夜の展覧会
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ヴァレンタイン卿のリムジンで警察署へ向かうと、ちょうどスタイン教授が車へ乗り込むところが見えた。そのままリムジンでその車を追いかけてもらい、マーショネス郊外の古城のような邸宅へと向かう。
シルビの視界は車内ではリムジンの内装が物珍しいとばかりに周囲を見回していて忙しなかったが、邸宅の敷地内へ入り車から降りた途端フッと消えてしまった。『出ていった』のかと思ったが、屋敷内にあるであろう隠し部屋を確認して欲しいと歩き出したところで再び戻ってくる。
人をタクシーか何かと勘違いしてるのかと思わなくも無い。『暁の天使』へ取り憑いている自縛霊でもないのなら、今までだって自由に動き回れただろうに。
主寝室の隠し部屋を探しに行くヴァレンタイン卿やグレン警部の後を追おうとして、視界の端に黒い何かが写り込んだ。『ドミニク』はシルビに『入って』いるので、また別の幽霊的なものかと警戒しつつそれを見やれば、それは幽霊ではなかった。
スタイン教授の隣に立つ、人だ。
けれどもその姿は、以前ルウの死体を見た時の様に黒ずんだ色で塗りつぶされている。片目を眇めて『ドミニク』の視界で見ないように意識すれば、それが館長だと分かった。
先週見た時はそんな事もなかったのに、どうして今日はそんな風になっているのか。
「シルビ?」
「……何でもねぇ」
シェラに名前を呼ばれてそう返すもシルビの視線は、正確には『ドミニク』の視線はそれから外れない。怒っているような感情を感じるが、理由までは分からなかった。
隠し部屋から見つかった『暁の天使』は贋物。盗品だと分かっていて買ったこの屋敷の主も、それが本物だと聞かされて買ったらしい。
庭先でグレン警部にその買い取った絵が贋物だったと聞かされ、怨恨の言葉を吐いているのが聞こえる。
「……『暁の天使』を、そんなに欲しいと思うのかぁ」
「低俗な者の中には、やはりそう考える者もいるんだ」
独り言として呟いた言葉に、返事が返ってきた。本物の『暁の天使』が見つからなかったことへ落胆している様子の、館長が隣に立つ。
やはり二重にぶれたシルビの視界には、彼は黒く塗り潰されていた。仄かに油絵の具の匂いがしているのは、彼が描き手ではなくとも絵画と触れ合っている職業だからだろう。
「あの天使を貪ることしか考えていない輩というのが、ね」
「天使だって意思があるのに」
「君はそう思うのか」
黒く塗り潰された向こうで館長がシルビを見たが、今のは『シルビの言葉』ではなかった。館長に対して酷く怒っている感情を隠して黙る。
リィ達は既にこの邸宅から撤収する為に車へ向かっていた。隣に立っていた館長も、シルビの返事など元より気にしていなかった様子で歩き出す。
「……やり過ぎだぞぉ、『ドミニク』」
シルビの視界は車内ではリムジンの内装が物珍しいとばかりに周囲を見回していて忙しなかったが、邸宅の敷地内へ入り車から降りた途端フッと消えてしまった。『出ていった』のかと思ったが、屋敷内にあるであろう隠し部屋を確認して欲しいと歩き出したところで再び戻ってくる。
人をタクシーか何かと勘違いしてるのかと思わなくも無い。『暁の天使』へ取り憑いている自縛霊でもないのなら、今までだって自由に動き回れただろうに。
主寝室の隠し部屋を探しに行くヴァレンタイン卿やグレン警部の後を追おうとして、視界の端に黒い何かが写り込んだ。『ドミニク』はシルビに『入って』いるので、また別の幽霊的なものかと警戒しつつそれを見やれば、それは幽霊ではなかった。
スタイン教授の隣に立つ、人だ。
けれどもその姿は、以前ルウの死体を見た時の様に黒ずんだ色で塗りつぶされている。片目を眇めて『ドミニク』の視界で見ないように意識すれば、それが館長だと分かった。
先週見た時はそんな事もなかったのに、どうして今日はそんな風になっているのか。
「シルビ?」
「……何でもねぇ」
シェラに名前を呼ばれてそう返すもシルビの視線は、正確には『ドミニク』の視線はそれから外れない。怒っているような感情を感じるが、理由までは分からなかった。
隠し部屋から見つかった『暁の天使』は贋物。盗品だと分かっていて買ったこの屋敷の主も、それが本物だと聞かされて買ったらしい。
庭先でグレン警部にその買い取った絵が贋物だったと聞かされ、怨恨の言葉を吐いているのが聞こえる。
「……『暁の天使』を、そんなに欲しいと思うのかぁ」
「低俗な者の中には、やはりそう考える者もいるんだ」
独り言として呟いた言葉に、返事が返ってきた。本物の『暁の天使』が見つからなかったことへ落胆している様子の、館長が隣に立つ。
やはり二重にぶれたシルビの視界には、彼は黒く塗り潰されていた。仄かに油絵の具の匂いがしているのは、彼が描き手ではなくとも絵画と触れ合っている職業だからだろう。
「あの天使を貪ることしか考えていない輩というのが、ね」
「天使だって意思があるのに」
「君はそう思うのか」
黒く塗り潰された向こうで館長がシルビを見たが、今のは『シルビの言葉』ではなかった。館長に対して酷く怒っている感情を隠して黙る。
リィ達は既にこの邸宅から撤収する為に車へ向かっていた。隣に立っていた館長も、シルビの返事など元より気にしていなかった様子で歩き出す。
「……やり過ぎだぞぉ、『ドミニク』」