夜の展覧会
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以前に来た時は無かったのだが、美術館受付の傍にある売店で展示されている作品のポストカードや複製画像が販売されていた。携帯端末の壁紙や映像写真へ反映させるデータで、まさかと思って確認してみれば件の『弧蝶』も『暁の天使』もあったので、シルビはちょっと機嫌を戻す。
早速購入して携帯端末の壁紙へ設定し、『暁の天使』を見に行くのだというリィ達の後へ続いた。『弧蝶』は帰りに眺めればよい。
「日中にここから持ち出すのは問題外だな」
「無理ですね。対象が大きすぎます」
隣から聞こえる物騒な会話は聞こえなかったフリをした。どんなに物騒であっても、リィ達は確実に盗みだせる算段が付かなければ、一応諦めるつもりであるらしい。常識の通用しない二人に、どこまで美術館の警備体制が通用するか分からないが、出来るだけ不可能であって欲しいと願わずにはいられなかった。
「……ただでさえお前らは人目を集めるんだから、もう少し自重しようぜぇ?」
「? 充分してるぞ?」
「美術館でそういう話をするだけでも駄目ってことだぁ」
小声で窘めていると一人の学生然とした若者が近付いてくる。掛けられた声からしてリィやシェラとは以前にも話したことがあるらしい彼に、シェラとリィが先週に引き続いて美術館へ来た理由をもっともらしく話していた。
シルビはその間にさりげなく近くの展示品を鑑賞しているフリをし、リィ達とは無関係を装う。連れだと分かられるのは相手が何者であるかを判断出来た後でいい。
どうやらその若者は、先週リィ達が来た時に『暁の天使』を模写していた画学生の様である。平日に三日ほど改修工事が入っていた為、今日になってまた模写の続きをしに来たと言う。
画学生と話しながら『暁の天使』が展示されている部屋へ進むのを、シルビも展示品を順に眺めていく鑑賞客を装って付いて行った。高校生一人での鑑賞も、休日なので然程おかしくは無いのが救いだ。
展示室に閲覧者はさほど多くない。画学生は模写がしやすいからかホッとしている様子で仕度を始めて、リィとシェラは『暁の天使』へ目を向ける。
しかし、シルビの視界はそうはいかなかった。
「……ぅ」
視界がぶれる。頭痛、吐き気、目眩。
一瞬酷く身体が重くなったかと思うと、展示室の空気が怒りと興奮とに満ち溢れている錯覚に陥った。
少し前にも似たような事を経験したが、その時よりは雑で荒々しい。
視界が二重に重なって見える以外の不調が綺麗に無くなってから顔を上げれば、リィが画学生へ詰め寄っていた。
「これは先週ここにあった絵じゃない」
早速購入して携帯端末の壁紙へ設定し、『暁の天使』を見に行くのだというリィ達の後へ続いた。『弧蝶』は帰りに眺めればよい。
「日中にここから持ち出すのは問題外だな」
「無理ですね。対象が大きすぎます」
隣から聞こえる物騒な会話は聞こえなかったフリをした。どんなに物騒であっても、リィ達は確実に盗みだせる算段が付かなければ、一応諦めるつもりであるらしい。常識の通用しない二人に、どこまで美術館の警備体制が通用するか分からないが、出来るだけ不可能であって欲しいと願わずにはいられなかった。
「……ただでさえお前らは人目を集めるんだから、もう少し自重しようぜぇ?」
「? 充分してるぞ?」
「美術館でそういう話をするだけでも駄目ってことだぁ」
小声で窘めていると一人の学生然とした若者が近付いてくる。掛けられた声からしてリィやシェラとは以前にも話したことがあるらしい彼に、シェラとリィが先週に引き続いて美術館へ来た理由をもっともらしく話していた。
シルビはその間にさりげなく近くの展示品を鑑賞しているフリをし、リィ達とは無関係を装う。連れだと分かられるのは相手が何者であるかを判断出来た後でいい。
どうやらその若者は、先週リィ達が来た時に『暁の天使』を模写していた画学生の様である。平日に三日ほど改修工事が入っていた為、今日になってまた模写の続きをしに来たと言う。
画学生と話しながら『暁の天使』が展示されている部屋へ進むのを、シルビも展示品を順に眺めていく鑑賞客を装って付いて行った。高校生一人での鑑賞も、休日なので然程おかしくは無いのが救いだ。
展示室に閲覧者はさほど多くない。画学生は模写がしやすいからかホッとしている様子で仕度を始めて、リィとシェラは『暁の天使』へ目を向ける。
しかし、シルビの視界はそうはいかなかった。
「……ぅ」
視界がぶれる。頭痛、吐き気、目眩。
一瞬酷く身体が重くなったかと思うと、展示室の空気が怒りと興奮とに満ち溢れている錯覚に陥った。
少し前にも似たような事を経験したが、その時よりは雑で荒々しい。
視界が二重に重なって見える以外の不調が綺麗に無くなってから顔を上げれば、リィが画学生へ詰め寄っていた。
「これは先週ここにあった絵じゃない」