夜の展覧会
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「お前にわたしの何が分かる!?」
背後で聞こえた怒鳴り声に驚いたらしく、一瞬だけシルビの意識が戻る。その間に握りしめたパレットナイフを出来るだけ遠くへ投げ捨てた。誰かへ当たりそうになったが構ってはいられない。
ピリピリと痺れる感覚のある手を見下ろして、シルビはゆっくりとその部屋を出た。『ドミニク』は自分の見たくない物が視界から消えたからか、今は大人しくしている。少し申し訳ない感情を覚えるのは『ドミニク』がそう思っているからだろう。
「……いいよ。今回は仕方ねぇ」
あの自称ドミニクは何一つ『ドミニク』の事を分かっていなかった。理解も同情も同感もせず、その絵の美しさと名声に引き寄せられただけの男。そう考えるとチェスター・ビートンもある意味では可哀想である。だが同情はしてやれない。
出てきたばかりの部屋からスタイン教授の悲鳴が聞こえた。部屋に入りきれず周囲に待機していた警官と一緒になって部屋へと戻れば、燻る暖炉の前でスタイン教授が床へへたり込んでいる。
「あ……『暁の天使』を燃やしたのか!?」
「違うね。燃やしたのは贋物だよ。本物はちゃんとエレメンタルへ飾ってある。これからもずーっとね。ずーっとあそこに飾られるんだ」
チェスター・ビートンが楽しげに言って何かの小瓶を取り出すのを横目に、シルビはスタイン教授の傍へと歩み寄り暖炉の中を覗き込んだ。古い油を熱した異臭と、本来暖炉で燃やしてはならないだろう布の燃え滓と木枠。何かの絵を燃やしたのだと分かるソレは、けれどもシルビのブレる視界にも普通に映っている。
つまりこれも。
「『暁の天使』じゃない……」
シルビの呟きが聞こえたのかスタイン教授が茫然とした顔を僅かにシルビへと向けた。その後ろで何かが倒れる音が響く。
振り返ればチェスター・ビートンが床へ倒れ激しく痙攣している。シルビが咄嗟に駆け寄ったところで同じように動いたリィとシェラと協力し、チェスターの身体を仰向けにして気道の確保をした。
脈を測りながらリィが救急車を呼べと叫ぶのに、グレン警部達が慌てて動き出す。チェスター・ビートンの目は自身に起こった事を理解し切れていない様で、のたうち回るのを押さえ込んでいたシェラとシルビを助けを求める様に見ていた。
救急車が到着したのは五分後。その頃にはチェスター・ビートンの意識はもう殆ど無く、助かる見込みは救急隊員が言う以上に無さそうだった。助かったところで彼の将来は精神病院かも知れないが。
背後で聞こえた怒鳴り声に驚いたらしく、一瞬だけシルビの意識が戻る。その間に握りしめたパレットナイフを出来るだけ遠くへ投げ捨てた。誰かへ当たりそうになったが構ってはいられない。
ピリピリと痺れる感覚のある手を見下ろして、シルビはゆっくりとその部屋を出た。『ドミニク』は自分の見たくない物が視界から消えたからか、今は大人しくしている。少し申し訳ない感情を覚えるのは『ドミニク』がそう思っているからだろう。
「……いいよ。今回は仕方ねぇ」
あの自称ドミニクは何一つ『ドミニク』の事を分かっていなかった。理解も同情も同感もせず、その絵の美しさと名声に引き寄せられただけの男。そう考えるとチェスター・ビートンもある意味では可哀想である。だが同情はしてやれない。
出てきたばかりの部屋からスタイン教授の悲鳴が聞こえた。部屋に入りきれず周囲に待機していた警官と一緒になって部屋へと戻れば、燻る暖炉の前でスタイン教授が床へへたり込んでいる。
「あ……『暁の天使』を燃やしたのか!?」
「違うね。燃やしたのは贋物だよ。本物はちゃんとエレメンタルへ飾ってある。これからもずーっとね。ずーっとあそこに飾られるんだ」
チェスター・ビートンが楽しげに言って何かの小瓶を取り出すのを横目に、シルビはスタイン教授の傍へと歩み寄り暖炉の中を覗き込んだ。古い油を熱した異臭と、本来暖炉で燃やしてはならないだろう布の燃え滓と木枠。何かの絵を燃やしたのだと分かるソレは、けれどもシルビのブレる視界にも普通に映っている。
つまりこれも。
「『暁の天使』じゃない……」
シルビの呟きが聞こえたのかスタイン教授が茫然とした顔を僅かにシルビへと向けた。その後ろで何かが倒れる音が響く。
振り返ればチェスター・ビートンが床へ倒れ激しく痙攣している。シルビが咄嗟に駆け寄ったところで同じように動いたリィとシェラと協力し、チェスターの身体を仰向けにして気道の確保をした。
脈を測りながらリィが救急車を呼べと叫ぶのに、グレン警部達が慌てて動き出す。チェスター・ビートンの目は自身に起こった事を理解し切れていない様で、のたうち回るのを押さえ込んでいたシェラとシルビを助けを求める様に見ていた。
救急車が到着したのは五分後。その頃にはチェスター・ビートンの意識はもう殆ど無く、助かる見込みは救急隊員が言う以上に無さそうだった。助かったところで彼の将来は精神病院かも知れないが。