サイモンの災難
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動きがあったのはヴァンツァーが少し寝るとレンタカーの運転席へ戻り、シルビが再びリボンと格闘し始めて小一時間ほど経ってからだった。
車が近付いてくる音にヴァンツァーが隣の車の中で目を覚まし、シルビも解きかけのリボンを邪魔にならない程度にまとめて静かに車の外へと出る。車の屋根の上へいたルウが音もなく降りてきては、伸び縮みするアクション・ロッドをそれぞれに投げ渡してきた。
程なくして家の玄関前へ車が停まる。小声と何か重い物を運ぶ音。それに液体の揺れるような音がするのに、シルビはルウとヴァンツァーとは逆の方向から回り込んで玄関へと向かった。
玄関では二人の男が、救急隊員の施した立入禁止の帯を破って鉈のような物で玄関の鍵を怖そうとしている。空き巣ではないことは確かだ。
「何をしている?」
「ここは立入禁止だよ」
シルビとは反対側からルウ達が声をかけると男達は飛び上がった。しかし声をかけたのが少年だと分かると、すぐに考えを改めたのか持っていた鉈を振りかざして襲いかかっていく。
気付かれていなかったらしいシルビはその男達が地面へ叩き伏せられるのを眺めながら、男達が運んできたらしい容器を調べた。
「なんだ、ただの油かぁ」
昼間の様に食中毒の菌であったなら感心しただろう。そうであったなら明日撮影再開でやってきた撮影スタッフ達が、救急隊員による除染を逃れた菌によって再感染してという筋書きで比較的スムーズに始末できただろう身体。
だがただの油であるのなら、不法侵入してこの家を焼き払おうとしただけとなり、あからさまな『撮影妨害』と察することが出来る。
「機材を壊して家に火をつけるつもりだったんだ。徹底してるねえ」
「徹底かなぁ。ボロッボロにしか思えねぇ計画だろぉ」
ともあれ、この犯行で犯人の狙いがフードセンターへの恨みや愉快犯ではなく、この映画撮影にあるということは判明した。問題があるとしたらその詳細な標的と犯行理由であるが、それは今の段階では推測すら出来ない。
ルウの考え通り『彼女』か、シルビのトンデモ理論で『彼』か。はたまた別の誰かかこの映画自体か。
いずれにせよ犯人は、目的の為なら手段を選ばない。
「じゃ、帰ろうか」
二人の男を気絶させて車へ積んだルウが振り返る。今日はもうここで何かが起こることはないらしい。
「朝になったらまた来るよ」
そう言ってルウが運転席へと乗り込むのに、シルビも遅れて助手席へと収まった。走り出す車内で解きかけだったリボンに触れる。
「まだ解けないの?」
「もう一生解けねぇ気がしてきたぁ」
車が近付いてくる音にヴァンツァーが隣の車の中で目を覚まし、シルビも解きかけのリボンを邪魔にならない程度にまとめて静かに車の外へと出る。車の屋根の上へいたルウが音もなく降りてきては、伸び縮みするアクション・ロッドをそれぞれに投げ渡してきた。
程なくして家の玄関前へ車が停まる。小声と何か重い物を運ぶ音。それに液体の揺れるような音がするのに、シルビはルウとヴァンツァーとは逆の方向から回り込んで玄関へと向かった。
玄関では二人の男が、救急隊員の施した立入禁止の帯を破って鉈のような物で玄関の鍵を怖そうとしている。空き巣ではないことは確かだ。
「何をしている?」
「ここは立入禁止だよ」
シルビとは反対側からルウ達が声をかけると男達は飛び上がった。しかし声をかけたのが少年だと分かると、すぐに考えを改めたのか持っていた鉈を振りかざして襲いかかっていく。
気付かれていなかったらしいシルビはその男達が地面へ叩き伏せられるのを眺めながら、男達が運んできたらしい容器を調べた。
「なんだ、ただの油かぁ」
昼間の様に食中毒の菌であったなら感心しただろう。そうであったなら明日撮影再開でやってきた撮影スタッフ達が、救急隊員による除染を逃れた菌によって再感染してという筋書きで比較的スムーズに始末できただろう身体。
だがただの油であるのなら、不法侵入してこの家を焼き払おうとしただけとなり、あからさまな『撮影妨害』と察することが出来る。
「機材を壊して家に火をつけるつもりだったんだ。徹底してるねえ」
「徹底かなぁ。ボロッボロにしか思えねぇ計画だろぉ」
ともあれ、この犯行で犯人の狙いがフードセンターへの恨みや愉快犯ではなく、この映画撮影にあるということは判明した。問題があるとしたらその詳細な標的と犯行理由であるが、それは今の段階では推測すら出来ない。
ルウの考え通り『彼女』か、シルビのトンデモ理論で『彼』か。はたまた別の誰かかこの映画自体か。
いずれにせよ犯人は、目的の為なら手段を選ばない。
「じゃ、帰ろうか」
二人の男を気絶させて車へ積んだルウが振り返る。今日はもうここで何かが起こることはないらしい。
「朝になったらまた来るよ」
そう言ってルウが運転席へと乗り込むのに、シルビも遅れて助手席へと収まった。走り出す車内で解きかけだったリボンに触れる。
「まだ解けないの?」
「もう一生解けねぇ気がしてきたぁ」