暁の天使
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シェラ視点
慎重に引き抜いた剣が完全に黒い天使の体から離れると、息絶えていたルウが小さく呻く。
息を吹き返してもその声は弱々しく、ヴァンツァーの支え無しには倒れずにいられない。傷を受けた部分を片手で押さえ、もう片方の手でしきりに周囲の床へ触れているのは、失血が多すぎて視力が一時的に衰えているからだろう。
レティシアに手伝われてリィに触れたルウは、自由にならない体を懸命に動かしてリィの額へと口付ける。
「エディ、起きて……」
その様子を祈るように見守っていたシェラは、唐突に腰で何かが擦れるような音がした事に気付いて目を向けた。そこにはシルビから預かってきたウォレットチェーンの、カードのような意匠の飾りが揺れている。
どうしてだかは分からなかったが、シェラは咄嗟に腰からそのウォレットチェーンを外してルウの傷を押さえている手へと持たせた。持たせたところで邪魔でしかないはずだったのに、そうしたほうが良いと思ったのだ。
ルウが無意識にだろうがそれを握り締める。そしてもう一度リィへ声を掛けた時、リィの胸がゆるく上下した。気弱ながらも互いに生死を賭けた斬り合いをしていたとは思えない会話をし、顔を見合わせて笑った二人に、シェラはホッとすると同時に脱力する。
脇腹から流れる血を掌で押さえながら、ゆっくりと座りなおしたルウが、そこでやっと自分の持っているものに気付いて見下ろした。
「……うわ、何これ」
「その、シルビから持っていけと言われまして……貴方に渡した方が良いと思ったものですから」
「その『シルビ』って人、何者? コレすごいよ」
「すごいって?」
「上手く説明出来ないけど、作ったのは人じゃないね。エディが持ってたほうがいい」
そう言ってウォレットチェーンをリィの甲冑の腰の部分へ付けさせたルウは、先程よりは随分と元気そうに立ち上がる。渡された方のリィは、納得したようにウォレットチェーンの飾り部分へ触れた。
「なるほど、ラー製のものに近いのか」
「でもラーが作ったものじゃない。会ってみたいな。これの持ち主」
「あっちもお前に会いたがってたよ」
「じゃあ返す為にも戻らなくちゃね」
断言したルウが顔を上げたことで、先ほどから繰り返されている自動機械による警告を思い出す。
おそらく宇宙嵐が巻き起こった頃からずっと鳴っていたのだろう。今更な感じもする避難勧告だが、状況はその通りだ。
「急いでここから逃げないと。この基地、あんまり長く保たない」
慎重に引き抜いた剣が完全に黒い天使の体から離れると、息絶えていたルウが小さく呻く。
息を吹き返してもその声は弱々しく、ヴァンツァーの支え無しには倒れずにいられない。傷を受けた部分を片手で押さえ、もう片方の手でしきりに周囲の床へ触れているのは、失血が多すぎて視力が一時的に衰えているからだろう。
レティシアに手伝われてリィに触れたルウは、自由にならない体を懸命に動かしてリィの額へと口付ける。
「エディ、起きて……」
その様子を祈るように見守っていたシェラは、唐突に腰で何かが擦れるような音がした事に気付いて目を向けた。そこにはシルビから預かってきたウォレットチェーンの、カードのような意匠の飾りが揺れている。
どうしてだかは分からなかったが、シェラは咄嗟に腰からそのウォレットチェーンを外してルウの傷を押さえている手へと持たせた。持たせたところで邪魔でしかないはずだったのに、そうしたほうが良いと思ったのだ。
ルウが無意識にだろうがそれを握り締める。そしてもう一度リィへ声を掛けた時、リィの胸がゆるく上下した。気弱ながらも互いに生死を賭けた斬り合いをしていたとは思えない会話をし、顔を見合わせて笑った二人に、シェラはホッとすると同時に脱力する。
脇腹から流れる血を掌で押さえながら、ゆっくりと座りなおしたルウが、そこでやっと自分の持っているものに気付いて見下ろした。
「……うわ、何これ」
「その、シルビから持っていけと言われまして……貴方に渡した方が良いと思ったものですから」
「その『シルビ』って人、何者? コレすごいよ」
「すごいって?」
「上手く説明出来ないけど、作ったのは人じゃないね。エディが持ってたほうがいい」
そう言ってウォレットチェーンをリィの甲冑の腰の部分へ付けさせたルウは、先程よりは随分と元気そうに立ち上がる。渡された方のリィは、納得したようにウォレットチェーンの飾り部分へ触れた。
「なるほど、ラー製のものに近いのか」
「でもラーが作ったものじゃない。会ってみたいな。これの持ち主」
「あっちもお前に会いたがってたよ」
「じゃあ返す為にも戻らなくちゃね」
断言したルウが顔を上げたことで、先ほどから繰り返されている自動機械による警告を思い出す。
おそらく宇宙嵐が巻き起こった頃からずっと鳴っていたのだろう。今更な感じもする避難勧告だが、状況はその通りだ。
「急いでここから逃げないと。この基地、あんまり長く保たない」