マルグリートの輪舞曲
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次にシルビがドミューシアへ出会ったのは、数日後のフォンダム寮でのことだった。弟のリィへ会いに来たらしいがリィはどこかへ出掛けていて、まだ帰ってきていないらしい。
ドミューシアが受付にいたところへシルビがヴェルナール校から帰ってきたのである。どうせ暫くすれば帰ってくるだろうしと、リィの帰宅を待つ間の話し相手として申し出たのはシルビからだ。
「体験学習はどう?」
「色々と新鮮よ」
「そりゃ良かったぁ。ヴェルナールにも体験入学生がいるが、講義が難しいって殆ど毎日半泣きになってるよ」
「そんなに難しいの?」
「頭で分かってても実際に出来ねぇと困るところもあるからなぁ」
少しアイクラインやヴェルナールの事を話してもリィは帰ってこない。もしかして門限ギリギリに帰ってくるつもりなのだろうかと時間を確認していると、ドミューシアがゆっくりと口を開いた。
「あのね、失礼な質問かも知れないけれど、いいかな?」
「どうぞぉ」
「シルビは、前に『自分一人が違う事を嫌悪してた』って言ったでしょ? それは今もなの?」
ドミューシアは不安そうながらも真剣に答えを待っている。シルビはちょっと笑って答えた。
「俺はもうそれについて深く考えねぇようにしているし、リィは俺とは違うから自分を嫌悪するなんてことはそうそう無ぇと思うよ。だからドミューシア嬢。俺とリィとを同じだと考えるのは間違ってる」
「……あたしね、リィがルウに連れて行かれて良かったと思ってる部分もあるけど、あの子があたしの弟で良かったとも思ってるの」
「それでいいんだと思うぜぇ」
自分一人が違う事を嫌悪しても、それを変えることは出来ないのだから諦めるしかないところもあるだろう。けれども諦めないままでいる選択肢もあるにはあるのだ。その為には周囲の協力が不可欠だとシルビは思っているけれど。
少なくとも、シルビはシルビが違うことを理解してくれている人の存在を知っている。
夕食の時間が終わる頃になってやっとリィ達は帰ってきた。寮へ帰ってからの食事も遅くなってしまうだろうからとドミューシアへ夕食を勧めるかどうか考えていたところで、受付で姉の来訪を聞いてきたらしいリィは、ドミューシアがシルビと一緒に居たことに目を丸くする。
「シルビ? ドミと知り合いだったのか?」
「少しだけなぁ。じゃあドミューシア嬢。俺はこれでぇ」
姉弟同士の話があるのだろうからと気を利かせたシェラと一緒に食堂へ向かい、遅くなった夕食をとった。
何をしていてこんなに遅くなったのかは聞くつもりが無かったし、シェラも言ってくる事はない。
「――シェラ。リィにも後で言うつもりだけどなぁ、『目指せ一般人』って難しいからなぁ?」
「いきなり何です?」
「色んなモンが人と違うことを再確認させられただけだよ。――彼女はいいお姉さんだなぁ」
ドミューシアが受付にいたところへシルビがヴェルナール校から帰ってきたのである。どうせ暫くすれば帰ってくるだろうしと、リィの帰宅を待つ間の話し相手として申し出たのはシルビからだ。
「体験学習はどう?」
「色々と新鮮よ」
「そりゃ良かったぁ。ヴェルナールにも体験入学生がいるが、講義が難しいって殆ど毎日半泣きになってるよ」
「そんなに難しいの?」
「頭で分かってても実際に出来ねぇと困るところもあるからなぁ」
少しアイクラインやヴェルナールの事を話してもリィは帰ってこない。もしかして門限ギリギリに帰ってくるつもりなのだろうかと時間を確認していると、ドミューシアがゆっくりと口を開いた。
「あのね、失礼な質問かも知れないけれど、いいかな?」
「どうぞぉ」
「シルビは、前に『自分一人が違う事を嫌悪してた』って言ったでしょ? それは今もなの?」
ドミューシアは不安そうながらも真剣に答えを待っている。シルビはちょっと笑って答えた。
「俺はもうそれについて深く考えねぇようにしているし、リィは俺とは違うから自分を嫌悪するなんてことはそうそう無ぇと思うよ。だからドミューシア嬢。俺とリィとを同じだと考えるのは間違ってる」
「……あたしね、リィがルウに連れて行かれて良かったと思ってる部分もあるけど、あの子があたしの弟で良かったとも思ってるの」
「それでいいんだと思うぜぇ」
自分一人が違う事を嫌悪しても、それを変えることは出来ないのだから諦めるしかないところもあるだろう。けれども諦めないままでいる選択肢もあるにはあるのだ。その為には周囲の協力が不可欠だとシルビは思っているけれど。
少なくとも、シルビはシルビが違うことを理解してくれている人の存在を知っている。
夕食の時間が終わる頃になってやっとリィ達は帰ってきた。寮へ帰ってからの食事も遅くなってしまうだろうからとドミューシアへ夕食を勧めるかどうか考えていたところで、受付で姉の来訪を聞いてきたらしいリィは、ドミューシアがシルビと一緒に居たことに目を丸くする。
「シルビ? ドミと知り合いだったのか?」
「少しだけなぁ。じゃあドミューシア嬢。俺はこれでぇ」
姉弟同士の話があるのだろうからと気を利かせたシェラと一緒に食堂へ向かい、遅くなった夕食をとった。
何をしていてこんなに遅くなったのかは聞くつもりが無かったし、シェラも言ってくる事はない。
「――シェラ。リィにも後で言うつもりだけどなぁ、『目指せ一般人』って難しいからなぁ?」
「いきなり何です?」
「色んなモンが人と違うことを再確認させられただけだよ。――彼女はいいお姉さんだなぁ」
5/5ページ