ミラージュの罠
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「……君、名前は?」
「シルビ・テトラ・グラマト」
ディオンは後で調べるだろうが、どうせ前歴も何も無い、到って普通の少年の名前だ。今のところは。
出てくるとしても良くて以前の無人惑星への誘拐事件被害者としてくらいだろう。五十年近く前の『イブリス』ならびに『シュトルム』と、今のシルビが同一人物だなんてケリー達かリィ達、最悪マクスウェル船長からしか漏洩しない。なので調べられたところで何ともなかった。
「どうしてダルチェフ『以外』だと?」
「最初はダルチェフの不死鳥や蜃気楼と協力している、もしくは所属の奴かと思った。飴と鞭の要領でなぁ。でもそれにしちゃアンタはダグラスの身の安全を案じた。ダルチェフ軍のやり方にしてはまどろっこしい上に、殺すつもりで来てる奴のくせにその身を案じるのは理に合わねぇよ。だからアンタはダルチェフではない」
「油断させようとしてそう言ったのかもよ?」
「それも無ぇよ。アンタは『特殊部隊』については詳しいけど、『不死鳥と蜃気楼に関して』はあまり詳しくねぇ。あえて情報を小出しにしているのかとも思ったけど、それにしてはダグラスへ対する手札の出し方が杜撰だった」
「杜撰?」
「『分かってるだけでも二つ』。……調べてるけどどうしても見つからねぇんだろぉ?」
カフェラテのカップを両手で抱えるように持ってディオンを見れば、ディオンは額に手を当てて呻いている。
「……本当にオレの相棒になるつもり無いか?」
「遠慮する。……けど、今回だけ取引しねぇ?」
どういう事だと訝しがるディオンにシルビは自分の携帯端末を取り出し、学校で調べた過去数年分のダルチェフ関連で起きた事件の記事を表示させた。テーブルへ置いてその記事をディオンへ見せる。
確定も証拠も無いが、おそらく『蜃気楼が関与した』事件や事故だ。あえて大々的な事件の、不死鳥が関わっている方は省いた。
記事に目を通したディオンがシルビを見る。
「確定は、してないだろう?」
「Si 証拠も何も無ぇ。軍事マニアの素人判断だと思って無視してもいいし、今見た記事だけを記憶して、俺を馬鹿にして去っていってもいい。ただし、俺はもうアンタの顔を見たし名前が偽名だとしても聞いてる。……それこそ、自分の身が大事なら考えるべきだぜぇ」
ディオンは無言で考えていた。時間的にもそろそろルウ達のところへ戻るか帰るかしたい。
カップの中身を飲み干し、適当に入ったとはいえこの店はハズレだったなと思っていれば、向かいの席へ座るディオンがテーブルへ置かれていたシルビの通信端末に触れて画面を消す。
「取引内容は?」
「シルビ・テトラ・グラマト」
ディオンは後で調べるだろうが、どうせ前歴も何も無い、到って普通の少年の名前だ。今のところは。
出てくるとしても良くて以前の無人惑星への誘拐事件被害者としてくらいだろう。五十年近く前の『イブリス』ならびに『シュトルム』と、今のシルビが同一人物だなんてケリー達かリィ達、最悪マクスウェル船長からしか漏洩しない。なので調べられたところで何ともなかった。
「どうしてダルチェフ『以外』だと?」
「最初はダルチェフの不死鳥や蜃気楼と協力している、もしくは所属の奴かと思った。飴と鞭の要領でなぁ。でもそれにしちゃアンタはダグラスの身の安全を案じた。ダルチェフ軍のやり方にしてはまどろっこしい上に、殺すつもりで来てる奴のくせにその身を案じるのは理に合わねぇよ。だからアンタはダルチェフではない」
「油断させようとしてそう言ったのかもよ?」
「それも無ぇよ。アンタは『特殊部隊』については詳しいけど、『不死鳥と蜃気楼に関して』はあまり詳しくねぇ。あえて情報を小出しにしているのかとも思ったけど、それにしてはダグラスへ対する手札の出し方が杜撰だった」
「杜撰?」
「『分かってるだけでも二つ』。……調べてるけどどうしても見つからねぇんだろぉ?」
カフェラテのカップを両手で抱えるように持ってディオンを見れば、ディオンは額に手を当てて呻いている。
「……本当にオレの相棒になるつもり無いか?」
「遠慮する。……けど、今回だけ取引しねぇ?」
どういう事だと訝しがるディオンにシルビは自分の携帯端末を取り出し、学校で調べた過去数年分のダルチェフ関連で起きた事件の記事を表示させた。テーブルへ置いてその記事をディオンへ見せる。
確定も証拠も無いが、おそらく『蜃気楼が関与した』事件や事故だ。あえて大々的な事件の、不死鳥が関わっている方は省いた。
記事に目を通したディオンがシルビを見る。
「確定は、してないだろう?」
「Si 証拠も何も無ぇ。軍事マニアの素人判断だと思って無視してもいいし、今見た記事だけを記憶して、俺を馬鹿にして去っていってもいい。ただし、俺はもうアンタの顔を見たし名前が偽名だとしても聞いてる。……それこそ、自分の身が大事なら考えるべきだぜぇ」
ディオンは無言で考えていた。時間的にもそろそろルウ達のところへ戻るか帰るかしたい。
カップの中身を飲み干し、適当に入ったとはいえこの店はハズレだったなと思っていれば、向かいの席へ座るディオンがテーブルへ置かれていたシルビの通信端末に触れて画面を消す。
「取引内容は?」