夜の展覧会
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土曜日にまたセントラルへ行くとリィに言われた。どうも一週間の間に《パラス・アテナ》と連絡を取って色々調べてもらっていたらしい。更には父親であるアーサーがセントラルへ来ているので、協力してもらうつもりのようだった。
「課題があって一緒には行けねぇけど、少し遅れても必ず行く」
「そうか? 無理はするなよ? 眼も怪我してるみたいだし。どうしたんだ?」
「……ものもらい的なぁ?」
この場合貰ったのは『視界』か『画力』か。談話室は週末であることもあってか平日より生徒が少ない。左手で課題を片付けつつリィと話しているのだが、そのリィの横ではシェラが不思議そうな顔をしてシルビを見ている。リィも正直不思議そうだ。
それも仕方が無いだろう。何せシルビの左手は黙々と課題をこなしているのだが、右手は右手でクロッキー帳の上を滑り続けている。手を鉛筆の黒鉛だらけにしても止まる様子の無いそれは、今は近くに置いたシルビの腕輪を写生していた。
まるで本物の腕輪がもう一つ現われたかのような存在感のある写生に、先程まではハンス寮長が傍に居て眺めていたのだが、流石に手の汚れが気になったのか手を拭く物を取りに行ってくれている。
「右と左でそれぞれ違うことを出来るなんて器用だな」
「……普段は流石にここまで出来ねぇよ」
「絵もお上手なんですね」
「……普段はこんな画力無ぇよ」
ちょっと泣きたくなった。
一度気を許してしまったばかりに『ドミニク』は数百年の我慢を解放するように数日前から描き続けている。このクロッキー帳も六冊目だ。
流石に授業中やシルビが本気で嫌がった時は我慢してくれるので、シルビも寮へ居る時は好きにさせている。お陰で同級生や知り合いの寮生からは、いきなり絵画に目覚めたと思われていた。
この状態が続くようであれば本気で問題解決に動かなければならないが、その問題解決の為にはリィが『暁の天使』を見つけるのが重要だ。自分で動けないのは非常に面倒である。
明日もセントラルへ行く為に早めに寝るというリィ達が、自室へ戻っていくのを見送って課題を続けていると、ハンス寮長が戻ってきた。
「シルビ、一度手を拭いたほうがいい」
「ありがとう寮長」
「その腕輪描けたんだ。せっかくだし貰ってもいいかな?」
「……いいんじゃねぇかなぁ」
腕輪を書き終えたらしい右手が動いてクロッキー帳を捲る。次は何を書くのかと思えば、先程まで居たリィとシェラを描こうとしているらしい。
居るタイミングで描けば良いものをと思ったが、写生の許可を取るのはシルビだと思い至って何も言うのを止めた。
「課題があって一緒には行けねぇけど、少し遅れても必ず行く」
「そうか? 無理はするなよ? 眼も怪我してるみたいだし。どうしたんだ?」
「……ものもらい的なぁ?」
この場合貰ったのは『視界』か『画力』か。談話室は週末であることもあってか平日より生徒が少ない。左手で課題を片付けつつリィと話しているのだが、そのリィの横ではシェラが不思議そうな顔をしてシルビを見ている。リィも正直不思議そうだ。
それも仕方が無いだろう。何せシルビの左手は黙々と課題をこなしているのだが、右手は右手でクロッキー帳の上を滑り続けている。手を鉛筆の黒鉛だらけにしても止まる様子の無いそれは、今は近くに置いたシルビの腕輪を写生していた。
まるで本物の腕輪がもう一つ現われたかのような存在感のある写生に、先程まではハンス寮長が傍に居て眺めていたのだが、流石に手の汚れが気になったのか手を拭く物を取りに行ってくれている。
「右と左でそれぞれ違うことを出来るなんて器用だな」
「……普段は流石にここまで出来ねぇよ」
「絵もお上手なんですね」
「……普段はこんな画力無ぇよ」
ちょっと泣きたくなった。
一度気を許してしまったばかりに『ドミニク』は数百年の我慢を解放するように数日前から描き続けている。このクロッキー帳も六冊目だ。
流石に授業中やシルビが本気で嫌がった時は我慢してくれるので、シルビも寮へ居る時は好きにさせている。お陰で同級生や知り合いの寮生からは、いきなり絵画に目覚めたと思われていた。
この状態が続くようであれば本気で問題解決に動かなければならないが、その問題解決の為にはリィが『暁の天使』を見つけるのが重要だ。自分で動けないのは非常に面倒である。
明日もセントラルへ行く為に早めに寝るというリィ達が、自室へ戻っていくのを見送って課題を続けていると、ハンス寮長が戻ってきた。
「シルビ、一度手を拭いたほうがいい」
「ありがとう寮長」
「その腕輪描けたんだ。せっかくだし貰ってもいいかな?」
「……いいんじゃねぇかなぁ」
腕輪を書き終えたらしい右手が動いてクロッキー帳を捲る。次は何を書くのかと思えば、先程まで居たリィとシェラを描こうとしているらしい。
居るタイミングで描けば良いものをと思ったが、写生の許可を取るのはシルビだと思い至って何も言うのを止めた。