サイモンの災難
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病院から駅へ向かう直線上のルートにある古びた礼拝堂の裏手で、予想通り逃げる途中だった狙撃犯を捕まえた。
レティシアとヴァンツァーが捕まえて気絶させた男は、ギブスを腕へ填めて事故か何かで腕の治療を受けた患者の振りをして病院から出てきたのだが、当然そのギブスの下は骨が折れているなんてこともない。
病院をスポットとしての狙撃としては、なんというか一番初歩的な誤魔化し方だと呆れてしまう。
「でもポピュラーであるにはポピュラーであるだけの理由があるんだよなぁ。少なくとも“常識”ではギブスの下は固定が必要な怪我をしてることになる」
「派手な偽装だけど逆に、ってとこか」
男が持っていた鞄の中からは銃身の長い狙撃銃が出てきた。銃身からしてどのくらいの飛距離を出せるものかは分かったが、この周辺の地理に明るくなかったのでどこの何を狙ったのかまでは分からない。
「これって、やっぱり殺しちゃまずいのか?」
「まずいだろうな」
「まずいなぁ」
関わるのが面倒で、簡単に始末しようと考えるところは一般人らしくはなかった。とはいえシルビも何処かへ狙撃を行なったであろうこの気絶している男をどうするかと悩んでしまう。警察へ連れて行ったとしても何故シルビ達が狙撃に気付いて男を捕まえられたのかと訊かれるに違いないし、訊かれたところで説明も出来ないからだ。
かといってレティシアの言う通りに殺して死体を始末すればという案も賛成できない。死体をどこへ隠すかも悩みものだし隠すまでの間を目撃されても意味がないからだ。
「一般市民への道は険しいねえ……」
「同感だな。殺しの修行よりよほど難しい」
「まず一般市民はそういう修行をしねぇんだけどなぁ」
思わず苦笑をこぼしつつも、狙撃犯をどうするかで悩んでいると先程“異変”を感じた時とは段違いの気迫が近づいてくることに気付いた。すわこの狙撃犯の協力者か警察かとこの状況の言い訳を考えながら振り返れば、不機嫌そのものと言ったジャスミンが歩いてくるところで。
彼女は確か撮影現場の家でルウやアイリーンと一緒に居たはずだ。シルビを迎えに来るなんて事も無い。
「この辺で怪しい人物を見なかったか」
シルビ達が揃って地面に倒れている男を指差せば、ジャスミンは目をギラつかせて男を見下ろし、荷物を持ち上げるように雑に掴みあげた。
「これは私が預かろう。文句はないな」
ないな、と訊いておいて命令形ですらない。シルビ達が異論はないとばかりに頷きを返せば、ジャスミンは男を肩へ担ぎ上げ狙撃銃の入った鞄を拾い上げると去っていった。
「……あの女に護衛はいらないと思うぞ」
「鞄持ちとかは必要だと……」
「なら行けよ」
「無理ぃ……」
レティシアとヴァンツァーが捕まえて気絶させた男は、ギブスを腕へ填めて事故か何かで腕の治療を受けた患者の振りをして病院から出てきたのだが、当然そのギブスの下は骨が折れているなんてこともない。
病院をスポットとしての狙撃としては、なんというか一番初歩的な誤魔化し方だと呆れてしまう。
「でもポピュラーであるにはポピュラーであるだけの理由があるんだよなぁ。少なくとも“常識”ではギブスの下は固定が必要な怪我をしてることになる」
「派手な偽装だけど逆に、ってとこか」
男が持っていた鞄の中からは銃身の長い狙撃銃が出てきた。銃身からしてどのくらいの飛距離を出せるものかは分かったが、この周辺の地理に明るくなかったのでどこの何を狙ったのかまでは分からない。
「これって、やっぱり殺しちゃまずいのか?」
「まずいだろうな」
「まずいなぁ」
関わるのが面倒で、簡単に始末しようと考えるところは一般人らしくはなかった。とはいえシルビも何処かへ狙撃を行なったであろうこの気絶している男をどうするかと悩んでしまう。警察へ連れて行ったとしても何故シルビ達が狙撃に気付いて男を捕まえられたのかと訊かれるに違いないし、訊かれたところで説明も出来ないからだ。
かといってレティシアの言う通りに殺して死体を始末すればという案も賛成できない。死体をどこへ隠すかも悩みものだし隠すまでの間を目撃されても意味がないからだ。
「一般市民への道は険しいねえ……」
「同感だな。殺しの修行よりよほど難しい」
「まず一般市民はそういう修行をしねぇんだけどなぁ」
思わず苦笑をこぼしつつも、狙撃犯をどうするかで悩んでいると先程“異変”を感じた時とは段違いの気迫が近づいてくることに気付いた。すわこの狙撃犯の協力者か警察かとこの状況の言い訳を考えながら振り返れば、不機嫌そのものと言ったジャスミンが歩いてくるところで。
彼女は確か撮影現場の家でルウやアイリーンと一緒に居たはずだ。シルビを迎えに来るなんて事も無い。
「この辺で怪しい人物を見なかったか」
シルビ達が揃って地面に倒れている男を指差せば、ジャスミンは目をギラつかせて男を見下ろし、荷物を持ち上げるように雑に掴みあげた。
「これは私が預かろう。文句はないな」
ないな、と訊いておいて命令形ですらない。シルビ達が異論はないとばかりに頷きを返せば、ジャスミンは男を肩へ担ぎ上げ狙撃銃の入った鞄を拾い上げると去っていった。
「……あの女に護衛はいらないと思うぞ」
「鞄持ちとかは必要だと……」
「なら行けよ」
「無理ぃ……」