嘆きのサイレン
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「我がヴェルナール校は連邦大学の中でも特に操縦技術の習得に力を入れている……」
学期始めに行われる教科主任の話はいつものことながら長く、しかしよく聞いてみれば身になる話しかしていないという不思議。その謎を解明するという、いい方は格好良いが要は集中していないでいれば、シルビは隣にいた同級生に肘で腕を突かれた。
小声で話すのも面倒で、視線だけを向ければ同級生はニヤリと笑みを浮かべる。
「後で課題だったレポート見せてくんね? 後ちょっとが纏められなかったんだよ」
「それ今言う事かぁ?」
「長い話ってのはだね、オレたち操縦者の根気を養う為にあるもんさ」
「じゃあ聞いてろよぉ」
「優秀生は言うこと違うなオイ」
からかうように言われるが、決して皮肉ではないことは知っていた。
シルビがヴェルナール校で張られているレッテルは『優秀生』だ。学年に関わらず生徒間で『優秀生』と言えばシルビのことだと伝わる程度には、実技座学共に優秀な成績を収めている。
五十年前に実際船乗りをしていた事を考えれば、当然と言えば当然。
死んでから主流になったショウ駆動機関について分からない事が多い為、そして宇宙へ出るのにこれが一番手っ取り早い方法だった為に学校へは通っているに過ぎない。なので実のところ、その半分以上が教官や同じ生徒へのポーズである。
そんなよい成績を取り、教官達からの覚えもよいシルビには、意外なことにあまり恨みや妬みの声が無い。理由は『優秀』ではあっても決して『優等生』ではないからだ。
シルビはいらないと判断した教科には決して参加しないし、教官の言う事が不可解だと思えばすぐに反論する。その上顔立ちのことで女子生徒に持て囃され、男子生徒から反感を買うのさえ面倒で、友人を作るなんてことをしていなかった。
いくら成績が良くとも、友人が居ないのは本人の人格へ問題があるのではと、連邦大学では評価を下げられてしまう。評価が下がるような者が優等生足り得ない。
よって、シルビは成績『だけ』が優秀な『優秀生』なのである。
「優秀といえばさ、この前の《レオンハルク》は成績どうなったんだ?」
「事故のことは関係なく評価されたぜぇ?」
「うげぇ、死にそうな目に遭っても成績に上乗せとかって無いのかよ」
ヒサンだなと呟くこの同級生は、あの時学科のバランスを揃える為に重力波エンジンの体験学習ではなく農村体験に参加しており、そこで牛に蹴られそうになっていたらしい。ある意味彼も命の危険を味わっている。
乳搾りは気に入ったが、牛の背後はトラウマになったそうだ。
学期始めに行われる教科主任の話はいつものことながら長く、しかしよく聞いてみれば身になる話しかしていないという不思議。その謎を解明するという、いい方は格好良いが要は集中していないでいれば、シルビは隣にいた同級生に肘で腕を突かれた。
小声で話すのも面倒で、視線だけを向ければ同級生はニヤリと笑みを浮かべる。
「後で課題だったレポート見せてくんね? 後ちょっとが纏められなかったんだよ」
「それ今言う事かぁ?」
「長い話ってのはだね、オレたち操縦者の根気を養う為にあるもんさ」
「じゃあ聞いてろよぉ」
「優秀生は言うこと違うなオイ」
からかうように言われるが、決して皮肉ではないことは知っていた。
シルビがヴェルナール校で張られているレッテルは『優秀生』だ。学年に関わらず生徒間で『優秀生』と言えばシルビのことだと伝わる程度には、実技座学共に優秀な成績を収めている。
五十年前に実際船乗りをしていた事を考えれば、当然と言えば当然。
死んでから主流になったショウ駆動機関について分からない事が多い為、そして宇宙へ出るのにこれが一番手っ取り早い方法だった為に学校へは通っているに過ぎない。なので実のところ、その半分以上が教官や同じ生徒へのポーズである。
そんなよい成績を取り、教官達からの覚えもよいシルビには、意外なことにあまり恨みや妬みの声が無い。理由は『優秀』ではあっても決して『優等生』ではないからだ。
シルビはいらないと判断した教科には決して参加しないし、教官の言う事が不可解だと思えばすぐに反論する。その上顔立ちのことで女子生徒に持て囃され、男子生徒から反感を買うのさえ面倒で、友人を作るなんてことをしていなかった。
いくら成績が良くとも、友人が居ないのは本人の人格へ問題があるのではと、連邦大学では評価を下げられてしまう。評価が下がるような者が優等生足り得ない。
よって、シルビは成績『だけ』が優秀な『優秀生』なのである。
「優秀といえばさ、この前の《レオンハルク》は成績どうなったんだ?」
「事故のことは関係なく評価されたぜぇ?」
「うげぇ、死にそうな目に遭っても成績に上乗せとかって無いのかよ」
ヒサンだなと呟くこの同級生は、あの時学科のバランスを揃える為に重力波エンジンの体験学習ではなく農村体験に参加しており、そこで牛に蹴られそうになっていたらしい。ある意味彼も命の危険を味わっている。
乳搾りは気に入ったが、牛の背後はトラウマになったそうだ。