嘆きのサイレン
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マース合衆国経由クレイド宙域での重力波エンジン体験実習。
実習船《レオンハルク》はそこで、ちょうどクレイド航路を跳んでマースから戻ってきたところである。ヴェルナール校四年に在学するシルビは、そのレオンハルクへヴェルナール校からの体験学習生として、重力波エンジン操作の実習を見学している最中であった。
二つ設けられた操縦席のうち一つには、《門》への跳躍を終えてホッとしている実習生が座っている。そんな実習生へ対し厳しい言葉を掛ける教官を映像越しに眺めながら、シルビは出そうになった欠伸を噛み殺した。
遡ること約四十年前、シルビは『イブリス』という名でこの世界に居たことがある。
その当時広大な宇宙を旅する方法として、重力波エンジンによる《門》の使用が主流だった。なのでシルビも現代において主流となっているショウ駆動機関よりも、重力波エンジンの方が馴染み深い。
何せショウ駆動機関は『イブリス』の死後に発明、一般化していったものだ。その発展途上においてはシルビとして生まれてから知識を得た分しかない。
実際に動かしたこともショウ駆動機関については数度しかなかった。代わりに、重力波エンジンについては《レオンハルク》へ乗っている実習生の誰よりも自信がある。
流石に現役の船乗りと比べられたら分からないが、少なくとも安定度数が九十一を切っていなければ、《門》を通る時の補助的役割をする《駅》がなくとも跳べるようには叩き込まれてあった。
一人でも船に乗れるように。いつかは一人で生きていけるように。
そう、教えられていた。
「なんか、簡単そうだよな」
並んで座り見学させられている実習生の一人がそう呟くのが聞こえて、シルビは視線を横へ向ける。一年生のジェームズ・マクスウェルが映像の向こうの、操縦席でおたおたと操縦桿を握っている上級生姿を眺めており、その隣の同級生らしい子が言ったようだった。
「実際にやらせてくれればいいのにな」
自分なら教官に叱られずにやってみせるといった自信たっぷりな発言に、私語は推奨されていなかったが少しだけと思って口出ししてみる。
「じゃあジェームズは今の跳躍の何処が悪かったか、全部言えるんだなぁ?」
「え、えーと、いきなり聞くなよシルビ」
「答えられねぇならジェームズも教官に怒られるぜぇ」
クスクスと笑って言えば、ジェームズだけではなく他の実習生まで何も言えなくなっていた。
新しい操縦者に代わった《レオンハルク》が方向転換を始める。通常よりも大回りで速度も無い転換だったが、無事に次の跳躍へ備える位置へ着いた。
跳躍に入る前に、《門》の向こうから来る旅客船を通さなければいけない。
昔に比べたら、随分とのったりした運航である。当時も真面目に学んでいればこんな感じだったのだろうかとシルビが思ったところで、それは起こった。
実習船《レオンハルク》はそこで、ちょうどクレイド航路を跳んでマースから戻ってきたところである。ヴェルナール校四年に在学するシルビは、そのレオンハルクへヴェルナール校からの体験学習生として、重力波エンジン操作の実習を見学している最中であった。
二つ設けられた操縦席のうち一つには、《門》への跳躍を終えてホッとしている実習生が座っている。そんな実習生へ対し厳しい言葉を掛ける教官を映像越しに眺めながら、シルビは出そうになった欠伸を噛み殺した。
遡ること約四十年前、シルビは『イブリス』という名でこの世界に居たことがある。
その当時広大な宇宙を旅する方法として、重力波エンジンによる《門》の使用が主流だった。なのでシルビも現代において主流となっているショウ駆動機関よりも、重力波エンジンの方が馴染み深い。
何せショウ駆動機関は『イブリス』の死後に発明、一般化していったものだ。その発展途上においてはシルビとして生まれてから知識を得た分しかない。
実際に動かしたこともショウ駆動機関については数度しかなかった。代わりに、重力波エンジンについては《レオンハルク》へ乗っている実習生の誰よりも自信がある。
流石に現役の船乗りと比べられたら分からないが、少なくとも安定度数が九十一を切っていなければ、《門》を通る時の補助的役割をする《駅》がなくとも跳べるようには叩き込まれてあった。
一人でも船に乗れるように。いつかは一人で生きていけるように。
そう、教えられていた。
「なんか、簡単そうだよな」
並んで座り見学させられている実習生の一人がそう呟くのが聞こえて、シルビは視線を横へ向ける。一年生のジェームズ・マクスウェルが映像の向こうの、操縦席でおたおたと操縦桿を握っている上級生姿を眺めており、その隣の同級生らしい子が言ったようだった。
「実際にやらせてくれればいいのにな」
自分なら教官に叱られずにやってみせるといった自信たっぷりな発言に、私語は推奨されていなかったが少しだけと思って口出ししてみる。
「じゃあジェームズは今の跳躍の何処が悪かったか、全部言えるんだなぁ?」
「え、えーと、いきなり聞くなよシルビ」
「答えられねぇならジェームズも教官に怒られるぜぇ」
クスクスと笑って言えば、ジェームズだけではなく他の実習生まで何も言えなくなっていた。
新しい操縦者に代わった《レオンハルク》が方向転換を始める。通常よりも大回りで速度も無い転換だったが、無事に次の跳躍へ備える位置へ着いた。
跳躍に入る前に、《門》の向こうから来る旅客船を通さなければいけない。
昔に比べたら、随分とのったりした運航である。当時も真面目に学んでいればこんな感じだったのだろうかとシルビが思ったところで、それは起こった。