オンタロスの剣
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フォンダム寮へ戻ったシルビは、シェラと話し合ってリィの不在を『一人旅に出た』という事で周囲に説明した。ジェームズを筆頭に殆どの生徒は呆れたが、それ以上深くは追及してこない。多分普段からリィが少し変わっていると認識されているからだろう。
リィの父親であるヴァレンタイン卿への連絡はシェラが行なったが、その時傍へは居た。
通信機の向こうのヴァレンタイン卿は、殆ど詳しく話せないシェラを怒ることも無く、戻ってきたら必ずリィ自身に連絡を入れさせる事を約束させただけだ。出来た父親だと思う。
自室で携帯端末を手に取り、シルビはマギーへと連絡を繋げた。相変わらず不敵な雰囲気の長女は、シルビが何を言うよりも早く喋りだす。
『宇宙は広いかも知れないけれど、貴方の世界はもっと広いわ』
「……君のそういう言い方は好きじゃねぇ」
『アラそう? 残念ね』
少しも残念そうには思えない声だ。
「ルウのことなんだがぁ」
『心配する事なんて何も無いわ。もう暫くすれば戻ってくるでしょうね。――それより貴方自身の悩みをどうにかするべきでは無くて?』
「……この場所で今まで通りに生きながら、でもリィ達と一緒に『二人』を探す。――結局振り出しに戻った俺を、笑うかぁ?」
『いいえ。私たちには貴方を笑う権利なんて無いもの』
携帯端末の向こうの彼女の声は柔らかい。
「ごめんなぁ。こんな面倒臭い奴につき合わせちまってぇ」
『うふふ、面倒臭くない『人間』なんていないのよ?』
切れた通信に息を吐いて端末を放り投げた。
リィが惑星ヴェロニカへ降り立って十日近くが過ぎ、ベティが出演する舞台が開幕する。招待券が律儀にもシルビの分も送られてきたので、シェラとは別の日に一人で見に行った。
ベティの役柄は準主役級の、神と人間の間へ生まれ、人間の世界からも神の元からも拒絶された少女戦士である。スポーツカーの中で喉を枯らしそうな程叫んでいた少女も、リィとレティシアの立会いを見て呆然としていた少女も舞台の上には居らず、ただひたすら自分を慕ってくれる者達の前で燐前と立つ少女戦士の姿だけが、そこにはあった。
舞台を見終わって、パンフレットを持ったままベティの楽屋へ向かえば、彼女はシルビのことを覚えていたらしい。招待券を送ったのだからそれは当然かと思いつつ、劇の賞賛をしてから、ベティとベティが演じていた『フレイヤ』へ尋ねる。
「君は、『拒絶』されるのが怖くはないのかぁ?」
「不思議なことを聞くのね――怖くないと言えば嘘になるけれど、受け入れてくれる人も必ず居るわ」
『フレイヤ』の役が抜け切っていないベティは『フレイヤ』の思考で微笑む。
「優しい人の元へは、やさしい人が集まるものよ」
リィの父親であるヴァレンタイン卿への連絡はシェラが行なったが、その時傍へは居た。
通信機の向こうのヴァレンタイン卿は、殆ど詳しく話せないシェラを怒ることも無く、戻ってきたら必ずリィ自身に連絡を入れさせる事を約束させただけだ。出来た父親だと思う。
自室で携帯端末を手に取り、シルビはマギーへと連絡を繋げた。相変わらず不敵な雰囲気の長女は、シルビが何を言うよりも早く喋りだす。
『宇宙は広いかも知れないけれど、貴方の世界はもっと広いわ』
「……君のそういう言い方は好きじゃねぇ」
『アラそう? 残念ね』
少しも残念そうには思えない声だ。
「ルウのことなんだがぁ」
『心配する事なんて何も無いわ。もう暫くすれば戻ってくるでしょうね。――それより貴方自身の悩みをどうにかするべきでは無くて?』
「……この場所で今まで通りに生きながら、でもリィ達と一緒に『二人』を探す。――結局振り出しに戻った俺を、笑うかぁ?」
『いいえ。私たちには貴方を笑う権利なんて無いもの』
携帯端末の向こうの彼女の声は柔らかい。
「ごめんなぁ。こんな面倒臭い奴につき合わせちまってぇ」
『うふふ、面倒臭くない『人間』なんていないのよ?』
切れた通信に息を吐いて端末を放り投げた。
リィが惑星ヴェロニカへ降り立って十日近くが過ぎ、ベティが出演する舞台が開幕する。招待券が律儀にもシルビの分も送られてきたので、シェラとは別の日に一人で見に行った。
ベティの役柄は準主役級の、神と人間の間へ生まれ、人間の世界からも神の元からも拒絶された少女戦士である。スポーツカーの中で喉を枯らしそうな程叫んでいた少女も、リィとレティシアの立会いを見て呆然としていた少女も舞台の上には居らず、ただひたすら自分を慕ってくれる者達の前で燐前と立つ少女戦士の姿だけが、そこにはあった。
舞台を見終わって、パンフレットを持ったままベティの楽屋へ向かえば、彼女はシルビのことを覚えていたらしい。招待券を送ったのだからそれは当然かと思いつつ、劇の賞賛をしてから、ベティとベティが演じていた『フレイヤ』へ尋ねる。
「君は、『拒絶』されるのが怖くはないのかぁ?」
「不思議なことを聞くのね――怖くないと言えば嘘になるけれど、受け入れてくれる人も必ず居るわ」
『フレイヤ』の役が抜け切っていないベティは『フレイヤ』の思考で微笑む。
「優しい人の元へは、やさしい人が集まるものよ」