ミラージュの罠
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「ダルチェフの特殊部隊が連邦大学に上陸した話は聞いてる?」
退席間際に本題をさり気なく尋ねたルウに、ヴェラーレン長官は顔を引き攣らせる。
「――それはまだ未確認情報だ。現在、確認作業にあたらせている」
「そうなんだ? 結果はいつ頃出るかな」
もう可哀想なほどに疲弊しているヴェラーレン長官を、ルウは故意に気付いていながら無視していた。
「ルウ、あまり苛めてやるなぁ」
「苛めてなんかないよ。特殊部隊なんて物騒な人たちがうろうろしてたら、勉強の邪魔になるでしょ?」
「この長官殿だって多分努力してんだろぉ。少なくとも真面目に仕事をしてる。そういう人に無理を押し付けちゃいけねぇよ」
ヴェラーレン長官からの希望を見出したような視線は無視である。反応してはいけない。
ルウはちょっと小首を傾げてヴェラーレン長官を見やり、それから笑顔で頷いた。
「そうだね。真面目に仕事をしていれば忙しいよね」
何故か少し含みがあるように思えたが、それ以上ヴェラーレン長官を養護するとルウの機嫌が悪くなりそうだったので、シルビはそれ以上何も言わない事にして立ち上がる。執務机の向こうでヴェラーレン長官は、やっとルウとシルビが帰って行くのだという事に酷く安堵しているようだった。
そこにルウが振り返る。
「珈琲はあんまり好きじゃないんだ。また来るからその時までにお茶を用意しといて」
鬼か。というかまた来るのか。
仕方ないのでシルビもフォローのつもりで振り返る。
「俺は二度と来ないでしょうが、珈琲美味しかったですよ。お邪魔しました」
「ぁ……、き、君は」
「ルウの『友人』です。あまり気にされませんよう」
ヴェラーレン長官の執務室を出て、隣室に待機していた秘書へもちゃんと挨拶して情報局の出口へと向かう。
すれ違う人の多くが『何故こんなところに子供が』という驚きを浮かべていたが、二人とも大して気にしなかった。帰りはどうやって帰るつもりなのだろうと思っていると、携帯端末を弄っていたルウが振り向く。
「シルビったら長官に優しくしすぎだよ」
「そうかぁ? どういう関係か知らねぇけど、傍から見てたらルウのほうがいじめっ子だったぜぇ?」
「反省してるみたいだし、嫌いとも言い切れないんだけど、どうしてもね」
苦笑するルウに本当に何があったのか気になる。気になるが聞けない。
「でもとりあえず、二重スパイと関連があるって思っていいのかな。タイミング的にも」
「もうちょっと情報が欲しいなぁ。……でも、二つを関連付けても調べてみるぜぇ」
退席間際に本題をさり気なく尋ねたルウに、ヴェラーレン長官は顔を引き攣らせる。
「――それはまだ未確認情報だ。現在、確認作業にあたらせている」
「そうなんだ? 結果はいつ頃出るかな」
もう可哀想なほどに疲弊しているヴェラーレン長官を、ルウは故意に気付いていながら無視していた。
「ルウ、あまり苛めてやるなぁ」
「苛めてなんかないよ。特殊部隊なんて物騒な人たちがうろうろしてたら、勉強の邪魔になるでしょ?」
「この長官殿だって多分努力してんだろぉ。少なくとも真面目に仕事をしてる。そういう人に無理を押し付けちゃいけねぇよ」
ヴェラーレン長官からの希望を見出したような視線は無視である。反応してはいけない。
ルウはちょっと小首を傾げてヴェラーレン長官を見やり、それから笑顔で頷いた。
「そうだね。真面目に仕事をしていれば忙しいよね」
何故か少し含みがあるように思えたが、それ以上ヴェラーレン長官を養護するとルウの機嫌が悪くなりそうだったので、シルビはそれ以上何も言わない事にして立ち上がる。執務机の向こうでヴェラーレン長官は、やっとルウとシルビが帰って行くのだという事に酷く安堵しているようだった。
そこにルウが振り返る。
「珈琲はあんまり好きじゃないんだ。また来るからその時までにお茶を用意しといて」
鬼か。というかまた来るのか。
仕方ないのでシルビもフォローのつもりで振り返る。
「俺は二度と来ないでしょうが、珈琲美味しかったですよ。お邪魔しました」
「ぁ……、き、君は」
「ルウの『友人』です。あまり気にされませんよう」
ヴェラーレン長官の執務室を出て、隣室に待機していた秘書へもちゃんと挨拶して情報局の出口へと向かう。
すれ違う人の多くが『何故こんなところに子供が』という驚きを浮かべていたが、二人とも大して気にしなかった。帰りはどうやって帰るつもりなのだろうと思っていると、携帯端末を弄っていたルウが振り向く。
「シルビったら長官に優しくしすぎだよ」
「そうかぁ? どういう関係か知らねぇけど、傍から見てたらルウのほうがいじめっ子だったぜぇ?」
「反省してるみたいだし、嫌いとも言い切れないんだけど、どうしてもね」
苦笑するルウに本当に何があったのか気になる。気になるが聞けない。
「でもとりあえず、二重スパイと関連があるって思っていいのかな。タイミング的にも」
「もうちょっと情報が欲しいなぁ。……でも、二つを関連付けても調べてみるぜぇ」