夜の展覧会
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
チェスター・ビートンがそれでも病院へ搬送されていくのを見た後、シルビ達は暖炉の残骸と共へエレメンタル美術館へと移動した。そこで残骸が本当に『暁の天使』であるかの鑑定を行なうのである。
それにリィやシェラ、ヴァレンタイン卿やシルビまで付いていくことになり、到着したエレメンタルではブライト副館長が飛び出さんばかりの勢いで『暁の天使』の帰りを待っていたようだった。首を長くして待っていた結果が木枠と画布の滓だけというのはあまりにも哀れすぎだろう。
地下の研究室に運び込まれたそれらからの鑑定結果が出るまで応接室に、という案内を断って、シルビは一人で美術館内の展示室へと向かった。
まだ閉館時間でもなければ休館日でもない為、閲覧客のいる美術館の中で『弧蝶』のある展示室の休憩用椅子へ腰を降ろす。背もたれへ寄りかかって天井の室内灯を見上げ、それから視線を『弧蝶』へ向けた。
チェスター・ビートンの家で燃えていたのは『暁の天使』ではない。
それは今のところシルビに取り憑いている『ドミニク』の様子から分かっている。では本物は現在どこにあって、誰がそれを持ち出したのか。
分かっているのはチェスター・ビートンが『死ぬように仕組まれていた』ことだ。多分それはシルビ同様リィとシェラも気付いている。彼が倒れる直前取り出していたのは彼が好んで食べているらしいミントキャンディの小瓶で、彼はそれを一気に何粒も口へ含んでいた。ああいう食べ方をするのなら消費も激しいだろうし、毒入りのキャンディを食べるタイミングも混入してから比較的すぐになる。
つまりチェスター・ビートンは、おそらく警察があの家へ行った時には既に用済みだった。では誰が彼を用済みと認定したのか。
「まぁ、分かってるんだけどなぁ」
シルビに取り憑いた『ドミニク』の視界は、見たくないモノを黒く塗りつぶしている。見るに耐えない自分の作品の偽物や感動を覚えない風景。それから『ドミニク』にとっての悪人だと思われる人物。
シーモア館長は、今日も黒く塗りつぶされている。エレメンタルの館長故に『暁の天使』を誰よりも眺め、五六年前まで頻繁に模写へ訪れていたチェスター・ビートンを知っていた。計画を立てる為の年月も材料も、彼なら用意することが出来ただろう。
犯人をシーモア館長と仮定して、ならば本物の『暁の天使』はどこへ隠したのかが問題だ。
休憩用の椅子から立ち上がって、シルビはリィ達のいる応接室へ向かった。燃え滓の鑑定結果を待ち続けているリィやスタイン教授と一緒に、重苦しい表情で座り込んでいるシーモアはやはり黒く塗りつぶされている。
「リィ。俺ちょっと出掛けてくる」
「どこに行くんだ?」
「ん……『弧蝶』に導かれる先かなぁ」
冗談にしてはあまりにも受けなさすぎた。
それにリィやシェラ、ヴァレンタイン卿やシルビまで付いていくことになり、到着したエレメンタルではブライト副館長が飛び出さんばかりの勢いで『暁の天使』の帰りを待っていたようだった。首を長くして待っていた結果が木枠と画布の滓だけというのはあまりにも哀れすぎだろう。
地下の研究室に運び込まれたそれらからの鑑定結果が出るまで応接室に、という案内を断って、シルビは一人で美術館内の展示室へと向かった。
まだ閉館時間でもなければ休館日でもない為、閲覧客のいる美術館の中で『弧蝶』のある展示室の休憩用椅子へ腰を降ろす。背もたれへ寄りかかって天井の室内灯を見上げ、それから視線を『弧蝶』へ向けた。
チェスター・ビートンの家で燃えていたのは『暁の天使』ではない。
それは今のところシルビに取り憑いている『ドミニク』の様子から分かっている。では本物は現在どこにあって、誰がそれを持ち出したのか。
分かっているのはチェスター・ビートンが『死ぬように仕組まれていた』ことだ。多分それはシルビ同様リィとシェラも気付いている。彼が倒れる直前取り出していたのは彼が好んで食べているらしいミントキャンディの小瓶で、彼はそれを一気に何粒も口へ含んでいた。ああいう食べ方をするのなら消費も激しいだろうし、毒入りのキャンディを食べるタイミングも混入してから比較的すぐになる。
つまりチェスター・ビートンは、おそらく警察があの家へ行った時には既に用済みだった。では誰が彼を用済みと認定したのか。
「まぁ、分かってるんだけどなぁ」
シルビに取り憑いた『ドミニク』の視界は、見たくないモノを黒く塗りつぶしている。見るに耐えない自分の作品の偽物や感動を覚えない風景。それから『ドミニク』にとっての悪人だと思われる人物。
シーモア館長は、今日も黒く塗りつぶされている。エレメンタルの館長故に『暁の天使』を誰よりも眺め、五六年前まで頻繁に模写へ訪れていたチェスター・ビートンを知っていた。計画を立てる為の年月も材料も、彼なら用意することが出来ただろう。
犯人をシーモア館長と仮定して、ならば本物の『暁の天使』はどこへ隠したのかが問題だ。
休憩用の椅子から立ち上がって、シルビはリィ達のいる応接室へ向かった。燃え滓の鑑定結果を待ち続けているリィやスタイン教授と一緒に、重苦しい表情で座り込んでいるシーモアはやはり黒く塗りつぶされている。
「リィ。俺ちょっと出掛けてくる」
「どこに行くんだ?」
「ん……『弧蝶』に導かれる先かなぁ」
冗談にしてはあまりにも受けなさすぎた。