サイモンの災難
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初対面でボロクソにルウやシルビを褒めた男こそどうやらヴァンツァーがシルビ達へ会わせてみたかった映画監督で、サイモン・デュバルという話だった。
ヴァンツァーもああして初対面で『野兎の中に紛れた狼』と言われたらしい。
「あの監督さん、おもしろい人だな」
「エディはなんて言われたの?」
「光の戦士。シェラはその守護聖獣だってさ」
「へえ、うまいこと言うねえ」
ルウは感心しているし、関心しているだけの理由も分かっているのだがシルビは内心たまったものではなかった。
同じように危険を覚えたのだろうレティシアが消した方がいいのではと提案している。この場合の“消す”というのは殺して存在を抹消するという意味だろうとすぐに分かった。
「人間にも時々、鋭い人っているんだよね。だけど大丈夫。放っておいても害はないから」
害はない。それはシルビも同意だ。あれは何も分かっていないから言えたのだろう。
何も分かっていないというよりその真意を見ることへ無意識に重きを置いている。そういう点では、彼はフィクションを作ることに特化した人間だ。もう少し現実へ目を向ける常識があれば、その才覚を生かして実業家になれたかも知れない。
危険な気がするとあっても、今サイモンを片付ければ接触した自分達も関係者として疑われる可能性がある。よって安易に排除は出来ないとルウは結論づけた。
何より『彼女』が出演しようとしているのだから、彼女の正体に気付いている者は悉く妨害は出来まい。それもルウがあの監督を排除しない理由の一つだろう。
彼女にはそれだけの『理由』と『価値』がある。
「素朴な疑問なんだが……赤毛の女王とあの女と、どっちが怖いんだ?」
「ジャスミンはぼくなんかよりもずっと昔から彼女の友達だ。彼女の演技のファンでもある。間違っても邪魔はしないよ」
そうなのかと確認を取る様にヴァンツァーがシルビを見た。それにシルビは肩を竦めて返す。
「二人の女王とその配下を敵に回したら、今後お前さんはのんびり勉強も出来なくなると思えぇ。俺だったら既に察した以上彼女へ喧嘩は売らねぇ」
「そんなにか」
「俺も彼女の演技好きだしぃ」
というよりも、彼女の演技へ魅了されない人がこの世界へいないのかもしれない。ヴァンツァーは表情を変えないながらも納得しかねるといった態度だった。
「ただあの監督が不安の種になりうる心配には同意する。『炎の悪魔』なんてここ暫く言われてなかったぜぇ俺」
撮影を始めるのだろう階段の先の二階を見上げながら呟く。
「好んでは二度と会いたくねぇ」
ヴァンツァーもああして初対面で『野兎の中に紛れた狼』と言われたらしい。
「あの監督さん、おもしろい人だな」
「エディはなんて言われたの?」
「光の戦士。シェラはその守護聖獣だってさ」
「へえ、うまいこと言うねえ」
ルウは感心しているし、関心しているだけの理由も分かっているのだがシルビは内心たまったものではなかった。
同じように危険を覚えたのだろうレティシアが消した方がいいのではと提案している。この場合の“消す”というのは殺して存在を抹消するという意味だろうとすぐに分かった。
「人間にも時々、鋭い人っているんだよね。だけど大丈夫。放っておいても害はないから」
害はない。それはシルビも同意だ。あれは何も分かっていないから言えたのだろう。
何も分かっていないというよりその真意を見ることへ無意識に重きを置いている。そういう点では、彼はフィクションを作ることに特化した人間だ。もう少し現実へ目を向ける常識があれば、その才覚を生かして実業家になれたかも知れない。
危険な気がするとあっても、今サイモンを片付ければ接触した自分達も関係者として疑われる可能性がある。よって安易に排除は出来ないとルウは結論づけた。
何より『彼女』が出演しようとしているのだから、彼女の正体に気付いている者は悉く妨害は出来まい。それもルウがあの監督を排除しない理由の一つだろう。
彼女にはそれだけの『理由』と『価値』がある。
「素朴な疑問なんだが……赤毛の女王とあの女と、どっちが怖いんだ?」
「ジャスミンはぼくなんかよりもずっと昔から彼女の友達だ。彼女の演技のファンでもある。間違っても邪魔はしないよ」
そうなのかと確認を取る様にヴァンツァーがシルビを見た。それにシルビは肩を竦めて返す。
「二人の女王とその配下を敵に回したら、今後お前さんはのんびり勉強も出来なくなると思えぇ。俺だったら既に察した以上彼女へ喧嘩は売らねぇ」
「そんなにか」
「俺も彼女の演技好きだしぃ」
というよりも、彼女の演技へ魅了されない人がこの世界へいないのかもしれない。ヴァンツァーは表情を変えないながらも納得しかねるといった態度だった。
「ただあの監督が不安の種になりうる心配には同意する。『炎の悪魔』なんてここ暫く言われてなかったぜぇ俺」
撮影を始めるのだろう階段の先の二階を見上げながら呟く。
「好んでは二度と会いたくねぇ」