サイモンの災難
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薄暗い車内で頑張って複雑に結わえられていたリボンを解いていると、ルウに頼まれた用件を済ませたらしいヴァンツァーがやってきた。隣へ車を停め降りてきたヴァンツァーへ、屋根の上から降りてきたルウが車内へ置いておいた飲み物を渡す。
シルビも受け取ってそれへ口を付ける。まだ殆ど冷めておらず熱いお茶は、夜風に晒されて冷えた体を温めるにはちょうどいい。
「きみが今日ここにエディを呼んでくれなかったら、彼女は間違いなく、あのお弁当を食べてたよ」
彼女、とはアイリーンのことだ。
昼間の騒動で明らかとなった食中毒菌は、ワクチンの開発は既にされているのだが毒素が体内へ入り込んだ後も自覚症状が殆ど無く、自身が食中毒になっていると気付かないケースが多い。ワクチンの接種が遅れれば五十パーセントの確率で死に至る。
それもあって救急隊員は本部へ緊急連絡をし、ニュースでも大々的に報道して食中毒の可能性がある者を病院へ行かせたのだ。これだけ報道をして夜になった今もなお報道では騒がれているのだから、これで病院へ行って検査を受けずに苦しんでも自業自得だろう。
「ずっと考えてたんだけどね。あのお弁当、誰か特定の人を狙ったのかなって」
「非効率的なやり方だな」
シルビも考えたことであるがヴァンツァーの言う通り、効率が悪すぎる。フードサービスセンターから配られた弁当は二百個以上。誰かを狙って食中毒を仕込んだとして、残り百九十九人。殺したい目標がいたとしてもその犠牲は多すぎる。
それに五十パーセントの確率というのも絶対ではない。残り五十パーセントで生き延びる確率もあるのだ。となれば騒ぎを徒に大きくしたところで目的の人物が最悪生きている可能性も浮かび上がる。
「犯人の狙いがまだ分からない。シルビはどう思う?」
車の外から振り返ったルウへ聞かれて、シルビは椅子からずり下がるように腰の位置をずらした。
「んー、騒動を起こしたかっただけの愉快犯かフードセンターに恨みがある奴。それとは違う可能性として『彼女』を狙ったんじゃねぇかってお前は言いてぇんだろぉ?」
「どうだろうねえ」
「俺は違うことを考えたよ。筋書き的にはルウと殆ど変わんねぇ。でも相手の標的はあの監督」
「へえ? どうして?」
「あの監督の目が“良すぎる”から、とかなぁ」
そんな発想が出たのは、シルビが本当に見抜かれたことを苦々しく思っているからかも知れない。シルビ達は彼が無害だと理解したが、そうではない者だっていて当然だ。
シルビも受け取ってそれへ口を付ける。まだ殆ど冷めておらず熱いお茶は、夜風に晒されて冷えた体を温めるにはちょうどいい。
「きみが今日ここにエディを呼んでくれなかったら、彼女は間違いなく、あのお弁当を食べてたよ」
彼女、とはアイリーンのことだ。
昼間の騒動で明らかとなった食中毒菌は、ワクチンの開発は既にされているのだが毒素が体内へ入り込んだ後も自覚症状が殆ど無く、自身が食中毒になっていると気付かないケースが多い。ワクチンの接種が遅れれば五十パーセントの確率で死に至る。
それもあって救急隊員は本部へ緊急連絡をし、ニュースでも大々的に報道して食中毒の可能性がある者を病院へ行かせたのだ。これだけ報道をして夜になった今もなお報道では騒がれているのだから、これで病院へ行って検査を受けずに苦しんでも自業自得だろう。
「ずっと考えてたんだけどね。あのお弁当、誰か特定の人を狙ったのかなって」
「非効率的なやり方だな」
シルビも考えたことであるがヴァンツァーの言う通り、効率が悪すぎる。フードサービスセンターから配られた弁当は二百個以上。誰かを狙って食中毒を仕込んだとして、残り百九十九人。殺したい目標がいたとしてもその犠牲は多すぎる。
それに五十パーセントの確率というのも絶対ではない。残り五十パーセントで生き延びる確率もあるのだ。となれば騒ぎを徒に大きくしたところで目的の人物が最悪生きている可能性も浮かび上がる。
「犯人の狙いがまだ分からない。シルビはどう思う?」
車の外から振り返ったルウへ聞かれて、シルビは椅子からずり下がるように腰の位置をずらした。
「んー、騒動を起こしたかっただけの愉快犯かフードセンターに恨みがある奴。それとは違う可能性として『彼女』を狙ったんじゃねぇかってお前は言いてぇんだろぉ?」
「どうだろうねえ」
「俺は違うことを考えたよ。筋書き的にはルウと殆ど変わんねぇ。でも相手の標的はあの監督」
「へえ? どうして?」
「あの監督の目が“良すぎる”から、とかなぁ」
そんな発想が出たのは、シルビが本当に見抜かれたことを苦々しく思っているからかも知れない。シルビ達は彼が無害だと理解したが、そうではない者だっていて当然だ。