夜の展覧会
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保護者として付いてきたとはいえ、シルビに出来る事といったらリィが常識外れな発言をした時そのフォローと説明をするくらいだ。
エレメンタル美術館の地下にある研究室へ案内され、運ばれてきた『暁の天使』を見たリィの様子を窺い、息を吐く。
「……偽物、なんだなぁ?」
「うん。これは違う」
リィが否定した途端同じ部屋に居たスタイン教授が飛び上がった。目の前の絵が偽物だと断言された事に負の感情を立ち上らせ、しかし理性で辛うじて抑え込んでいる。
シルビが見てもその『暁の天使』が本物かどうかは分からなかった。ただ何となく、こんなにのっぺりとした絵だっただろうかと首をひねる程度だ。
憤慨しているのはスタイン教授だけではない。おそらく館長だと思われる上流社会へ慣れていそうな男性も、気を抜けば今すぐにも爆発しそうだ。
そしてそれはリィが、本物が無いのなら用は無いとばかりに警部へ帰っていいかと尋ねた途端爆発する。大人気なく『子供』のリィを罵倒する館長に、流石にグレン警部がたしなめたが、シルビは警部を止めて肩を竦めた。
リィを罵倒したって『暁の天使』が戻って来る訳でもない。リィを不快にするだけだ。
不遜にも本物を見つけたら自分のものにすると館長達へ宣言し直して背を向けたリィに、シルビは取り繕うように同じくスタイン教授達へ頭を下げてからリィを追いかける。一緒にグレン警部も研究室を出た。
追いついたリィは一応然程怒ってはいないらしい。
「見ててハラハラする」
「おれだって相手を怒らせないようにしてるさ。向こうが勝手に怒るんだ」
「リィのそういう所は嫌いじゃねぇよ」
「いやでも、おかげで助かったよ」
リィの隣へ並んだグレン警部は飄々としている。どうやらあの絵は、昼食後に犯人との取引を行なった際に取り返したとされる絵画だったらしい。本物かどうかを鑑定したスタイン教授が確信を持てないと言った為、グレン警部の独断でリィを呼んだのだという。
型破りもいいところだが、リィは気に入ったようだった。
先に玄関へ向かって車を手配すると断り、リィが警部と話せる時間を作る。玄関で宇宙港までの車を手配しながら、シルビはエレメンタル美術館を見上げた。既に外は暗くなっているので、臨時になのかホールへは明かりが点いている。
そういえば清掃員達はまだ館内に居たなと思いながら迎えの車とリィを待っていると、不意に耳鳴りがした。思わず耳を押さえて周囲を窺えば、視界の隅に何か黒いものが見える。
それを見ようと振り返ればそれは見えなくなった。しかし動かずにいればまた視界の隅に黒いものが映る。
どうやら『遊ばれているらしい』と気付いて見るのを止めれば、手配した車が到着した。グレン警部と話していたらしいリィも遅れてやってきて、車へ乗り込む直前に何かに気付いたように振り返っている。
だが何も無かった事に首を傾げながら乗り込んできたので、シルビも言うのは止めた。
エレメンタル美術館の地下にある研究室へ案内され、運ばれてきた『暁の天使』を見たリィの様子を窺い、息を吐く。
「……偽物、なんだなぁ?」
「うん。これは違う」
リィが否定した途端同じ部屋に居たスタイン教授が飛び上がった。目の前の絵が偽物だと断言された事に負の感情を立ち上らせ、しかし理性で辛うじて抑え込んでいる。
シルビが見てもその『暁の天使』が本物かどうかは分からなかった。ただ何となく、こんなにのっぺりとした絵だっただろうかと首をひねる程度だ。
憤慨しているのはスタイン教授だけではない。おそらく館長だと思われる上流社会へ慣れていそうな男性も、気を抜けば今すぐにも爆発しそうだ。
そしてそれはリィが、本物が無いのなら用は無いとばかりに警部へ帰っていいかと尋ねた途端爆発する。大人気なく『子供』のリィを罵倒する館長に、流石にグレン警部がたしなめたが、シルビは警部を止めて肩を竦めた。
リィを罵倒したって『暁の天使』が戻って来る訳でもない。リィを不快にするだけだ。
不遜にも本物を見つけたら自分のものにすると館長達へ宣言し直して背を向けたリィに、シルビは取り繕うように同じくスタイン教授達へ頭を下げてからリィを追いかける。一緒にグレン警部も研究室を出た。
追いついたリィは一応然程怒ってはいないらしい。
「見ててハラハラする」
「おれだって相手を怒らせないようにしてるさ。向こうが勝手に怒るんだ」
「リィのそういう所は嫌いじゃねぇよ」
「いやでも、おかげで助かったよ」
リィの隣へ並んだグレン警部は飄々としている。どうやらあの絵は、昼食後に犯人との取引を行なった際に取り返したとされる絵画だったらしい。本物かどうかを鑑定したスタイン教授が確信を持てないと言った為、グレン警部の独断でリィを呼んだのだという。
型破りもいいところだが、リィは気に入ったようだった。
先に玄関へ向かって車を手配すると断り、リィが警部と話せる時間を作る。玄関で宇宙港までの車を手配しながら、シルビはエレメンタル美術館を見上げた。既に外は暗くなっているので、臨時になのかホールへは明かりが点いている。
そういえば清掃員達はまだ館内に居たなと思いながら迎えの車とリィを待っていると、不意に耳鳴りがした。思わず耳を押さえて周囲を窺えば、視界の隅に何か黒いものが見える。
それを見ようと振り返ればそれは見えなくなった。しかし動かずにいればまた視界の隅に黒いものが映る。
どうやら『遊ばれているらしい』と気付いて見るのを止めれば、手配した車が到着した。グレン警部と話していたらしいリィも遅れてやってきて、車へ乗り込む直前に何かに気付いたように振り返っている。
だが何も無かった事に首を傾げながら乗り込んできたので、シルビも言うのは止めた。