サイモンの災難
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「……大地の精霊と炎の悪魔だ」
「はい?」
きょとんとするルウの隣で、シルビは眉を潜めてそう呟いた男を見やる。
「大地だけじゃない。森の精、海の精霊、自然界のすべての息吹がきみの中にあるみたいだ! そっちの君は風の精に炎の精霊かな」
ルウとシルビを交互に眺めながら男の口は止まらない。
「それとも果てのない旅人かな。どんな罪や重荷を背負っても歩き続けることを止められない……信念じゃない、覚悟? 星ほどはっきりと輝くことは出来ない炎みたいな。罪をわざと犯した囚人もいいね。罪悪感を抱えた賢者とかどうだろう。魔術に長けた悪魔でもいいな。見守る者。罪の重さを分かってるのにそれを受け入れる覚悟が強いんだ。彼が自然界のすべての息吹を抱え込んでいるのなら、君はそれを支えているみたい。いなくても物語は成立するんだけど、いるとまた違う物語をもかいま見れる。――そうだ。いっそ中世の物語みたいな宝物を守る眠れる竜とかどうだろう!」
声高に叫ぶ男の主張は更に続いて、今度はルウをベタ褒めし始めた。
とはいえその褒める言葉も彼の中の認識であって、聞いている側にとっては褒められているとは思いにくい。
「きみ達ならおよそ人間以外のありとあらゆる役を演じられるよ!」
最後にそう締めくくった男にシルビは無言でヴァンツァーを見やり、ルウがリィへこの人は頭が大丈夫なのかと尋ねている。だかきっと、この人の“頭”は大丈夫なのだろう。
二階から階段を降りてくる足音がして振り向けば、黒髪の女性が降りてくるのが見えた。その姿を目に入れて、シルビはくしゃみを抑える振りをして口元を手で隠す。
「いらっしゃい。ヴァンツァーのお友だちよね? “アイリーン・コルト”よ」
聞いたことのない名前へリィ達が初対面を『装って』挨拶するのに、シルビも何も言わずにそれへ倣った。レティシアがそれに気付かず知り合いである体で話しかけ、ルウとリィに背中を抓られたりつま先を踏まれている。見ているだけでも痛そうだったのだが、レティシアはその痛みを全く顔へ出すことはない。流石である。
「悪い、間違えた。知り合いに似てたもんだから」
「俺も思ったけどあの人がここにいる筈ねぇだろぉ?」
「それもそうか」
レティシアの『勘違い』にフォローを入れれば、“アイリーン”は微笑んだ。
「ヴァンツァーにもそう言われたの。何だか光栄ね。その似ている人に会ってみたいわ」
話の流れ的には自然な会話だが、彼女がそれを言うというのは先ほどのレティシア並みに流石というべきか。
おそらくヴァンツァーが電話で言っていた『あともう一人気になる人物』とは、彼女のことだったのだろう。なるほどシルビよりも映画界隈へ詳しくないヴァンツァーでは彼女のことも詳しくないかも知れない。
「はい?」
きょとんとするルウの隣で、シルビは眉を潜めてそう呟いた男を見やる。
「大地だけじゃない。森の精、海の精霊、自然界のすべての息吹がきみの中にあるみたいだ! そっちの君は風の精に炎の精霊かな」
ルウとシルビを交互に眺めながら男の口は止まらない。
「それとも果てのない旅人かな。どんな罪や重荷を背負っても歩き続けることを止められない……信念じゃない、覚悟? 星ほどはっきりと輝くことは出来ない炎みたいな。罪をわざと犯した囚人もいいね。罪悪感を抱えた賢者とかどうだろう。魔術に長けた悪魔でもいいな。見守る者。罪の重さを分かってるのにそれを受け入れる覚悟が強いんだ。彼が自然界のすべての息吹を抱え込んでいるのなら、君はそれを支えているみたい。いなくても物語は成立するんだけど、いるとまた違う物語をもかいま見れる。――そうだ。いっそ中世の物語みたいな宝物を守る眠れる竜とかどうだろう!」
声高に叫ぶ男の主張は更に続いて、今度はルウをベタ褒めし始めた。
とはいえその褒める言葉も彼の中の認識であって、聞いている側にとっては褒められているとは思いにくい。
「きみ達ならおよそ人間以外のありとあらゆる役を演じられるよ!」
最後にそう締めくくった男にシルビは無言でヴァンツァーを見やり、ルウがリィへこの人は頭が大丈夫なのかと尋ねている。だかきっと、この人の“頭”は大丈夫なのだろう。
二階から階段を降りてくる足音がして振り向けば、黒髪の女性が降りてくるのが見えた。その姿を目に入れて、シルビはくしゃみを抑える振りをして口元を手で隠す。
「いらっしゃい。ヴァンツァーのお友だちよね? “アイリーン・コルト”よ」
聞いたことのない名前へリィ達が初対面を『装って』挨拶するのに、シルビも何も言わずにそれへ倣った。レティシアがそれに気付かず知り合いである体で話しかけ、ルウとリィに背中を抓られたりつま先を踏まれている。見ているだけでも痛そうだったのだが、レティシアはその痛みを全く顔へ出すことはない。流石である。
「悪い、間違えた。知り合いに似てたもんだから」
「俺も思ったけどあの人がここにいる筈ねぇだろぉ?」
「それもそうか」
レティシアの『勘違い』にフォローを入れれば、“アイリーン”は微笑んだ。
「ヴァンツァーにもそう言われたの。何だか光栄ね。その似ている人に会ってみたいわ」
話の流れ的には自然な会話だが、彼女がそれを言うというのは先ほどのレティシア並みに流石というべきか。
おそらくヴァンツァーが電話で言っていた『あともう一人気になる人物』とは、彼女のことだったのだろう。なるほどシルビよりも映画界隈へ詳しくないヴァンツァーでは彼女のことも詳しくないかも知れない。