星系内通信でリィと連絡を取れば、リィは街中でシェラと一緒にいた。違う学校へ潜伏している二人だが休日である事が功を奏したのか、しかしルウは一緒ではないらしい。
ケリーが代表して今までの調査結果と推測を話せば、案の定リィとシェラも言葉がなかった。突拍子も無いという事と、このご時勢にそんな古臭い儀式を信じきっているという老人への呆れ。それからルウへの恨みだろうか。
わざわざ『少女になった』のは、自分で落とし前を付けたかったからなのだろう。
険しい表情で一言教えてくれればと憤慨するシェラをリィが宥める。餌になれるのは正真正銘『女の子』であるルウしかいないからと。

「自分が餌になりゃ下手に犠牲者を出さねぇし、確実にジジイ共へ近付けるとしても、少し暴論過ぎやしねぇかぁ？」
『そう思うならシルビ。お前ならどうやった？』

そう聞かれてしまうとぐうの音も出ない。シルビは少女へなどなれないし、四人の老人が一堂へ会するタイミングが少女を攫った直後だけと言うのなら、更にチャンスはなくなる。
だったら確かにルウがやった通り向こうから招き入れてもらうのが手っ取り早い。
シルビだって自分が当事者であり一人で行動するなら、制限すら破ってしまった今なら幻覚も何でも駆使して行うだろう。それが出来るだけの能力もあるわけだし。
ジャスミンが怒って居場所に心当たりは無いのかと尋ねている。リィが小さく溜息を吐いてそう遠くない場所だと言った途端、ダイアナがリィ達が今いる街の地図を出してくれるのに視線を移した。
一人で行ったのなら全員で迎えに行けばいい。それこそこの前の様にだ。
数時間と立たずに宇宙港へと着き、そこから地上の車へとシルビとケリー、ジャスミンが乗り移りリィ達が待っている場所へと向かう。制限速度はあってない様なものだったが文句は無い。
リィとシェラを車へ引きずり込むように乗せて、更に車を走らせる。高級住宅が並ぶ一角の、隠れ家のような飲食店が見える場所で止まった車から、その店の様子を伺う。
ダイアナとシルビで調べた結果、四人の老人が来たと思われる場所がそこだった。四人のうちの一人が関わっている孫会社が出資して、と用意だけは周到な手回しがされている。
窓越しに眺めるその店の外観には、何の変哲もない。だが僅かに冷たい空気が感じられる。他の四人はそんな空気は感じていないようだった。

「……キング、空調弄っていいかぁ？」
「どうし――鳥肌酷いぞお前」
「ルウの影響が俺に来てるのかなぁ。相棒のリィに行けって話だよなぁ」
「それは困るな。おれは相棒であってルーファじゃないんだ」
「憑依された影響が残ってんのか……ん」

擦っていた腕から鳥肌が消え、監視していた料理店の駐車場から四台の車が出て行く。それから黒髪の少女が普通に出てきた。