嘆きのサイレン
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停止していたはずなのにいきなり急発進し始めた《レオンハルク》へ、教官が慌てて操縦席へ座っていた生徒に向けて叫ぶ。しかし映像で見ていた限り彼が何かを弄った様子は無かった。
そうしている間にも加速していくレオンハルクに、教官が生徒を押しのけ操縦席へ座るも舵が動いた感じはしない。レオンハルクの感応頭脳に問いかければ、レオンハルクの感応頭脳であるTEX44 通称《テックス》は平然と答える。
「本船はこれより《門》を跳躍します」
「なんだと!?」
操縦室にいた船長達も絶句したが、通信映像越しに別の船室でそれを聞いたシルビも驚いた。
今現在、《門》の向こうからは旅客船が跳躍してくるところなのである。それなのに跳躍しようと船を進めようものなら、衝突は免れない。
レオンハルクは比較的小さい五万トン級の船であるが、それでも速度が出ていれば被害は甚大だ。ましてや相手は旅客船。おそらく多くの客を乗せてもいるだろう。衝突すればちっぽけな人間なんて宇宙に放りだされてお終いだ。
「……っくそ!」
シルビが咄嗟にしたのは、操縦室の慌てぶりと衝突するであろう非常事態に混乱する実習生の中から、傍にいたジェームズとついでにその友達らしい隣の席の子を、掴んで引き寄せることだった。
三人だけなら。
自分を含めても三人だけなら、何とか助ける事が出来る。助かる方法を見つけられるという自信があった。
しかしレオンハルクの乗員全員というのは無理だろう。シルビが全力を出せば無理ではないだろうが、助かったその後のことを考えてしまうと、偶然や奇跡と言った言葉で誤魔化せる人数しか救えない。シルビは保身を選んだのである。
操縦室の向こう、肉眼でも分かるほど近くに旅客船が見えた。それが迫り来ることも。
「衝撃に備えろ、《レオンハルク》」
すわ衝突する、という寸前で聞こえてきたのは、凛とした女性の声だった。
殆ど同時にレオンハルクの船橋が大きく揺れる。衝突ほどではないが立っていられない揺れへ、シルビは通信の途切れていない操縦室の映像越しに赤い流星が見えた気がした。
当然そんなモノが流れるわけが無い。ましてやレオンハルクへ体当たりし軌道を逸らすなど。
出来るとすれば、それは奇跡ではなく人為的なものだ。
「……シルビ?」
「ぁ……悪ぃ。怪我は無ぇかぁ?」
腕の中でジェームズがシルビを見上げる。彼の友人は助かった事の方に意識が向いていて腰を抜かしているようだった。
「大丈夫。それより今……」
「ジェームズも分かったかぁ?」
「うん。……ミズ・クーアの声、だったよな」
聞き間違いでは無かったのだと確信し、もう一度操縦室の映像へ目を向ける。
どうしてこの宙域へ居たのかは知らないが、どうやら彼女へ助けられたようだった。
そうしている間にも加速していくレオンハルクに、教官が生徒を押しのけ操縦席へ座るも舵が動いた感じはしない。レオンハルクの感応頭脳に問いかければ、レオンハルクの感応頭脳であるTEX44 通称《テックス》は平然と答える。
「本船はこれより《門》を跳躍します」
「なんだと!?」
操縦室にいた船長達も絶句したが、通信映像越しに別の船室でそれを聞いたシルビも驚いた。
今現在、《門》の向こうからは旅客船が跳躍してくるところなのである。それなのに跳躍しようと船を進めようものなら、衝突は免れない。
レオンハルクは比較的小さい五万トン級の船であるが、それでも速度が出ていれば被害は甚大だ。ましてや相手は旅客船。おそらく多くの客を乗せてもいるだろう。衝突すればちっぽけな人間なんて宇宙に放りだされてお終いだ。
「……っくそ!」
シルビが咄嗟にしたのは、操縦室の慌てぶりと衝突するであろう非常事態に混乱する実習生の中から、傍にいたジェームズとついでにその友達らしい隣の席の子を、掴んで引き寄せることだった。
三人だけなら。
自分を含めても三人だけなら、何とか助ける事が出来る。助かる方法を見つけられるという自信があった。
しかしレオンハルクの乗員全員というのは無理だろう。シルビが全力を出せば無理ではないだろうが、助かったその後のことを考えてしまうと、偶然や奇跡と言った言葉で誤魔化せる人数しか救えない。シルビは保身を選んだのである。
操縦室の向こう、肉眼でも分かるほど近くに旅客船が見えた。それが迫り来ることも。
「衝撃に備えろ、《レオンハルク》」
すわ衝突する、という寸前で聞こえてきたのは、凛とした女性の声だった。
殆ど同時にレオンハルクの船橋が大きく揺れる。衝突ほどではないが立っていられない揺れへ、シルビは通信の途切れていない操縦室の映像越しに赤い流星が見えた気がした。
当然そんなモノが流れるわけが無い。ましてやレオンハルクへ体当たりし軌道を逸らすなど。
出来るとすれば、それは奇跡ではなく人為的なものだ。
「……シルビ?」
「ぁ……悪ぃ。怪我は無ぇかぁ?」
腕の中でジェームズがシルビを見上げる。彼の友人は助かった事の方に意識が向いていて腰を抜かしているようだった。
「大丈夫。それより今……」
「ジェームズも分かったかぁ?」
「うん。……ミズ・クーアの声、だったよな」
聞き間違いでは無かったのだと確信し、もう一度操縦室の映像へ目を向ける。
どうしてこの宙域へ居たのかは知らないが、どうやら彼女へ助けられたようだった。