暁の天使
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寮へ帰った矢先、アイクライン校のダンから来て欲しいという伝言が来ていて、何かあっただろうかとシルビは部屋に荷物を置き次第アイクライン校のダンの事務室へと向かった。
アイクライン校では放課後の部活動などが行われており、学生の姿もある。その中を通い慣れない学校の敷地だという事に多少の違和感を覚えながらも受付を通過しダンの事務室へ向かえば、机へ突っ伏した中年男性の頭部が見えた。
剥げてはいない。薄くはなっているかもしれない。
「……マクスウェル船長。愚痴を言う相手が俺でいいんですか?」
「……君には悪いが、事情を話すのには一番適った相手なんだ」
そりゃあ五年前に死んだはずなのに若返って生き返った父親や、四十年近く前に死んだとされていた母親や、宇宙規模の大女優である義理の母親や、十九歳なのか十三歳なのか分からない子供達や、そもそも人間かどうかが危ぶまれる若者に比べれば、シルビはマシな方なのかも知れない。
だがしかし、シルビだって一応学生の身分である。その事をちゃんと覚えているんだろうなと疑問に思いつつ、話し始められたダンの愚痴へ相槌を打った。
今回の愚痴は、息子のジェームズと育ての母親がどうのという内容である。
ジェームズは生まれてすぐに実の母親を亡くし、それから一年前まで『ルウ』という女性が育ててくれたらしい。しかし、その『ルウ』という女性の正体は、現在サフノスクの大学にいる黒色天使ルーファス・ラヴィーの“女体化した”姿なのだという。
キング・ケリーの知り合いでもあるようだし、親子三代世話になっているんだなぁとどうでもいいことを思った。
ダンにとって悪い事に、ジェームズはその『ルウ』へ思春期特有の恋慕をしているようだ。実の母親であればそんな事は無かっただろうが、『ルウ』はそうではない。実の母子ではないという事実を告げるタイミングを間違えた為に、余計その感情が強くなり拗れている。
そしてそれをどうにかしようと昨日、『ルウ』とは二度と会えないと思い込みさせる作戦をジャスミン達が試みたものの、予想に反して諦めるどころか早く一人前になって『ルウ』を取り返すのだ、と決意を新たにしたらしい。
「マザコンかぁ」
「アレは母親じゃない」
苦々しげに吐き捨てるダン自身は、ルウが女体化することなどが嫌らしい。嫌というよりは常識の枠から飛び出た行動に精神が追い着かないようにも見えるが、まぁ普通はそういう反応だろう。
「いやでもホラ、ジェームズだってまだ若いんですし、きっと今後もっと吊りあった年頃の女の子へ目が向いて、育ての母親の事なんて忘れますってぇ」
「……そうだといいんだが」
「会えなくなって一年なんでしょう? まだホームシックの部類ですよ。これから勉強になれてきたり忙しくなったりしたら、母親どころか父親のことも気にしなくなってくるんでしょうから、船長は父親としてしっかり向き合わねぇと。息子の父親離れってのは早ぇもんなんですからぁ」
「……そう、だな」
少し気分が浮上したらしいダンに、またいつでも愚痴を聞かせて構わないと約束して携帯端末の連絡先を教えて、やっとアイクライン校を後にした。
寮へ帰ればリィとシェラと話しているジェームズの姿があって、シルビは思わずジェームズへ駆け寄ってその両肩を掴む。
「シルビ?」
「……ジェームズ。あんまりお父さんを悩ましてやるなぁ」
多分彼はシルビ以外誰にもフォローしてもらえない、不幸な男だ。
アイクライン校では放課後の部活動などが行われており、学生の姿もある。その中を通い慣れない学校の敷地だという事に多少の違和感を覚えながらも受付を通過しダンの事務室へ向かえば、机へ突っ伏した中年男性の頭部が見えた。
剥げてはいない。薄くはなっているかもしれない。
「……マクスウェル船長。愚痴を言う相手が俺でいいんですか?」
「……君には悪いが、事情を話すのには一番適った相手なんだ」
そりゃあ五年前に死んだはずなのに若返って生き返った父親や、四十年近く前に死んだとされていた母親や、宇宙規模の大女優である義理の母親や、十九歳なのか十三歳なのか分からない子供達や、そもそも人間かどうかが危ぶまれる若者に比べれば、シルビはマシな方なのかも知れない。
だがしかし、シルビだって一応学生の身分である。その事をちゃんと覚えているんだろうなと疑問に思いつつ、話し始められたダンの愚痴へ相槌を打った。
今回の愚痴は、息子のジェームズと育ての母親がどうのという内容である。
ジェームズは生まれてすぐに実の母親を亡くし、それから一年前まで『ルウ』という女性が育ててくれたらしい。しかし、その『ルウ』という女性の正体は、現在サフノスクの大学にいる黒色天使ルーファス・ラヴィーの“女体化した”姿なのだという。
キング・ケリーの知り合いでもあるようだし、親子三代世話になっているんだなぁとどうでもいいことを思った。
ダンにとって悪い事に、ジェームズはその『ルウ』へ思春期特有の恋慕をしているようだ。実の母親であればそんな事は無かっただろうが、『ルウ』はそうではない。実の母子ではないという事実を告げるタイミングを間違えた為に、余計その感情が強くなり拗れている。
そしてそれをどうにかしようと昨日、『ルウ』とは二度と会えないと思い込みさせる作戦をジャスミン達が試みたものの、予想に反して諦めるどころか早く一人前になって『ルウ』を取り返すのだ、と決意を新たにしたらしい。
「マザコンかぁ」
「アレは母親じゃない」
苦々しげに吐き捨てるダン自身は、ルウが女体化することなどが嫌らしい。嫌というよりは常識の枠から飛び出た行動に精神が追い着かないようにも見えるが、まぁ普通はそういう反応だろう。
「いやでもホラ、ジェームズだってまだ若いんですし、きっと今後もっと吊りあった年頃の女の子へ目が向いて、育ての母親の事なんて忘れますってぇ」
「……そうだといいんだが」
「会えなくなって一年なんでしょう? まだホームシックの部類ですよ。これから勉強になれてきたり忙しくなったりしたら、母親どころか父親のことも気にしなくなってくるんでしょうから、船長は父親としてしっかり向き合わねぇと。息子の父親離れってのは早ぇもんなんですからぁ」
「……そう、だな」
少し気分が浮上したらしいダンに、またいつでも愚痴を聞かせて構わないと約束して携帯端末の連絡先を教えて、やっとアイクライン校を後にした。
寮へ帰ればリィとシェラと話しているジェームズの姿があって、シルビは思わずジェームズへ駆け寄ってその両肩を掴む。
「シルビ?」
「……ジェームズ。あんまりお父さんを悩ましてやるなぁ」
多分彼はシルビ以外誰にもフォローしてもらえない、不幸な男だ。