夜の展覧会
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「……ぐーてんもーるげーん」
自分で言っておいて誰に言ってるんだと呆れてしまう。あまり寝た気になれないのは昨日セントラルを離れる辺りからしていた頭痛のせいだ。ついでに言うと二重になっている視界のせいでもある。
とにかく今日は平日で学校へ行かねばならないので、寝台から降りて身支度をする為に洗面所へ向かえば、顔を映した鏡の中で左目の色が変わっていた。
「……マジかよぉ」
紫である事に変わりは無いのだが、その紫が薄まり青みが強くなっている。流石に眼の色が変わるのは初めてだなと思いつつ鏡を覗き込み、マジマジと観察してみた。
分かったのはその目が、シルビではないほうの視界で見れば色が変わっていないということだ。つまりこの青み掛かった色はシルビにしか見えておらず、他の人が見てもシルビも眼は紫色のままだということである。有り難いのかどうなのか判断しかねる状態にゲンナリしつつ着替えた。
朝食の席ではリィともシェラとも出会わず、そのままヴェルナール校で授業を受ける。二重にぶれる視界は時々授業の邪魔だったが、ルウを『入れた』時に比べれば三度目であるからかそう戸惑いも無かった。
ただ時々この視界の持ち主は、シルビから抜け出して校内を徘徊していたようである。
学校が終わってから、シルビは眼帯を一つ買ってからサフノスク大学へ向かい、受付でルウの居場所を教えてもらった。
構造学科の研究室に居るらしいルウは、班の研究発表が近くて忙しいらしい。シルビが会いに行った途端、同じ班のメンバーだと思われる学生にちょっと嫌な顔をされてしまった。
「ゴメンね。みんな気が立ってるんだ。どうしたの?」
「……『暁の天使』を描いたドミニクって居るだろぉ。その人、目の色は何色だったぁ?」
「ドミニク? ……紺碧色だったけど?」
「そっか……俺に取り憑いて……取り憑いちゃいねぇなぁ。勝手に人の中に『入って』きててちょっと困惑してる」
そう言って眼帯を外せばルウが目を見開く。
ルウにはシルビの眼の異常が見えているらしい。
「どういうこと?」
「セントラルのエレメンタル美術館へ行ってきた」
『暁の天使』が盗まれたことは言わずにそれだけを話す。シルビの視界を半分奪っている『ドミニク』はルウを見て歓喜しているのか、ルウがやけに美しく見えた。
美術家の感性で見た世界はこういう風なのかと現実逃避をしてしまう。当事者ではないルウはシルビとは裏腹に困惑しきっているが。
「大丈夫なの? もしかしてボクのせい?」
「いや、たまたまだろぉ。今の俺が入りやすかっただけかも知れねぇし、視界がぶれる以外に支障は無ぇから」
自分で言っておいて誰に言ってるんだと呆れてしまう。あまり寝た気になれないのは昨日セントラルを離れる辺りからしていた頭痛のせいだ。ついでに言うと二重になっている視界のせいでもある。
とにかく今日は平日で学校へ行かねばならないので、寝台から降りて身支度をする為に洗面所へ向かえば、顔を映した鏡の中で左目の色が変わっていた。
「……マジかよぉ」
紫である事に変わりは無いのだが、その紫が薄まり青みが強くなっている。流石に眼の色が変わるのは初めてだなと思いつつ鏡を覗き込み、マジマジと観察してみた。
分かったのはその目が、シルビではないほうの視界で見れば色が変わっていないということだ。つまりこの青み掛かった色はシルビにしか見えておらず、他の人が見てもシルビも眼は紫色のままだということである。有り難いのかどうなのか判断しかねる状態にゲンナリしつつ着替えた。
朝食の席ではリィともシェラとも出会わず、そのままヴェルナール校で授業を受ける。二重にぶれる視界は時々授業の邪魔だったが、ルウを『入れた』時に比べれば三度目であるからかそう戸惑いも無かった。
ただ時々この視界の持ち主は、シルビから抜け出して校内を徘徊していたようである。
学校が終わってから、シルビは眼帯を一つ買ってからサフノスク大学へ向かい、受付でルウの居場所を教えてもらった。
構造学科の研究室に居るらしいルウは、班の研究発表が近くて忙しいらしい。シルビが会いに行った途端、同じ班のメンバーだと思われる学生にちょっと嫌な顔をされてしまった。
「ゴメンね。みんな気が立ってるんだ。どうしたの?」
「……『暁の天使』を描いたドミニクって居るだろぉ。その人、目の色は何色だったぁ?」
「ドミニク? ……紺碧色だったけど?」
「そっか……俺に取り憑いて……取り憑いちゃいねぇなぁ。勝手に人の中に『入って』きててちょっと困惑してる」
そう言って眼帯を外せばルウが目を見開く。
ルウにはシルビの眼の異常が見えているらしい。
「どういうこと?」
「セントラルのエレメンタル美術館へ行ってきた」
『暁の天使』が盗まれたことは言わずにそれだけを話す。シルビの視界を半分奪っている『ドミニク』はルウを見て歓喜しているのか、ルウがやけに美しく見えた。
美術家の感性で見た世界はこういう風なのかと現実逃避をしてしまう。当事者ではないルウはシルビとは裏腹に困惑しきっているが。
「大丈夫なの? もしかしてボクのせい?」
「いや、たまたまだろぉ。今の俺が入りやすかっただけかも知れねぇし、視界がぶれる以外に支障は無ぇから」