ミラージュの罠
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アダム・ヴェラーレン情報局長官。つまりは連邦情報局でもっとも偉い人である。
そんな人が来客用の椅子へ座っているルウへ怯えているのに、隣の椅子へ座ったまま、シルビは一体どんな関係で何をしたんだと聞きたいのを我慢していた。聞いたところでどうしようもないし、そもそも聞いていい話しかどうかも分からない。
しかも何となく、聞いたら『第二のダン・マクスウェル』宜しく情報局長官からも、愚痴を聞かされそうな気がする。どう考えても聞かぬが花の案件だ。
「どういうことなのか説明して」
脈絡も無く主語も無く、唐突に尋ねたルウへ、ヴェラーレン長官は珈琲を一息で飲み干し覚悟を決めるように口を開いた。最初にどもったのは聞かなかったことにする。
「ダルチェフには以前から、よからぬ噂があるのだ。――二重スパイの育成に関して」
ダグラスを狙っているらしい特殊部隊『不死鳥』と『蜃気楼』の話かと思いきや、予想外の単語が出てきた。同じ惑星ダルチェフの話なので全く無関係とも言えなさそうだが。
連邦職員が一人、前触れ無く仕事を辞めダルチェフに移住すると言って姿を消したそうである。そのあまりの唐突さを変に思い調べてみたが、結果は芳しくなくそれどころか移住した当人も行方不明だという。
連邦はその事態を、失敗に終わったものの『ダルチェフによる洗脳での二重スパイ作製による結果』だったのではと疑い、調べているらしい。行方知らずになった元連邦職員は階級こそ低かったが、これがもっと上の立場の人間で行なわれれば危険極まりないと。
そこまで聞いてルウがシルビを振り返った。
「どう思う?」
このタイミングで聞くか、と口に含んだ珈琲を飲みこんでカップを置く。ヴェラーレン長官が訝しげにシルビを見ているのは、『コイツは誰だ』という視線なので無視だ。
「洗脳ではねぇと思うけど、いきなり移住ってのは確かに怪しいだろぉ。焦点を当てるべきはその職員が『どこでダルチェフを知ったのか』じゃねぇ? もしくは『いつからダルチェフへ憧れるようになったのか』かなぁ」
「ダルチェフが気になるの?」
「『どこで』と『いつから』が気になるんだぁ。無論名前だけならその職員も学生時代の授業なり仕事の中でなり見聞きした事があると思える。でも、惑星の名前と地名は別だろぉ?」
惑星ではなく更にその先の、移住先をどうやって知ったのか、いつからその移住先を知っていたのか。
もしくは。
「最初から知っていたのか、なんて予想も俺はするべきだと思うぜぇ」
「最初から、とは?」
「変になったのは洗脳されたからではない、とも考えるべきだという話です」
そんな人が来客用の椅子へ座っているルウへ怯えているのに、隣の椅子へ座ったまま、シルビは一体どんな関係で何をしたんだと聞きたいのを我慢していた。聞いたところでどうしようもないし、そもそも聞いていい話しかどうかも分からない。
しかも何となく、聞いたら『第二のダン・マクスウェル』宜しく情報局長官からも、愚痴を聞かされそうな気がする。どう考えても聞かぬが花の案件だ。
「どういうことなのか説明して」
脈絡も無く主語も無く、唐突に尋ねたルウへ、ヴェラーレン長官は珈琲を一息で飲み干し覚悟を決めるように口を開いた。最初にどもったのは聞かなかったことにする。
「ダルチェフには以前から、よからぬ噂があるのだ。――二重スパイの育成に関して」
ダグラスを狙っているらしい特殊部隊『不死鳥』と『蜃気楼』の話かと思いきや、予想外の単語が出てきた。同じ惑星ダルチェフの話なので全く無関係とも言えなさそうだが。
連邦職員が一人、前触れ無く仕事を辞めダルチェフに移住すると言って姿を消したそうである。そのあまりの唐突さを変に思い調べてみたが、結果は芳しくなくそれどころか移住した当人も行方不明だという。
連邦はその事態を、失敗に終わったものの『ダルチェフによる洗脳での二重スパイ作製による結果』だったのではと疑い、調べているらしい。行方知らずになった元連邦職員は階級こそ低かったが、これがもっと上の立場の人間で行なわれれば危険極まりないと。
そこまで聞いてルウがシルビを振り返った。
「どう思う?」
このタイミングで聞くか、と口に含んだ珈琲を飲みこんでカップを置く。ヴェラーレン長官が訝しげにシルビを見ているのは、『コイツは誰だ』という視線なので無視だ。
「洗脳ではねぇと思うけど、いきなり移住ってのは確かに怪しいだろぉ。焦点を当てるべきはその職員が『どこでダルチェフを知ったのか』じゃねぇ? もしくは『いつからダルチェフへ憧れるようになったのか』かなぁ」
「ダルチェフが気になるの?」
「『どこで』と『いつから』が気になるんだぁ。無論名前だけならその職員も学生時代の授業なり仕事の中でなり見聞きした事があると思える。でも、惑星の名前と地名は別だろぉ?」
惑星ではなく更にその先の、移住先をどうやって知ったのか、いつからその移住先を知っていたのか。
もしくは。
「最初から知っていたのか、なんて予想も俺はするべきだと思うぜぇ」
「最初から、とは?」
「変になったのは洗脳されたからではない、とも考えるべきだという話です」