「四十年前」
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ジャック視点
標準時間で約280時間後、ブルーライトニングが停泊していた惑星が隕石の衝突によりその姿を消した。部下からその報告を受けたジャックは、口ではそうかと一言言っただけだったものの、内心ではどうしたものかと悩んでいた。
船内の一室に向かうと、部屋の中では寝台の上で座りペタペタと不思議そうに壁を触っている青年がいる。あの星で鉱石に閉じ込められていた青年だ。
「どうした」
「さぶぜい、と、はなし、してた」
「サブジェイと話?」
ジャックと目が合って何かを呟いた後、青年は再び眠ってしまい、ジャックがブルーライトニングへ運び込んだ数日後にやっと目を覚ました。だが鉱石に閉じ込められていた影響か上手く口が回らないらしく、当初は公用語すら理解しておらず会話も出来なかったのである。
ジャックやサブジェイ、部下達が話し掛けるのを聞いていくうちに簡単な単語はすぐに覚えた。しかし問題は他にもあって、意思疎通の不便さを堪えて話をしていけば、青年が記憶喪失である事が判明したのである。
自分がどうしてあの惑星に居たのかも、鉱石に閉じ込められていた理由も傷だらけだった理由も覚えていない。それどころか名前も覚えておらず、青年の身に着けていた服や荷物を見聞して、やっと『イブリス』という仮称が付けられた。
けれどもそれすら青年に何か覚えているものはないかと持たせたペンによって書かれたものであるだけで、さらにはジャック達ブルーライトニングの乗組員では誰も読めなかったというオマケ付き。
ただ青年だけがそれを大切そうに『イブリス』と読んだのである。
寝台の脇にある椅子へジャックが腰を降ろせば、イブリスは壁から手を離して微笑んだ。
「さぶぜい、聞いた。星消えた」
「お前の手かがりが消えたな」
「ざく、困る?」
「オレは別に困らない。困るのはお前だろう」
イブリスが首を傾けて不思議そうな顔をした。
「俺は、困らない。ただ、どうしよう、思う」
言語をすぐに理解するようになった事といい、コイツは頭がいいというのがジャックの感想だ。
自分が居た惑星が無くなったと聞いて、驚いたり悲しんだりすることもなく、現実的に今後の身の振り方を考えている。おそらくはこの船に『乗せてもらっている』ことすら理解しているのだろう。
ジャックが拾ってきた男だったが、決して部下にしようと思って拾ってきたわけではない。ただ、あの星で放置していくには気が引けただけだ。
あの星が無くなってしまったのでその判断はきっと間違っていなかっただろうが、ではその後どうするかというと、何処かの居住可能型惑星として稼動している星で船から降ろせばいいと考えていた。
しかし青年が記憶喪失だというと話は更に面倒になる。生きる術を持たないと一緒なのだ。
もちろんジャックが其処まで面倒を見てやる必要も義理も無いだろう。そういう部分を無視して何処かへ放り出せばいい。
なのにジャックにもサブジェイにも、それが出来る気がしなかった。
標準時間で約280時間後、ブルーライトニングが停泊していた惑星が隕石の衝突によりその姿を消した。部下からその報告を受けたジャックは、口ではそうかと一言言っただけだったものの、内心ではどうしたものかと悩んでいた。
船内の一室に向かうと、部屋の中では寝台の上で座りペタペタと不思議そうに壁を触っている青年がいる。あの星で鉱石に閉じ込められていた青年だ。
「どうした」
「さぶぜい、と、はなし、してた」
「サブジェイと話?」
ジャックと目が合って何かを呟いた後、青年は再び眠ってしまい、ジャックがブルーライトニングへ運び込んだ数日後にやっと目を覚ました。だが鉱石に閉じ込められていた影響か上手く口が回らないらしく、当初は公用語すら理解しておらず会話も出来なかったのである。
ジャックやサブジェイ、部下達が話し掛けるのを聞いていくうちに簡単な単語はすぐに覚えた。しかし問題は他にもあって、意思疎通の不便さを堪えて話をしていけば、青年が記憶喪失である事が判明したのである。
自分がどうしてあの惑星に居たのかも、鉱石に閉じ込められていた理由も傷だらけだった理由も覚えていない。それどころか名前も覚えておらず、青年の身に着けていた服や荷物を見聞して、やっと『イブリス』という仮称が付けられた。
けれどもそれすら青年に何か覚えているものはないかと持たせたペンによって書かれたものであるだけで、さらにはジャック達ブルーライトニングの乗組員では誰も読めなかったというオマケ付き。
ただ青年だけがそれを大切そうに『イブリス』と読んだのである。
寝台の脇にある椅子へジャックが腰を降ろせば、イブリスは壁から手を離して微笑んだ。
「さぶぜい、聞いた。星消えた」
「お前の手かがりが消えたな」
「ざく、困る?」
「オレは別に困らない。困るのはお前だろう」
イブリスが首を傾けて不思議そうな顔をした。
「俺は、困らない。ただ、どうしよう、思う」
言語をすぐに理解するようになった事といい、コイツは頭がいいというのがジャックの感想だ。
自分が居た惑星が無くなったと聞いて、驚いたり悲しんだりすることもなく、現実的に今後の身の振り方を考えている。おそらくはこの船に『乗せてもらっている』ことすら理解しているのだろう。
ジャックが拾ってきた男だったが、決して部下にしようと思って拾ってきたわけではない。ただ、あの星で放置していくには気が引けただけだ。
あの星が無くなってしまったのでその判断はきっと間違っていなかっただろうが、ではその後どうするかというと、何処かの居住可能型惑星として稼動している星で船から降ろせばいいと考えていた。
しかし青年が記憶喪失だというと話は更に面倒になる。生きる術を持たないと一緒なのだ。
もちろんジャックが其処まで面倒を見てやる必要も義理も無いだろう。そういう部分を無視して何処かへ放り出せばいい。
なのにジャックにもサブジェイにも、それが出来る気がしなかった。