夜の展覧会
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『ドミニク』の導くままに向かったとある屋敷の一室。監視カメラも厳重だった警備も無力化して、というより認識させなくしてシルビはそこにある絵画を見上げた。
何十枚とも数え切れない『暁の天使』の模写と、本物の『暁の天使』にシルビへ取り憑いている『ドミニク』が興奮している。だがその視界は本物を覗いて全て黒く塗り潰されており、シルビはまるで暗闇を見ているような気分だった。
その暗闇を写す視界で本物の『暁の天使』だけが輝いてさえ見える。実際には輝いていることもなければそもそもこの部屋に光源がない。光など点けて探索していれば流石に見つかる可能性が上がるからだ。
「……言っとくが、盗み出さねぇからなぁ」
隣で同じように見上げていた『ドミニク』へ言えば、驚いた顔を向けられる。いくらこれが盗品で本当の持ち主であるリィが探しているといえど、偽物へ囲まれたその本物を盗み出す気はシルビにはない。
そもそも最初からリィへも『盗むな』とシルビは忠告しているのだ。それをシルビ自身が破ってはリィが怒る。
ここへ来たのだって隠された場所の確認の為だけだ。現物は確認したのでもう帰るつもりでもある。
指を鳴らして、その部屋から泊まっているカレーシュホテルの近くへまで転移した。すぐ傍に感じられる『ドミニク』に呟くように話しかける。
「アンタの絵は素晴らしい。素晴らし過ぎて時々こういう事が起こるのも仕方ねぇくらいに。――でも、それはアンタの責任じゃねぇよ」
“入られ”て数日。分かったことは彼が本当に富や名声を求めて絵を描いていた訳ではない事。描きたくて仕方がなかったのだ。
そうして遊ぶように描いた絵がどう評価されようと、『ドミニク』は何とも思わない。でもあの『暁の天使』だけは違う。
渡す相手は決まっているというのに他の者が弄ぶ。だから『ドミニク』は怒っているのだ。
リィ達が戻ってきているのかをホテルの受付で訪ねれば、リィとシェラは既に部屋へ戻ってきているらしい。となればどこに行っていたのかと聞かれるなと考えながら部屋へ向かう。
その途中で、ふと身体から『ドミニク』が抜けた。
周囲を見回してみたが近くにいる様子はない。ということはまた一人で勝手にどこかへ行ったのだろう。
どうせまたシルビの元へ戻ってくるのだろうと考えたところで後ろから声を掛けられる。振り返ればヴァレンタイン卿が歩いてくるところだった。
「エレメンタルでいなくなってから、どこへ行っていたんだい?」
「とある屋敷の偽物部屋に。確認してぇことがあったもので」
何十枚とも数え切れない『暁の天使』の模写と、本物の『暁の天使』にシルビへ取り憑いている『ドミニク』が興奮している。だがその視界は本物を覗いて全て黒く塗り潰されており、シルビはまるで暗闇を見ているような気分だった。
その暗闇を写す視界で本物の『暁の天使』だけが輝いてさえ見える。実際には輝いていることもなければそもそもこの部屋に光源がない。光など点けて探索していれば流石に見つかる可能性が上がるからだ。
「……言っとくが、盗み出さねぇからなぁ」
隣で同じように見上げていた『ドミニク』へ言えば、驚いた顔を向けられる。いくらこれが盗品で本当の持ち主であるリィが探しているといえど、偽物へ囲まれたその本物を盗み出す気はシルビにはない。
そもそも最初からリィへも『盗むな』とシルビは忠告しているのだ。それをシルビ自身が破ってはリィが怒る。
ここへ来たのだって隠された場所の確認の為だけだ。現物は確認したのでもう帰るつもりでもある。
指を鳴らして、その部屋から泊まっているカレーシュホテルの近くへまで転移した。すぐ傍に感じられる『ドミニク』に呟くように話しかける。
「アンタの絵は素晴らしい。素晴らし過ぎて時々こういう事が起こるのも仕方ねぇくらいに。――でも、それはアンタの責任じゃねぇよ」
“入られ”て数日。分かったことは彼が本当に富や名声を求めて絵を描いていた訳ではない事。描きたくて仕方がなかったのだ。
そうして遊ぶように描いた絵がどう評価されようと、『ドミニク』は何とも思わない。でもあの『暁の天使』だけは違う。
渡す相手は決まっているというのに他の者が弄ぶ。だから『ドミニク』は怒っているのだ。
リィ達が戻ってきているのかをホテルの受付で訪ねれば、リィとシェラは既に部屋へ戻ってきているらしい。となればどこに行っていたのかと聞かれるなと考えながら部屋へ向かう。
その途中で、ふと身体から『ドミニク』が抜けた。
周囲を見回してみたが近くにいる様子はない。ということはまた一人で勝手にどこかへ行ったのだろう。
どうせまたシルビの元へ戻ってくるのだろうと考えたところで後ろから声を掛けられる。振り返ればヴァレンタイン卿が歩いてくるところだった。
「エレメンタルでいなくなってから、どこへ行っていたんだい?」
「とある屋敷の偽物部屋に。確認してぇことがあったもので」