる成長のために特別にお呼びした。以前は連邦第七軍の戦闘機パイロットであり、退役した現在も優秀な操縦士としてご活躍されている」
教科主任のそんな説明は、壇上へと上がっていった人物の姿を見た途端シルビの耳へは入っていない。軍人だった経験が窺えるしっかりとした足取りで教科主任の横へ向かうその人を、唖然として見ているしか出来なかった。
第一印象は『赤い』人である。服装は無駄な装飾の無いシンプルな白いものだったが、その背中を腰まで流れる赤い髪が、そんな服の色など認識させない。同時に燃えるような気迫がその赤色を強調させていた。
身体のラインや顔立ちから女性である事は分かるのだが、それにしては背が高くよく鍛えられている事が服の上からでも分かる。シルビはこの歳での平均よりは背が高めだが、それでも彼女と対面したら見上げなければならない。
隣に座っていた同級生が信じられないというように喘ぐ。
「……あれ、女性? まじで?」
追加情報として既婚者だと言ったらどうなるだろう。ついでに孫もいるんだなどと言ったら、同級生は牛の背後以外にもトラウマが増えそうだ。
シルビはあの人を紹介される前から知っていた。少し前に再会された知人に紹介された、知人の奥方。
壇上に立って眼光鋭く生徒を見回すのは、ジャスミン・クーアその人である。
シルビは彼女が来る事など聞いていない。多分彼女の孫であるジェームズも知らないだろう。ジェームズの場合、彼女が自分の祖母である事も知らないが。
何も言えないでいるシルビと、生徒を一人ひとり眺めていたジャスミンの視線がふと合わさる。この場では声を掛けることも出来ないので目礼だけをすれば、僅かに目を細められた。目元を綻ばせるだけで、随分と印象が変わる人だ。
「ジャスミン・クーアだ。よろしく」
しかし名乗る声には獰猛な気配が篭もっており、不真面目な生徒がいたらどう罰してやろうかと今から楽しみで仕方がないという雰囲気が漂っている。
隣の同級生が今にも泣きそうな顔をしてシルビを見た。真面目にやれば大丈夫だという慰めは、不確定過ぎて逆に不安になるだろう。
「ここで諸君らに臨時教官を紹介する」
いつもとは違うその口上に、思わず姿勢を改めて教科主任を見た。
「諸君らの更なる成長のために特別にお呼びした。以前は連邦第七軍の戦闘機パイロットであり、退役した現在も優秀な操縦士としてご活躍されている」
教科主任のそんな説明は、壇上へと上がっていった人物の姿を見た途端シルビの耳へは入っていない。軍人だった経験が窺えるしっかりとした足取りで教科主任の横へ向かうその人を、唖然として見ているしか出来なかった。
第一印象は『赤い』人である。服装は無駄な装飾の無いシンプルな白いものだったが、その背中を腰まで流れる赤い髪が、そんな服の色など認識させない。同時に燃えるような気迫がその赤色を強調させていた。
身体のラインや顔立ちから女性である事は分かるのだが、それにしては背が高くよく鍛えられている事が服の上からでも分かる。シルビはこの歳での平均よりは背が高めだが、それでも彼女と対面したら見上げなければならない。
隣に座っていた同級生が信じられないというように喘ぐ。
「……あれ、女性? まじで?」
追加情報として既婚者だと言ったらどうなるだろう。ついでに孫もいるんだなどと言ったら、同級生は牛の背後以外にもトラウマが増えそうだ。
シルビはあの人を紹介される前から知っていた。少し前に再会された知人に紹介された、知人の奥方。
壇上に立って眼光鋭く生徒を見回すのは、ジャスミン・クーアその人である。
シルビは彼女が来る事など聞いていない。多分彼女の孫であるジェームズも知らないだろう。ジェームズの場合、彼女が自分の祖母である事も知らないが。
何も言えないでいるシルビと、生徒を一人ひとり眺めていたジャスミンの視線がふと合わさる。この場では声を掛けることも出来ないので目礼だけをすれば、僅かに目を細められた。目元を綻ばせるだけで、随分と印象が変わる人だ。
「ジャスミン・クーアだ。よろしく」
しかし名乗る声には獰猛な気配が篭もっており、不真面目な生徒がいたらどう罰してやろうかと今から楽しみで仕方がないという雰囲気が漂っている。
隣の同級生が今にも泣きそうな顔をしてシルビを見た。真面目にやれば大丈夫だという慰めは、不確定過ぎて逆に不安になるだろう。