夜の展覧会
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リィとルウの会話自体はどうでもいいとばかりに、再びシルビの片手がクロッキー帳を開いてデッサンを始める。『暁の天使』を持って電話しているリィや、その会話に命運を賭けて聞いているスタイン教授達。屋敷の壁際に置かれていた置物など描きたい物は多いらしい。
やがてリィの説得を終わらせたらしいルウが、本物と偽物の見分け方を説明する。当時のドミニクが愛用して着ていたセーターの素材の羊毛が絵画に付着していて、その素材だった羊毛を現代で用意して偽物に付着させるのは無理だという話だった。
あの幽霊の姿のドミニクが着ているセーターこそ、そのセーターなのだろう。
通話を終えたリィが、仕方ないから妥協してやろうとばかりに副館長へと話しかける。
「さっき、何でもするって言ったよね?」
リィが美術館に『暁の天使を』返す為の条件を言う。それを聞いた途端にシルビの中で楽しげな気分が膨らんだかと思うと二重になっていた視界が元の一つへと戻った。
あれだけクロッキー帳の上を滑っていた鉛筆ももう動かない。見下ろせば手が黒鉛で真っ黒になってしまっている。散々シルビに取り憑いて好き勝手やったわりには、引き際はあっさりしているようだった。
息を吐いて『暁の天使』を持ったまま副館長に条件を告げたリィへと歩み寄れば、リィが笑みを浮かべて振り返る。
「まだ『ドミニク』はいるのか?」
「さっき出て行ったぜぇ。クロッキー帳が何冊目だぁコレ?」
持っていたクロッキー帳を軽く挙げればスタイン教授が何ともいえない顔をしていた。何を考えているのかは分からないが、そのまま黙ってて欲しいとも思う。
とりあえず『暁の天使』をエレメンタル美術館へとブライト副館長が輸送の手配をしに行く。その間はまさかずっとリィへ持たせたままかと思ったが、リィもそれは疲れると思ったのか壁際へ向かって立て掛けにいった。
雑に扱うなよと思いながら眺めていると、スタイン教授が控えめにシルビへと歩み寄ってくる。
「その、クロッキー帳を見せてもらっても?」
「どうぞ」
何の衒いもなくクロッキー帳を渡せば、教授は恐る恐るといったようにそれを開いた。手洗いを借りたら怒られるだろうか。
やがて描かれているものに一通り目を通した教授が深く息を吐く。
「……私が体験しているのは、現実かね?」
「その言葉はもう少しとっておきましょう」
「まだ何かあるのか」
ブレることのなくなった視界が二度とドミニクを原因にブレることはないというのは、スッキリすると同時に何か少し物寂しかった。
やがてリィの説得を終わらせたらしいルウが、本物と偽物の見分け方を説明する。当時のドミニクが愛用して着ていたセーターの素材の羊毛が絵画に付着していて、その素材だった羊毛を現代で用意して偽物に付着させるのは無理だという話だった。
あの幽霊の姿のドミニクが着ているセーターこそ、そのセーターなのだろう。
通話を終えたリィが、仕方ないから妥協してやろうとばかりに副館長へと話しかける。
「さっき、何でもするって言ったよね?」
リィが美術館に『暁の天使を』返す為の条件を言う。それを聞いた途端にシルビの中で楽しげな気分が膨らんだかと思うと二重になっていた視界が元の一つへと戻った。
あれだけクロッキー帳の上を滑っていた鉛筆ももう動かない。見下ろせば手が黒鉛で真っ黒になってしまっている。散々シルビに取り憑いて好き勝手やったわりには、引き際はあっさりしているようだった。
息を吐いて『暁の天使』を持ったまま副館長に条件を告げたリィへと歩み寄れば、リィが笑みを浮かべて振り返る。
「まだ『ドミニク』はいるのか?」
「さっき出て行ったぜぇ。クロッキー帳が何冊目だぁコレ?」
持っていたクロッキー帳を軽く挙げればスタイン教授が何ともいえない顔をしていた。何を考えているのかは分からないが、そのまま黙ってて欲しいとも思う。
とりあえず『暁の天使』をエレメンタル美術館へとブライト副館長が輸送の手配をしに行く。その間はまさかずっとリィへ持たせたままかと思ったが、リィもそれは疲れると思ったのか壁際へ向かって立て掛けにいった。
雑に扱うなよと思いながら眺めていると、スタイン教授が控えめにシルビへと歩み寄ってくる。
「その、クロッキー帳を見せてもらっても?」
「どうぞ」
何の衒いもなくクロッキー帳を渡せば、教授は恐る恐るといったようにそれを開いた。手洗いを借りたら怒られるだろうか。
やがて描かれているものに一通り目を通した教授が深く息を吐く。
「……私が体験しているのは、現実かね?」
「その言葉はもう少しとっておきましょう」
「まだ何かあるのか」
ブレることのなくなった視界が二度とドミニクを原因にブレることはないというのは、スッキリすると同時に何か少し物寂しかった。