ミラージュの罠
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徹夜で特殊部隊の者達を拘束して観衆の面前に晒す、という鬼の所業をやり終えて下山してから数日後。報道番組や雑誌によって各国の政府がてんやわんやになっているのを、他人事だと思うことにして、シルビは寮の談話室から出た。
それから通信室へ向かい、最近知り合ったばかりの男へと通信を繋げる。画面へ映った男は相手がシルビだと分かるとニヤリと笑みを浮かべこそすれ、目までは笑っていない。
「ルウから顔写真、貰っただろぉ」
『アレはあんたの差し金かい?』
「まさかぁ。写真を撮ったのは俺だけどなぁ」
画面越しのディオンは無言でシルビを見ている。
取引は、これからだ。
「嘘か本当かの判断はアンタにまかせる事にするけど、この前ヴェラーレン連邦情報局長官に会ったんだぁ」
『……随分と大きい嘘だな』
「あの人の前で俺は名乗っちゃいねぇ。既に調べてるかもしれねぇけどそんな気配は今のところ無ぇ。ただ、多分俺はあの人へ少なからず好印象を与えたんだと思う」
わざとヴェラーレン長官の前ではシルビの名前を呼ばなかったルウ。本気かどうか分からないが、シルビに『窘められて』一応はヴェラーレン長官を苛めるのを控えたルウ。
その光景をヴェラーレン長官は見ていた。正確には見せられたのだ。
何故あのヴェラーレン長官が、ルウに対してああも怯えているのかシルビは知らない。しかし人間とは、特に知恵の働く人間は複雑なようで単純で、自分が怖がっているものをどうにか出来るものを味方へ付けようとする傾向がある。単純に例えれば小学生が『先生に言い付けてやる!』というアレだ。
その例えに準えて、シルビはまだ確定こそしていないがヴェラーレン長官に、『自分が苦手に思っているルウを諌めてくれる者』と思われた可能性がある。小さいように見えて、ヴェラーレンの役職の事を思えば大きい収穫だ。
つまり、一度くらいはたかが学生とはいえ、シルビの話を聞いてくれる可能性があるということである。
「だからグレッグ・ディオン。俺達のことへ首を突っ込みすぎると、痛い目を見せるぜぇ?」
通信機の前で肘を突いて両手を組み、ニッコリと笑う。
今回は情報提供として互いに利用させてもらったが、今後は自分達のことを調べたりするなという警告だ。
無論シルビとしてはヴェラーレン長官を利用するつもりはない。もし今後ディオンが手出しなり何なりしてくるようなら、シルビはそれこそ『×××』を使う。
頭痛の代償さえ何のその。今回のダルチェフ軍特殊部隊以上に屈辱的な目にあわせるつもりだ。
警告自体はルウもやっていそうだが、一人より二人の方が確実である。
『……。分かったよ。アンタ等を調べるのは止めた方が良さそうだ』
「お分かり頂き恭悦至極。その代わり俺の連絡先は残しておいていい。時々なら俺は手を貸してもいいからなぁ」
詮索を口約束とは言え諦めたと明言したディオンに、シルビはとりあえず言質をとったことにした。
それから通信室へ向かい、最近知り合ったばかりの男へと通信を繋げる。画面へ映った男は相手がシルビだと分かるとニヤリと笑みを浮かべこそすれ、目までは笑っていない。
「ルウから顔写真、貰っただろぉ」
『アレはあんたの差し金かい?』
「まさかぁ。写真を撮ったのは俺だけどなぁ」
画面越しのディオンは無言でシルビを見ている。
取引は、これからだ。
「嘘か本当かの判断はアンタにまかせる事にするけど、この前ヴェラーレン連邦情報局長官に会ったんだぁ」
『……随分と大きい嘘だな』
「あの人の前で俺は名乗っちゃいねぇ。既に調べてるかもしれねぇけどそんな気配は今のところ無ぇ。ただ、多分俺はあの人へ少なからず好印象を与えたんだと思う」
わざとヴェラーレン長官の前ではシルビの名前を呼ばなかったルウ。本気かどうか分からないが、シルビに『窘められて』一応はヴェラーレン長官を苛めるのを控えたルウ。
その光景をヴェラーレン長官は見ていた。正確には見せられたのだ。
何故あのヴェラーレン長官が、ルウに対してああも怯えているのかシルビは知らない。しかし人間とは、特に知恵の働く人間は複雑なようで単純で、自分が怖がっているものをどうにか出来るものを味方へ付けようとする傾向がある。単純に例えれば小学生が『先生に言い付けてやる!』というアレだ。
その例えに準えて、シルビはまだ確定こそしていないがヴェラーレン長官に、『自分が苦手に思っているルウを諌めてくれる者』と思われた可能性がある。小さいように見えて、ヴェラーレンの役職の事を思えば大きい収穫だ。
つまり、一度くらいはたかが学生とはいえ、シルビの話を聞いてくれる可能性があるということである。
「だからグレッグ・ディオン。俺達のことへ首を突っ込みすぎると、痛い目を見せるぜぇ?」
通信機の前で肘を突いて両手を組み、ニッコリと笑う。
今回は情報提供として互いに利用させてもらったが、今後は自分達のことを調べたりするなという警告だ。
無論シルビとしてはヴェラーレン長官を利用するつもりはない。もし今後ディオンが手出しなり何なりしてくるようなら、シルビはそれこそ『×××』を使う。
頭痛の代償さえ何のその。今回のダルチェフ軍特殊部隊以上に屈辱的な目にあわせるつもりだ。
警告自体はルウもやっていそうだが、一人より二人の方が確実である。
『……。分かったよ。アンタ等を調べるのは止めた方が良さそうだ』
「お分かり頂き恭悦至極。その代わり俺の連絡先は残しておいていい。時々なら俺は手を貸してもいいからなぁ」
詮索を口約束とは言え諦めたと明言したディオンに、シルビはとりあえず言質をとったことにした。