暁の天使
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話がややこしくなりそうだからとリィとシェラが事務室を出て行くのと入れ替わりに、ダンの息子であるジェームズがやってきた。
ジェームズは学年が違うとはいえ同じヴェルナール校で操縦過程を学んでいる同寮の生徒だ。今までだって勉強を教えて欲しいと言われたこともある仲なので、珍しく親しいといえば親しい相手だった。
どうやらジェームズはジンジャー・ブレッドの実の孫で、となるとダニエル・クーアであるダンの息子なのだからその両親であるケリーとジャスミンの孫という事にもなる。
ずいぶんと地味になったサラブレッドだなと他人事のように眺めていれば、ジェームズがダンの傍にいたルウとシルビへ気付いたようだった。
「シルビ? ラヴィーさん? どうしたんですか、その髪の毛?」
「これ? 付け毛 おしゃれでしょ?」
何食わぬ顔で言うが、シルビとは違って魔力の源のようなものらしい彼の髪の毛は、当然付け毛ではなく自前のものである。聞いたところによると、本人の意思とは関係無しに動いたりもするらしい。
それを元の長さへ切るかそのままにしておくかですったもんだもあったというのに、それを全く感じさせないのは凄いところだ。
「ここで何をしてるんですか?」
「こちらのご夫婦に挨拶に来たんだよ。偶然だよね。この人たちはぼくの知り合いでもあるんだ」
「俺はこちらのケリーとだけ知り合いで、今回奥方を連れて来るって言うからやっぱり挨拶にぃ」
ダンが何か言いたげな視線を寄越したが、それは無視した。
学校を学んでいた事について少し質問をされてから、あまり引き止めるのも悪いからと自然に追い出される形で出て行くジェームズに、シルビもダン達に辞去の挨拶をして一緒に寮へ戻ることにした。ルウに小さく手を振られ、ダンに縋られるような視線を向けられ、ケリーのニヤニヤとした笑みを最後に扉を閉める。
寮へ戻る道すがら、何かを考え込んでいたジェームズが顔を上げた。
「……シルビ。ジンジャーのこと」
「ああ、内緒にしときゃいいんだろぉ? マクスウェル船長にも言われたぜぇ」
「それならいいんだ」
シルビの言葉に納得して再び足元を見下ろしながら歩くジェームズの様子を眺めながら、シルビは昨日と今日で出会った人物達の事を思い出す。
いきなり衝撃的な知り合いが増えたというべきか。これがシルビではなく『兄』や『鏡』であったなら、喜んではしゃいでいたに違いない。彼等は意外とインパクトの有る人が好きだったから。
「……俺は一般人でいいなぁ」
「何か言った?」
尋ねてきたジェームズに何でもないと返して、そっと溜め息を吐く。
明日からは、平穏な日常がない気がした。
ジェームズは学年が違うとはいえ同じヴェルナール校で操縦過程を学んでいる同寮の生徒だ。今までだって勉強を教えて欲しいと言われたこともある仲なので、珍しく親しいといえば親しい相手だった。
どうやらジェームズはジンジャー・ブレッドの実の孫で、となるとダニエル・クーアであるダンの息子なのだからその両親であるケリーとジャスミンの孫という事にもなる。
ずいぶんと地味になったサラブレッドだなと他人事のように眺めていれば、ジェームズがダンの傍にいたルウとシルビへ気付いたようだった。
「シルビ? ラヴィーさん? どうしたんですか、その髪の毛?」
「これ? 付け毛 おしゃれでしょ?」
何食わぬ顔で言うが、シルビとは違って魔力の源のようなものらしい彼の髪の毛は、当然付け毛ではなく自前のものである。聞いたところによると、本人の意思とは関係無しに動いたりもするらしい。
それを元の長さへ切るかそのままにしておくかですったもんだもあったというのに、それを全く感じさせないのは凄いところだ。
「ここで何をしてるんですか?」
「こちらのご夫婦に挨拶に来たんだよ。偶然だよね。この人たちはぼくの知り合いでもあるんだ」
「俺はこちらのケリーとだけ知り合いで、今回奥方を連れて来るって言うからやっぱり挨拶にぃ」
ダンが何か言いたげな視線を寄越したが、それは無視した。
学校を学んでいた事について少し質問をされてから、あまり引き止めるのも悪いからと自然に追い出される形で出て行くジェームズに、シルビもダン達に辞去の挨拶をして一緒に寮へ戻ることにした。ルウに小さく手を振られ、ダンに縋られるような視線を向けられ、ケリーのニヤニヤとした笑みを最後に扉を閉める。
寮へ戻る道すがら、何かを考え込んでいたジェームズが顔を上げた。
「……シルビ。ジンジャーのこと」
「ああ、内緒にしときゃいいんだろぉ? マクスウェル船長にも言われたぜぇ」
「それならいいんだ」
シルビの言葉に納得して再び足元を見下ろしながら歩くジェームズの様子を眺めながら、シルビは昨日と今日で出会った人物達の事を思い出す。
いきなり衝撃的な知り合いが増えたというべきか。これがシルビではなく『兄』や『鏡』であったなら、喜んではしゃいでいたに違いない。彼等は意外とインパクトの有る人が好きだったから。
「……俺は一般人でいいなぁ」
「何か言った?」
尋ねてきたジェームズに何でもないと返して、そっと溜め息を吐く。
明日からは、平穏な日常がない気がした。