夜の展覧会
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つまりリィの考えはこうだ。副館長並びに教授達がこの偽物の『暁の天使』でいいと主張するのなら、リィは自力で偽物と摩り替えられた本物を探し出し自分のものにする。そうすれば美術館は偽物で満足しているし、リィも本物を手に入れられて満足という構図が出来上がるのだが。
出来上がるのだが、それでいいのかと言われたら何とも言えない。
そんな事はありえないから好きにして良い、と許可を得てしまったリィが礼を言って笑み崩れ、シェラを振り返る。
「行こう!」
「はい」
「先に行けぇ。俺はもうちょっと教授とお話させてもらいてぇからぁ」
「分かった。じゃあホテルで合流しよう」
展示室を意気揚々と出て行く二人を見送って、シルビはもう一度『暁の天使』を見上げた。
実のところシルビにもコレが本物かどうかは判断が付かない。確かに初めて見た時の様な感動は無かった。先程までシルビの中へ『入って』視界を共有していた者の感覚や、リィが言うのなら偽者なんだろうなという、その程度である。
しかし世間では、そんな『気がする』だけで全てを証明は出来ないのだ。
「君はあの子の友人なのだろう? もう少し常識を持つように指導は出来んのかね」
後ろでリィのことを『変わった子』だと話していた教授達へ話しかけられる。連れの前で堂々と面白い子だの何だのと評価出来る点については、やはり研究畑だと思わざるを得ないが、指摘された件については非常にお門違いだ。
「お言葉ですが教授。この『暁の天使』については今一度鑑定をした方がよろしいかもしれません」
「君もあの子の言う事を信じるのかね?」
論文を読んでいたということで、それなりにあったらしい好感度が下がる音がする。そんなのは別にどうでもいいのだが問題はリィの事だ。
ケリーや連邦主席にまで『欲しい』と強請った物を、リィが諦める訳がない。それに。
「宝は持つべき者の元へ、というのであれば別に構いません。あの子は『黄金と翠緑玉の君』ですし」
揃って変な顔をする教授達に一礼して、シルビも『暁の天使』の展示室を後にする。リィ達がどこへ行ったのかは分からないが、とりあえず美術館から盗み出すという事態は起こらなくなった様なので、シルビがリィ達を止める義理は無い。
シルビとしては『美術館から盗む』というのが駄目だっただけで、泥棒の家から取り返したそれをどうしようかはリィの自由だと思う。教授や副館長はリィを侮っていた上に本物だと信じて止まない様子だったので、ドミニクとしてもその方が良いと言いそうだ。
そこでやっと先程、自分へ『入ってきた』何かの正体へ気付いた。
「……会話が出来りゃ、『弧蝶』が具象か抽象か聞けんのになぁ」
出来上がるのだが、それでいいのかと言われたら何とも言えない。
そんな事はありえないから好きにして良い、と許可を得てしまったリィが礼を言って笑み崩れ、シェラを振り返る。
「行こう!」
「はい」
「先に行けぇ。俺はもうちょっと教授とお話させてもらいてぇからぁ」
「分かった。じゃあホテルで合流しよう」
展示室を意気揚々と出て行く二人を見送って、シルビはもう一度『暁の天使』を見上げた。
実のところシルビにもコレが本物かどうかは判断が付かない。確かに初めて見た時の様な感動は無かった。先程までシルビの中へ『入って』視界を共有していた者の感覚や、リィが言うのなら偽者なんだろうなという、その程度である。
しかし世間では、そんな『気がする』だけで全てを証明は出来ないのだ。
「君はあの子の友人なのだろう? もう少し常識を持つように指導は出来んのかね」
後ろでリィのことを『変わった子』だと話していた教授達へ話しかけられる。連れの前で堂々と面白い子だの何だのと評価出来る点については、やはり研究畑だと思わざるを得ないが、指摘された件については非常にお門違いだ。
「お言葉ですが教授。この『暁の天使』については今一度鑑定をした方がよろしいかもしれません」
「君もあの子の言う事を信じるのかね?」
論文を読んでいたということで、それなりにあったらしい好感度が下がる音がする。そんなのは別にどうでもいいのだが問題はリィの事だ。
ケリーや連邦主席にまで『欲しい』と強請った物を、リィが諦める訳がない。それに。
「宝は持つべき者の元へ、というのであれば別に構いません。あの子は『黄金と翠緑玉の君』ですし」
揃って変な顔をする教授達に一礼して、シルビも『暁の天使』の展示室を後にする。リィ達がどこへ行ったのかは分からないが、とりあえず美術館から盗み出すという事態は起こらなくなった様なので、シルビがリィ達を止める義理は無い。
シルビとしては『美術館から盗む』というのが駄目だっただけで、泥棒の家から取り返したそれをどうしようかはリィの自由だと思う。教授や副館長はリィを侮っていた上に本物だと信じて止まない様子だったので、ドミニクとしてもその方が良いと言いそうだ。
そこでやっと先程、自分へ『入ってきた』何かの正体へ気付いた。
「……会話が出来りゃ、『弧蝶』が具象か抽象か聞けんのになぁ」